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第2章 東京編
再会
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自分ではベラの後をすぐ追いかけたつもりだったけど
あっという間にベラの姿を見失ってしまった。
あとは ―― ホテルへ戻るか? それとも……
と考えを巡らせている途中でお腹の虫が鳴って
空腹を訴えられた。
……とりあえず、どこかで軽く食べてから帰ろう。
尖沙咀まで戻って重慶大厦(チョンキンマンション)
で手頃な食堂を探す。
飲食店や洋服を売ってる店・ジュエリーショップ・
雑貨屋など様々な商店が並ぶ2階通路を歩き出して
間もなく ――
「和姉」「和巴」と男性の声で呼び止められた。
振り返るとそこに立っていたのは弟・理玖と
その彼氏・晴彦。
「あら、どうしたの? 2人共こんな所で」
「晴彦はバラエティーのロケ収録で僕は付き添い」
「そう……」
「一緒に飯でもどうだ?」
「うん。ちょうど私もいいお店探してたとこ」
***** ***** *****
私はお猪口にちょっとのお酒でもすぐ顔に出ちゃう
くらいアルコールには弱いけど。
理玖はかなり強い方だと思っていた。
でも、目の前の理玖は酔いで顔を真っ赤にして、
晴彦を舐め回すように見ている。
私はそんな理玖を片肘ついて眺めている。
「理玖、お前の目つき、怖い」
「そう?」
ニヤっと笑いながら私見て、
再度晴彦へ視線を戻した。
「なんか俺……身の危険を感じるんだけど」
全然酔えない晴彦が苦笑しながら理玖を見ると、
理玖はすかさず晴彦の手を握る。
「り……理玖?」
晴彦は手を離そうとするが、
理玖は彼の手を離さない……
2人は手をつないだまま、ごく自然に見つめ合う。
ちょっと ちょっと……
こんな所でキスとか止めてよねぇ。
いくらなんでもマズいよ。
私だって、男同士のキスなんて見たくないし……
だけどこの状況はマズいと判断して、
私はホテルに戻ることを決めた!
「出よう。結構食べたし飲んだし……」
本当はまだ食べ足りないし・飲み足りない。
「―― ほら! 立って立って!」
見つめ合っている2人を強引に促し、
店員さんに会計を頼んで帰り支度を始めた。
店を出てホテルに向かう途中、
24時間営業のスーパーの明かりが目につき。
前を歩いている2人に声をかける。
「スーパー寄って帰るから、先に行ってて」
「オッケー。気をつけてねー。
迷子になったら電話しなよ」
「なんないわよ」
理玖と晴彦に手を振って、私は店に入った。
帰ってから食べるお夜食と明日の朝ごはんと……
あ、そうだ、あの2人にはスタミナドリンクでも
買って行ってあげよう。
時間はまだ夜の8時過ぎ……
理玖はかなり酔ってたけど、私は全然物足りてない。
リカーコーナーでアルコールを物色。
何飲もうかなぁ……ビール飲んでなかったから、
ビールにしよう!
で、おツマミとワインも買って……
考えながら振り返った時、誰かとぶつかってしまった!
「あ、すみません」
「私こそゴメンナサイ」
お互い謝りながら顔を見ると、
今日昼間九龍公園で写真を撮ってあげた綺麗な
外人さんだった。
(その時ベラはトイレに行っていていなかった)
「あ」
「あら、偶然ねぇ? 公園ではありがとう」
「いいえ……日本語お上手なんですね」
香港は世界を代表する免税店ショッピング大国。
だから様々な国から観光客も集まる。
今どき外国人観光客なんて珍しくもないけど、
やはり外人さんと話すのは緊張する……って、
ルームメイトはハーフの人だけど。
少し照れながら、その女性と話し始めた。
するとその女性の背後から男性が顔を出した。
「どうしたー? ステフ。あー? 小鳥遊くん
じゃないか」
「あ、笙野部長……」
「こんな所で会うなんて奇遇だな」
「ルームメイトが香港出身なので」
「そうか」
「部長は……お仕事、ですか?」
「いや、彼女の実家に挨拶さ」
すると女性の方が口を開いた。
「じゃあ、ベラのルームメイトってあなた
だったの?」
「ベラ……?」
女性はにっこり微笑み、
「改めてはじめまして。イザベラの姉でステファニー
って言います。ステフって呼んで」
ベラが実家でお母さんに言っていた言葉が
思い出される。
『――それで傷つくのはステフなんだよ。
自分の娘を泣かせてまで、どうしても再婚したい
ってなら止めない。好きにすればいいじゃん』
傷つく……泣かせてまで……
それにあの時お母さんが言ってた”笙野家”
とは部長の実家?
それぞれにどんな事情があるにせよ。
人の縁って、ほんとに不思議だ。
ひとり ひとりの友達がさらに多くの友を呼び、
さらに大きな友達の輪を形成していく。
「何かあったのか?」
また背後から声が聞こえた。
ステフさんが、背後の人に説明する。
「公園で写真撮って貰ったって言ったでしょう?
この子なの!」
どこかで聞いた事がある声だな……
と軽く考えながら、私の事を説明しているなら
振り向いて、挨拶をしなければいけないと思った。
私が振り向くと、その人の表情が固まった。
この顔、見た事があると一瞬思ったが、
『一瞬』が過ぎた後、体内時計がピタリと
止まってしまった。
明日の事が楽しみで、初めての海外旅行が楽しくて
……私は一番大事な事を忘れていた。
忘れてはいけなかったのに、
用心しなければいけなかったのに。
匡煌さんと再会してしまった。
あっという間にベラの姿を見失ってしまった。
あとは ―― ホテルへ戻るか? それとも……
と考えを巡らせている途中でお腹の虫が鳴って
空腹を訴えられた。
……とりあえず、どこかで軽く食べてから帰ろう。
尖沙咀まで戻って重慶大厦(チョンキンマンション)
で手頃な食堂を探す。
飲食店や洋服を売ってる店・ジュエリーショップ・
雑貨屋など様々な商店が並ぶ2階通路を歩き出して
間もなく ――
「和姉」「和巴」と男性の声で呼び止められた。
振り返るとそこに立っていたのは弟・理玖と
その彼氏・晴彦。
「あら、どうしたの? 2人共こんな所で」
「晴彦はバラエティーのロケ収録で僕は付き添い」
「そう……」
「一緒に飯でもどうだ?」
「うん。ちょうど私もいいお店探してたとこ」
***** ***** *****
私はお猪口にちょっとのお酒でもすぐ顔に出ちゃう
くらいアルコールには弱いけど。
理玖はかなり強い方だと思っていた。
でも、目の前の理玖は酔いで顔を真っ赤にして、
晴彦を舐め回すように見ている。
私はそんな理玖を片肘ついて眺めている。
「理玖、お前の目つき、怖い」
「そう?」
ニヤっと笑いながら私見て、
再度晴彦へ視線を戻した。
「なんか俺……身の危険を感じるんだけど」
全然酔えない晴彦が苦笑しながら理玖を見ると、
理玖はすかさず晴彦の手を握る。
「り……理玖?」
晴彦は手を離そうとするが、
理玖は彼の手を離さない……
2人は手をつないだまま、ごく自然に見つめ合う。
ちょっと ちょっと……
こんな所でキスとか止めてよねぇ。
いくらなんでもマズいよ。
私だって、男同士のキスなんて見たくないし……
だけどこの状況はマズいと判断して、
私はホテルに戻ることを決めた!
「出よう。結構食べたし飲んだし……」
本当はまだ食べ足りないし・飲み足りない。
「―― ほら! 立って立って!」
見つめ合っている2人を強引に促し、
店員さんに会計を頼んで帰り支度を始めた。
店を出てホテルに向かう途中、
24時間営業のスーパーの明かりが目につき。
前を歩いている2人に声をかける。
「スーパー寄って帰るから、先に行ってて」
「オッケー。気をつけてねー。
迷子になったら電話しなよ」
「なんないわよ」
理玖と晴彦に手を振って、私は店に入った。
帰ってから食べるお夜食と明日の朝ごはんと……
あ、そうだ、あの2人にはスタミナドリンクでも
買って行ってあげよう。
時間はまだ夜の8時過ぎ……
理玖はかなり酔ってたけど、私は全然物足りてない。
リカーコーナーでアルコールを物色。
何飲もうかなぁ……ビール飲んでなかったから、
ビールにしよう!
で、おツマミとワインも買って……
考えながら振り返った時、誰かとぶつかってしまった!
「あ、すみません」
「私こそゴメンナサイ」
お互い謝りながら顔を見ると、
今日昼間九龍公園で写真を撮ってあげた綺麗な
外人さんだった。
(その時ベラはトイレに行っていていなかった)
「あ」
「あら、偶然ねぇ? 公園ではありがとう」
「いいえ……日本語お上手なんですね」
香港は世界を代表する免税店ショッピング大国。
だから様々な国から観光客も集まる。
今どき外国人観光客なんて珍しくもないけど、
やはり外人さんと話すのは緊張する……って、
ルームメイトはハーフの人だけど。
少し照れながら、その女性と話し始めた。
するとその女性の背後から男性が顔を出した。
「どうしたー? ステフ。あー? 小鳥遊くん
じゃないか」
「あ、笙野部長……」
「こんな所で会うなんて奇遇だな」
「ルームメイトが香港出身なので」
「そうか」
「部長は……お仕事、ですか?」
「いや、彼女の実家に挨拶さ」
すると女性の方が口を開いた。
「じゃあ、ベラのルームメイトってあなた
だったの?」
「ベラ……?」
女性はにっこり微笑み、
「改めてはじめまして。イザベラの姉でステファニー
って言います。ステフって呼んで」
ベラが実家でお母さんに言っていた言葉が
思い出される。
『――それで傷つくのはステフなんだよ。
自分の娘を泣かせてまで、どうしても再婚したい
ってなら止めない。好きにすればいいじゃん』
傷つく……泣かせてまで……
それにあの時お母さんが言ってた”笙野家”
とは部長の実家?
それぞれにどんな事情があるにせよ。
人の縁って、ほんとに不思議だ。
ひとり ひとりの友達がさらに多くの友を呼び、
さらに大きな友達の輪を形成していく。
「何かあったのか?」
また背後から声が聞こえた。
ステフさんが、背後の人に説明する。
「公園で写真撮って貰ったって言ったでしょう?
この子なの!」
どこかで聞いた事がある声だな……
と軽く考えながら、私の事を説明しているなら
振り向いて、挨拶をしなければいけないと思った。
私が振り向くと、その人の表情が固まった。
この顔、見た事があると一瞬思ったが、
『一瞬』が過ぎた後、体内時計がピタリと
止まってしまった。
明日の事が楽しみで、初めての海外旅行が楽しくて
……私は一番大事な事を忘れていた。
忘れてはいけなかったのに、
用心しなければいけなかったのに。
匡煌さんと再会してしまった。
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