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第2章 東京編
不意打ち
しおりを挟む「くそっ!」
また繋がらなくなった和巴の回線に酷く苛立ち、
俺は目の前の鉄網を蹴った。
こうゆう時は何かに集中し時間を忘れるに限る
と屋上からオフィスに行く。
静流はコピー機相手に奮闘している。
さっき少し八つ当たり気味で話した事を謝ろうと、
彼女の机の前を通った時に、
サイレントに設定しているスマホが震えていた。
画面表示は『KAZUO』
静流とはお互い物心ついた頃からの付き合いだ。
男も女も交友関係は知り尽くしている。
”かずお”なんて知人はいなかったハズ。
鼓動が速くなる……かずはなのか?
静流は大量の資料をコピーしていて気付いてない。
俺は、少し震える手でスマホの通話ボタンを押した。
『あ、もしもし? 和巴です。お仕事中すいません』
あれっ ―― 何も聞こえない。
電波悪いのかな?
「静流さん? もしもし?」
無反応だ。一度切って、も1回……
『元気か?』
その声に、身体が硬直する。
匡煌さん?
『和巴、元気 ―― なのか?』
「っ……」
キッチンから味噌汁をテーブルに運んできたベラが、
硬直している私に気付いた。
「どーしたの?」
『かずは……声を、聞かせてくれ、和巴?』
「ぁ、ぇっ、と……げ、んき」
スマホを持つ手が震え始める。
片方の手で強く握って、自分の部屋に入った。
『そうか。元気なら、それで良い』
匡煌さんの声を聞いたら、
今まで抑え込んでいたものが溢れ出てしまう!
私は震え始めた身体を自分で抱きしめた。
何を話していいか……
妥当な言葉が何も思い浮かばない。
『1人くらし……楽しんでるか?』
「まぁ、ね……」
『そうか』
沈黙が続く ――
な、何か、話さなきゃ……
「こ、婚約したんだね……おめでとう」
違うっ!
そんな言葉を言いたいわけじゃないのに、
私の口が自然に……。
匡煌さんは沈黙している。
違う。違うんの匡煌さん。
訂正しようと口を開いた時 ――
『……それは、お前が望んだんだろう?』
声のトーンがオクターブ低くなった匡煌さんの声が
頭に響いた。
「あ……」
『俺はその通りにしただけ……』
「あ ―― っ、わ、わたし……」
電話の向こうで、静流さんの声がした。
匡煌さんを怒鳴っている。
静流さんが電話に出た。
『もしもし! 聞こえる? 和巴? もしもし!!』
「あ、はい、聞いてます」
『ごめんなさい。つい、うっかり机の上に
置きっぱなしにしてしまって。本当にごめんね」
静流さんは一生懸命謝ってくれた。
彼女の声で、全身の硬直も解けて震えも
収まっていた。
「大丈夫です、北海道には予定通り行きます。
あ、ルームメイトも一緒していいですか?」
「もちろんよ。着いたら連絡頂戴ね」
「はい、失礼します」
笑いながら通話を切る。
「何かあった?」
部屋の入り口に心配顔のベラが立っていた。
「何もないよ」
私は笑いながらリビングに行く。
「ほんとに?」
「うん、何もない……京都でバイトしてた会社の人が
出たからびっくりしただけ」
「そう? ならいいけど……」
私は食事を再開しながら、
お盆休みに計画してる北海道旅行に話題を変えた。
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