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初登校

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  5月10日。晴れ。

  今日は、新しい学校への初登校です。


「リーフです。よろしくお願いいたします」

「うおぉぉ~~」


  今日から私の教室(クラス)になる、
  1年S組にものすごい、
  地を這うような声が響いた。

  な ―― なに?
  男70%って比率だけでも威圧感半端ないのに。
  このクラス頭いい子ばっかりのハズだよね?
  なに? この軽いノリ。
 
  その中でも……彼はめちゃくちゃ目立ってる。

  *日ぶりに見る、マネキンみたいな大公陛下。
 
  『興ざめだ』って、
  冷たく言い放った彼の声が、まだ耳に残ってる。
  私、人から、あんなに冷たい態度を取られた事
  なんて今まで1度もなかった。
  だから……何だか、どことなく居心地が悪いんだ、
  きっと。

  だから私は学校に来るのだって、
  めっちゃ気まずかったっていうのに、
  彼 ―― エディは私なんか眼中ないみたいに、
  窓際の席で外を眺めてる。

  ただ座ってるだけなのに、体から発せられてる
  貴人オーラが物凄い。
 

「えーっと。リーフはまだ学校に慣れていない。
 誰か案内してやれ」

「はいは~い。私が!」


  エディの隣にいた女子が、スっと手を上げた。
  メガネをかけた、いかにも頭が良さそうな感じの
  女の子。


「あぁ、アンジー。任せた。」

「え……」


  アンジー?!


「ん?」

「いえ……」


  彼女が、アンジェラ・ルーズベルト?

  その名前を聞いて、ドキっとした。
  テイラーさんから同じクラスにいるのは、
  聞いていたけど……。

  彼女も私と同じ『お妃候補』の1人なのだ。


「あーっ、アンジーってば、ずりーぞー!」

「そうだ! そうだ!」

「残念でしたぁ。早い者勝ちですわ」


  そう言いながらエディに微笑みかけて、
  アンジーさんは椅子に座った。
  あのエディも、ほんの少し笑ったみたいに見えた。
  
  ……仲、いいんだ。


  あの離宮に引越しをさせられてから、
  1週間。

  『側仕え(そばづかえ)』と呼ばれる、
  私の身の回りの世話をしてくれる人達は、
  6人位いて、皆さんほんとによくしてくれる。
  中でも、『サポーター』と呼ばれる、
  幼い女の子2人は、何の為にいるのか
  よく分からないけど、チームリーダーの
  少佐さんから言いつけをされる事が多く、
  自然と仲良くなった。

  おしゃべり好きな『サンディー』は、
  とってもおませな12才。
  双子の姉『シンディー』は、妹のサンディーに比べ
  流石にしっかり屋さん。
  お給料が支給されるとすぐ無駄遣いに走ってしまう
  サンディーを、いつも優しく・厳しく指導している。

  サンディーは城内や城下の情報にものすごく
  詳しい。
  で、私に逐一最新ニュースを教えてくれる。
  テイラーさんから入ってくる情報より、彼女達
  から入ってくる方が多いくらいだ。
 
  その彼女達が2人揃って、現在、一番『お妃様』に
  近い候補は『アンジー』だって言ってたんだよ。

  ん~……子供の言うこと、鵜呑みにしてる私って、
  どうかと思うけど。
  ”情報”はないよりマシだ。

  で、お妃様に誰がなるのか?
  正式発表がなされる建国記念日まで、
  あと約1年あるとは言っても。

  私は選にもれた時の事を考慮し、
  先の身の振り方を考えておく必要がある。


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