改訂版『土壇場の恋・あなたならどうする?』

NADIA 川上

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本章

ブランニューデイ

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 足早に月日(とき)は過ぎ去り ――

 ふと、気が付けば、手嶌さんと一緒に暮らし始め
 3ヶ月が経とうとしていた……


 授業料滞納で除籍処分寸前だった学校での処遇は
 手嶌さんが多額の寄付をする事で示談。
  
 再び通える事にはなったけど、
 今さら学校へ通いちまちま勉強する気にもなれず、
 ただ惰性で毎日をやり過ごす。
 
 
 だけど、信じられない事に、
  
 『―― キス以外はしねぇから』って言葉は
 今でも忠実に守られており ――


『ツナぁーっ。おっはー!!』


 って、朝の起き抜けにおめざの濃厚キッス。
 こいつ……朝からテンションめっちゃ高 ――っ。

 そして、
 引きこもりのニートより酷い自堕落な生活を送る
 俺を見るにみかねてか?
 

 ”学校に通うのが面倒ってのはよーく分かるぞ。
  でも、勉強は大事だ”

  
 と、各教科に秀でた現役大学生を家庭教師に
 雇ってくれた。
 
 それから、俺の1日のスケジュールは
 ほぼ規則的になって。
 
 1日約4時間、週で24時間、
 勉強で費やす以外は……
 相変わらずの喧嘩に明け暮れる日々。 

 
  
 今日も打撲傷でそこいらじゅうが痛む身体を
 ひきずって階下に下りてみると、
 手嶌さんが1人でリビングいて、
 ソファで朝刊を拡げていた。


「―― また、喧嘩か」


 手嶌さんが聞いてきた。
 
 手嶌さんの低音の声はなんかセクシーだ。

 さわっと羽毛で背筋をなでられたような、
 奇妙な快感がある。

 俺は黙ったままうなずいた。
   

「俺じゃ偉そうな事は言えんが
 体はひとつっきりしかないんだぞ。
 もう少し自重しろ」
 
「……」    
   
    
 1人暮らしには広すぎるだろうと思える
 このばかデカいマンション。
 
 1日おきに若衆さんが家事をしに来る以外、
 滅多な事ではお客も来ない。


「マオがもうすぐ迎えにくる。おまえの着替えも
 持ってくるだろうから、着替えたら朝飯に
 出かけるぞ」


 新聞をたたみながら手嶌さんが言った。


「どうしていつも外食なの?」

「料理は作れるが、飽きっぽいのが玉にキズでな」


 男っぽい口元にニヤリと笑みを浮べた手嶌さんに、
 なぜか俺の鼓動はどきんとひとつ大きく跳ねた。

 訊いてみれば普段の手嶌さんの食事はぜんぶ外食、
 洗濯物と掃除はハウスキーピングサービスの業者
 なのだそうだ。

 どうりで生活感がないはずだ。

 その他の雑用は、陣内さんかマオさんが
 いつも面倒を見ているのだと手嶌さんは言った。
 
 
 異性関係にしたって、俺に
 
 『―― キス以外はしねぇから』
 
 って、言ってたわりには
   
 小料理屋の若女将とか、
 銀座の高級クラブのママとか
 新橋の老舗割烹とか……
 俗に”愛人”と言われている女達が
 何人もいるらしい。

 それが理由なのかどうか
 俺にもわからなかったけど、
 マオさん達が帰宅して、夜、
 俺と2人っきりでいる時も、
 手嶌さんが俺に何かしてくる事は1度もなかった。

 この家に連れてこられた時に、
 多分手嶌さんに抱かれる事になるんだろうな、
 と何となく思っていた俺は、
 彼が自分に興味を示さない事に少し落胆していた。

 そんな鬱憤を晴らす喧嘩だったんだ。

 考えてみれば ”細っこい” と手嶌さんが
 言ったように、俺の成長途中の身体は貧相で。
 手嶌さんの大人の男の体躯と比べられたら
 恥ずかしいぐらいだ。

 女みたく柔らかくないし、胸だってないし。

 やっぱりどうせ抱くなら女の方が気持いいよなぁ、
 と俺は思った。

 思いがけず親切にされて、
 何かお返しをしたいと俺は考え始めていたので、
 でも、俺には身体の他には何もなくて。

 こんな自分がもどかしかった。   
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