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第2章 東京編
募る想い
しおりを挟む夕食の後片付けをして。
お風呂に入って。
明後日の薫さんのスケジュールを確認。
ベッド脇のスタンドを消し、就寝。
でも……なかなか寝付けない……
もう12時か……匡煌さん、
暑気あたりで入院したって聞いたけど、
あの様子じゃまた無理して仕事詰めてるんだろう。
考えまいとすればするほど思いは募り、
彼の顔が脳裏に浮かぶ。
ベラは何か気付いたんだろうか?
「……匡煌さん……会いたい……」
私は小さな声で呟いて目を閉じた。
*** ***
匡煌さんは私に微笑みかけてくる。
最後に会った時 ――
『―― 私は絶対匡煌の傍を離れない。
それが出来ないくらいなら死んだ方がマシよ。
匡煌のいない生活なんて、も、考えられないん
だから』
ついその場の勢いであんな事を言ってしまって、
今は少し後悔している。
私がそばに居れば『各務匡煌』に迷惑がかかる。
彼にとっての私は足枷でしかないから。
京都から離れたとしてもそれは変わらない。
私と出逢わなければ ―― 私さえいなければ、
匡煌さんは幸せな家庭が築けるんだ……
愛してるから……大好きだから、
身を引こうと決めた。
私に微笑む顔を見て涙が溢れる……
一番好きな顔を、私は裏切った……
ごめん、私を、許さないで……
涙を誰か拭ってくれる ――
抱きしめてくれる。
「もう、泣かなくていいから……」
匡煌さん? 上京したのは夢なのか?
私の傍に居てくれるの?
私も彼を強く抱きしめた。
でも、ちょっと待てよ ――?
私は確かに東京へ来た ―― それは間違いない。
私は目を開けた。
「はよ~、寝坊助くん」
至近距離にベラの顔がある!
「大丈夫~? 泣いてるけど」
「あ……」
私は、もしや抱きついていないか?
そして……抱きしめられてないか??
「もう大丈夫、私がついてる」
(It's all right now.
Because I am attached.)
笑いながら私の瞼にキスをして涙を吸い取った!!
瞬間、私の意識は完全覚醒した!
「ちょっっ! 何してる??」
私の布団の中にベラもいる!
しかも上半身裸!
……私は服を着ている。良かった……
「昨夜、シャワー浴びてリビングに戻ったら
カズハは寝てて、ベッドに運んだら私も
眠くなってさ」
私見て、テヘッと笑う。
「……顔、近くない?」
「あー、気にしない気にしない、
カズハの寝姿も可愛いすぎ。
しかも泣いてるし、顔真っ赤だよ」
私は慌てて涙を拭いて、ベラへ背を向けた。
「……まさてるって言ってたけど、誰?」
背後からベラが聞いてきた。
心臓が痛いくらい鼓動を速める。
「こ、この間死んだ実家の番犬。
子供の頃からずっと可愛がってたから、
夢にまで出てきちゃたのかなぁ、アハハハ ――」
咄嗟にわざとらしいでまかせをかました。
「ふぅぅぅん、ワンちゃんなんだぁ……
また随分と人間っぽい名前つけたねぇ……」
明らかに嘘だとばれてる……当然か。
ベラはベッドから出る。
「シャワー浴びな、朝飯出来てるよ」
言いながら部屋を出て行った。
私は着替えを持って、急いで浴室に向かい、
匡煌さんの事を思うと自然に溢れ出る涙を
熱いシャワーで流した。
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