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第2章 東京編
アフターピュロートーク
しおりを挟む気がついたら、部屋の中は薄暗くて静かだった。
ベッドの宮だけに明かりがついている。
気を失ってたんだ……
真っ裸で横向きに寝ていた私の体を、
匡煌さんが後ろから抱きしめて寝ていた。
「起きたのか?」
首筋にキスをして匡煌さんが聞いてきた。
「気ぃ……失ってたんだぁ」
「あぁ」
「水、飲んでくる」
「ん……」
匡煌さんは目を閉じた。
私は笑いながら服を着てプライベートテラスへと
向かう。
何とか歩ける ―― 今は早朝5時。
水飲んだら、町に出て朝ごはんにしよう……
彼 ―― 匡煌さんには声をかけていく?
それともこのまま黙って出るか?
いや、ちゃんと言って出よう。
私はペットボトルの水を一気飲みして、
部屋の中に戻り、
自分のバッグを持って匡煌さんの頬にキスをした。
「帰るよ」
耳元で囁く。
「だめだ……」
匡煌さんは寝ぼけながらうっすらと目を開ける。
「黙って行こうと思ったけど、
それは嫌だからちゃんと伝えた。帰る」
「もう少し、ここに居てくれ……頼む」
私の手を掴んで匡煌さんが言った。
この調子だと、すぐに眠ってしまう。
バッグを置いて布団に入った私を匡煌さんが
抱きしめてきた。
私も抱きしめ返す。
「おやすみ……」
キスをしながら言うと、匡煌さんが微笑んだ。
「おやすみ」
言いながら私にキスを返して目を閉じた。
そのまま、完全に眠ってしまった。
しばらく様子を見て、
そっとベッドから出るが匡煌さんは眠ったままだ。
私はフッと笑み、匡煌さんに軽くキスをして
部屋を出た。
エレベーターに乗り込んで”G”と表示された
ボタンを押す。
(香港のエレベーターは英国式なので”G”は、
ground floorの意味。日本式で言う1階に相当)
今日1日の出来事を思い出しながら笑ってしまった。
今までは泣いていた。でも、今は笑ってる。
どんなに私が彼を避けようとしても、偶然が私達を
惹き逢わせる。
大げさな言い方かも知れないけど、
運命には逆らえないって観念したのかもしれない。
上京する前、
―― もし、何年か後、
彼と偶然何処かで再会しても、
笑顔で話しが出来るように……。
私は強くなる。
って、決心した通り、今の私は強くなれたのかな。
そんな事をぼんやり考えながらエレベーターから降り
朝の町へ歩を進めた。
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