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【辺境伯領エンディング】
王都への二人旅
しおりを挟む旅立ちの朝、準備を終えた私はみんなと別れのあいさつをした。
「ライラ、また来てね」
「ええ、またね、元気でね」
リーゼを抱きしめるとクルスが口を開いた。
「ライラさん、僕が王都に行った時は会いに行ってもいいかな?」
「ええ、もちろんよ。待っているわ」
そしてクルスを抱きしめた。
二人と別れのあいさつをすると、ゲオルグがギルベルト様とのあいさつを終えて、リーゼとクルスの元に向かったので、私はギルベルト様にあいさつをした。
「ギルベルト様、お世話になりました」
するとギルベルト様は困ったように言った。
「お世話になったのは、こちらです。本当にライラさんにはお世話になりました」
まるで定型文のあいさつ。
でも、いざ別れとなると、こんな月並みな言葉しか出て来ない。
「どうか、お元気で」
私は何を期待していたのだろう。
本当はどこか心の底では――引き留めてほしかったのかもしれない。
私は笑顔で言った。
「ギルベルト様もどうか……お元気で」
行かないでほしい。
その言葉をギリギリまで期待する自分に気付いた。
こんな別れ際になってようやく私は自分の気持ちに気付いてしまった。
ギルベルト様を見つめると、ギルベルト様も切なそうな顔で私を見ていた。
(どうしてそんな顔をするの?)
期待しそうになる思いを押さえて、ギルベルト様を見上げた。
「ライラそろそろ行こう!!」
ゲオルグに声をかけられて、はっとした。
するとギルベルト様に手を差し出された。
私はその手を握った。
「ライラさん、どうかお幸せに」
私は泣きそうになるのを堪えながら言った。
「ギルベルト様も、お幸せに」
そしてゆっくりと手を離した。
「お兄様、ライラ~~またね~~」
「兄さん、ライラさん、気を付けてね~~」
手を振ってくれるクルスとリーゼに手を振り、少し離れた場所に立つギルベルト様に手を振った。
そして私は前を向いた。
(ギルベルト様、どうか……幸せに)
そして私は馬を走らせた。
◇
「ライラ~~今日の宿、どうする?」
馬の休憩と私たちの昼食も兼ねて、休んでいるとゲオルグが地図を広げながら口を開いた。
「そうね……ここにしましょうか」
「え? 俺は大丈夫だけど、ライラは行ける? 結構距離あるよ? 到着は夜になると思うけど……」
心配してくれるゲオルグに私は少し得意気に言った。
「実はね、ここに道があるの。そうすれば夕方には着くわ」
「え!? こんな場所に道?? さすがだな。知らなかった。じゃあ、ここまで一気に行こうか」
「ええ」
そして私たちは休憩を終えて、今日泊まる町まで向かった。
予定通り夕方に町に着いた私たちは、町が随分と賑やかなことに気付いた。
「今日はお祭りなのかな?」
「そうかもな。町中に屋台があるし、飾り付けもされてる」
そして私は馬小屋に馬を預けると、宿を探した。
「ごめんね、今日は満員だよ」
「そうですか」
今日はお祭りでどこの宿も満員だった。
「計算外だったな。悪い、ライラ」
「それはいいのだけど……どこか空いてないかな?」
私たちが町を歩き周り町の外れの宿に辿りついた。
「一部屋、空いてますよ」
(一部屋か……)
私は、ゲオルグを見た。
「一緒でもいいかな?」
するとゲオルグが真っ赤になって言った。
「それは、俺のセリフ。ライラはいいの?」
「私はいいわ」
「(男として見られてないってことか?)……そう。じゃあ、お願いします」
そして私たちはようやく宿を見つけた。
部屋に入ると、大きなベットが一つ置いてある。
「な、な、な!!」
慌てるゲオルグに私はゲオルグを安心させるように言った。
「私はソファーで寝るから、ベッドはゲオルグが使って」
「何言ってるんだよ。ライラがベッドを使ってくれ!! 俺は、床で寝てもいいんだ。むしろ、俺は外でもいい」
真剣な顔でとんでもないことを言い出すゲオルグに私は慌てて言った。
「床や外なんで絶対休めないよ。じゃあ、ベッド借りるね。せめてソファーで寝てね」
「ああ」
そして、ゲオルグが荷物を置いた後に伸びをした。
「ふぁ~~」
そして視線を窓の外に向けた。
「ライラ、お祭り……行かないか?」
声からとても楽しみにしているという様子が伝わってくる。
「ふふふ、ええ。お腹も空いたし、夕食も兼ねてお祭りに行こうか」
「ああ!!」
とても嬉しそうなゲオルグの顔を見るとこちらまで嬉しくなる。
荷物を置いた私たちは、早速お祭りに出かけた。
「おお、かなり賑やかだな」
「ふふふ、そうね」
陽が落ちると当たりにランプが吊るされてとても明るい。
心躍る光景に、わくわくする。
「お兄さん、見ない顔だね。冒険者? カッコイイね」
「私たちと一緒に行かない?」
ゲオルグはあっと言う間にお祭りで綺麗に着飾った女性たちに囲まれた。
(やっぱり、ゲオルグ……モテるわよね。かっこいいものね)
クルスが町に買い出しに行くと、よくラブレターをもらうらしいが、ゲオルグも少し外に出ただけでこの人気だ。
(学院に行ったら、大変だろうな……)
私は少し離れて見ていると、私も数人の男性に声をかけられた。
「一人? 美味しいお酒あるよ?」
「いえ……」
断ろうとした時だった。
後ろから抱き寄せらて、上を見上げると至近距離にゲオルグの顔があった。
「彼女、一人じゃないから」
そして、ゲオルグが私の顔をのぞきこみながら言った。
「ライラ、離れてごめんな」
すると、私に声をかけてきた男性だけではなく、ゲオルグに声をかけた女性まで肩を落とした。
「相手いるかよ」
「はぁ~~君たち一緒に飲む」
「仕方ないわね~~」
ゲオルグは周囲など気にしない様子で私に腕を差し出した。
「ライラを一人にしたくない。腕組んでくれない?」
「それじゃあ、失礼します」
「どうぞ」
そして私はゲオルグと腕を組んでお祭りを回ることにした。
「ライラ、あれ食べよう」
「ええ」
ゲオルグと二人で屋台を回った。
「ライラ、こっちの味も美味しい。一口食べる?」
「食べたいわ。じゃあ、私も一口どうぞ」
ゲオルグが「じゃあ、遠慮なく」と言って「あー」と言って口を開けた。
そうだった、ゲオルグは割と味見の時は口を開ける。
私はゲオルグの口元に寄せた。
「これ美味しい。ライラも口開けて」
「え? 私も?」
「うん。味見するんだろ? ほら、あー」
「う、うん」
私も差し出された香辛料を使った包み焼きにかじりついた。
「美味しい!!」
私が顔を上げるとゲオルグが「はは、ライラの顔見ればわかる。美味そうな顔。その顔すげぇ好き」とさらりと言った。
「え?」
ストレートな言葉に心臓が跳ねた。
するとゲオルグが笑いながら私の唇の端を親指で撫でた。
「ついてる」
そしてそのまま自分の口に入れた。
ゲオルグにとってはなんでもない普通のことかもしれないが、私の心臓は大騒ぎだった。
「ゲオルグ、学院に行ったら絶対にモテると思うわ」
ゲオルグは目を細めながら冗談っぽく言った。
「……そう……ライラは? 俺、ライラにモテてる?」
「ええ」
笑顔で答えると、ゲオルグが心底嬉しそうに笑った。
「それだけでいいや」
そしてゲオルグは私を見ながら言った。
「そろそろデザートだろ? ほら、さっきの焼いた砂糖のお店行こう!」
「フルーツのお店も行きたいわ」
ゲオルグが楽しそうに言った。
「了解、行こうぜ」
そして私たちは長い時間、お祭りを満喫して、宿に戻って眠りいついた。
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