有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番

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【辺境伯領エンディング】

ゲオルグSIDE

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 俺は王都が近づく度に憂鬱な気分だった。
 この数日間、ライラと二人きり。一日目は同じ部屋で寝ることになり、ライラの寝息を聞いているだけで緊張して眠れなかったが、それからは別の部屋が取れたので、寂しく思いながらも睡眠はとれた。
 だが、寝る時以外は、食事も移動も全てライラと一緒。
 そんな時間が終わってしまうのは苦痛と伴うほど、ライラと一緒にいたいと思っていた。
 王都に到着するのが苦痛に思えたが、俺たちは無事に王都に到着した。

「ゲオルグ、着いわ。ここが学生寮よ」

「ああ、ありがとう、ライラ」

 ライラに案内された学生寮の前で思わず佇んでしまう。

(ライラと離れたくないな……毎日、おはよう、おやすみが言いたい!!)

 俺はライラと離れたくないと思っていたが、ライラはあっさりと立ち去ろうとした。

「それじゃあ、ゲオルグ。頑張ってね」

 気が付けば俺は慌ててライラを引き留めていた。

「待って!! ライラ!! 会えそうな時、連絡して」

 ライラは困ったように言った。

「学院に入った始めの方は、外出している時間がないくらい忙しいわ。だからゲオルグが時間ができたら教えて」

 ライラはそういうと馬に乗った。

「元気でね!!」

「ライラも」

 そしてライラは颯爽と馬に乗って去って行った。
 残された俺は、荷物を持って男子寮と書かれた建物に入った。
 建物に入ると多くの学生たちがいた。受付と書かれた机の前に行くと、上級生らしい男子生徒に「名前は?」と聞かれた。

「ゲオルグ・フィルネ」

「ああ、辺境伯領の……長旅ご苦労様。君の部屋は25番室だ。同室の生徒はすでに部屋に着いている。これはこれからの予定などが書かれたものだ。目を通してくれ」

「わかりました」

 俺は再び荷物を背負うと、自分の部屋を探した。

「25番……ここか」

 ノックをすると「はい」という声と共にガチャリと中から扉が開いた。

「はじめまして、うわっ!! 君、モテそう……あ、僕はセードア侯爵家のロビンです」

 初対面で『うわっ』というのはなかなか失礼ではないだろうか?

「はじめまして。ゲオルグ・フィルネだ。世話になる」

 ロビンは目を細めた。

「へぇ~~フィルネってことは辺境伯様か……僕より上だった!! 敬語の方がいい?」

「いや、普通の言葉でいい。俺も敬語を使われると疲れる」

「あ、そう? よかったぁ~~」

 ロビンは、そう言うと楽しそうに言った。

「入りなよ。お茶を入れるから。入口向かって右は僕が使ってる。早い者勝ちってことで」

 部屋の中にはソファーにテーブル。そして、両側に扉があった。

「別に構わない」

 左の部屋に入ると、ベッドと机と本棚、そしてクローゼットがある。

(いい部屋だな)

 さすが貴族の子息が学ぶ場所だ。家具も調度品もかなり豪華だ。
 部屋にはすでに俺が出発する前に送った荷物が届いていた。
 片付けようかと思うと、「お茶を入れたよ~」という声が聞こえた。

「今行く」

 お茶を入れたと言われれば無視はできずに、俺が自分の部屋を出ると、ロビンはソファーに座っていた。

「今、王都に着いたんだろ? まずはやすみなよ」

「どうも」

 俺も座ってお茶を飲んだ。

「初めて飲む種類だ」

「ああ、このお茶は侯爵領の特産なんだ。この機会にここで宣伝して顧客をゲットする予定」

「そうか、勤勉だな」

 お茶を飲むと、ロビンが驚いた顔をした。

「バカにしないんだ? 侯爵家の子息なのに~って」

「どうしてバカにするんだよ。自領の繁栄は領主の務めだ。それをバカにする意味がわからない」

 俺の言葉を聞いて、ロビンが大きく息を吐いた。

「は~~ゲオルグって、見た目だけじゃなくて、中身までかっこいいね。なんだか、モテまくって大変な学院生活になりそうだね。婚約者とかいる?」

「婚約者? いや……ロビンはいるのか?」

「一応ね。学院に入って家柄の釣り合わない相手と懇意になっても別れなきゃいけないってもつらいからね。本当に貴族社会も面倒だ。でもゲオルグ婚約者いないのか~~うわ~~ゲオルグを巡って修羅場になりそう。とりあえず、入ってすぐの魔法授与式の後のプレダンスが恐怖だね」

「なぁ、そのプレダンスの相手ってこの学院の生徒じゃなくてもいいのか?」

「もちろん。僕も婚約者を呼ぶよ。そこで婚約者がいるっていれば『婚約者あり』と思われて学院生活は安泰だ。ゲオルグ、言っておくけど、令嬢たちは怖いよ?」

 俺は立ち上がると、ロビンに向かって言った。

「ロビン、ありがとう!」

「え?」

 そして俺は自分の呑んだカップを洗うと、部屋に戻った。
 そしてライラに手紙を書こうとして気付いた。

「あ……住所……わからない……」

 少し考えて俺は、再びリビングに戻るとロビンに尋ねた。

「なぁ、女官寮って知ってる?」

 ロビンは驚いた後にニヤニヤと笑った。

「なるほど、相手は年上か……ああ、わかるよ。地図書いてあげるよ」

「ありがとう」

 学院が始まるまでまだ1週間はある。
 俺は、ロビンに書いてもらった地図をじっと見つめたのだった。

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