7年目の本気

NADIA 川上

文字の大きさ
110 / 124
第2章 東京編

楓からのS・O・S

しおりを挟む
 R R R R R R R R ――――――

 呼び出し音は虚しく鳴り続ける……

 
 自宅とアパートの固定電話にも、留守電メーセージ
 を入れ。

 時間をみつけてはこうして携帯電話へもコール
 しているが、世良楓からの反応は全くない。

 仕事も1*日以降はずっと休んでいるらしい。

 恐らく、マスコミ対策で何処かに雲隠れしているの
 だろうが、和巴は楓が久しぶりにかけてきた
 あの電話がずっと気になっていた。


 和巴はタクシーのシートに深く座りながら
 ふと窓の外に目をやった。

 ん……?

 和巴は思わずメガネをズラして目を擦り、も1度
 メガネをかけ直してから窓の外を凝視した。

 運転手がギアチェンジをして方向転換。


「あ、ごめんなさい ―― ここでいいわ」


 運転手は如何にも不機嫌な顔をした。

 そりゃそうだ。
 まだ乗ってほんの数分しか経っていない。

 和巴は野口英世を出した。


「お釣りは結構です」


 運転手は当たり前だ、と言う感じで
 『ありがとうございましたぁ』
 おざなりの挨拶をした。

 やっぱりお釣り貰っときゃ良かったか……

 キャップを目深にかぶり直しタクシーから降りて
 さっきタクシーが方向転換をした地点へと戻り
 小走りに歩き出した。


 1~2分程で目的の地点へは着いたが、
 その周辺をかなりしつこく見回しても、
 和巴が求めたモノは見当たらなかった。


「やっぱ私の見間違い、だったのかなぁ……」


 和巴は、さっきまで乗っていたあのタクシーが
 方向転換をした瞬間、この交差点付近で
 楓の姿を見かけた。

 あの同窓会が世良との久しぶりの再会だった
 よう。
 楓とも、この6~7年は会っていない。
 だから、あの時見たのが楓だと何故分かったのか、
 自分でも良く分からない……。

 もしかしたら、他人の空似 ――
 ただの見間違いだったのかも知れない。

 いずれかもはっきりしないモノを探すのは諦め、
 歩き出して……ふと、足が止まる。

 昔、お祖母ちゃんが言ってた言葉を思い出した。


 ”そうかい、和ちゃんにも視えるんだねぇ……
  けど、実体がないからって、怖いモノばっかり
  じゃないのよ。人には自分がどうしても身動き
  取れない時、自分の身代わりが誰かに自分の
  状況を教えてくれる事があるの”


「自分の、身代わり……身動きがとれない……」


 ハッとした和巴は、路肩へ飛び出しタクシーの
 空車に手を上げた。


 何事も”ない” なら ”ない”でいい。

 何より今は、この胸の中でざわめく嫌な胸騒ぎを
 鎮め、1分1秒でも早く楓の無事を確かめたい。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

処理中です...