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第2章 東京編
第二幕 ―― そして終演
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【第二幕 ―― 沼の畔の墓地】
森の中の沼のほとり。
巨木のもつれあった枝や、
垂れ下がったつるが妖気迫る雰囲気を
醸し出している。
夜更け。月光に照らされ、ヒラリオンがジゼルの墓に
近づいてくるが、鬼火が飛び交うのを見て、
恐ろしさのあまりその場を逃げ去る。
おごそかな静寂の中、ウィリの女王ミルタが現れる。
ウィリは婚礼前に死んだ娘の霊で、
彼女達は通りかかる男たちを誘い込み、
息絶えるまで踊らせるのだ。
―――― 中略 ――――
ジゼルはアルブレヒトを救おうと、
ミルタに懇願するが彼女は冷たく、
踊り続けることを命ずる。
必死にかばうジゼル。
最後の力を振り絞って踊るアルブレヒト。
アルブレヒトの命の灯火がまさに
消えようとする寸前、
夜明けを告げる鐘の音が響き、彼は救われる。
ウィリたちは朝霧のなかに静かに消え、
次第に明るさを増す森に二人の永遠の別れの時が
訪れる。
やがてジゼルは墓の中へと消えていき、
アルブレヒトは朝の光のなかに一人
虚しく佇むだけだった……。
―― 閉幕
喝采の拍手の中、無事代役を務めきった和巴が
勇人に促されレべランスをし頭を上げた――
その時だ。
「……ぇ」
終劇早々、人の出入りがあったのか?
舞台正面の出入り口扉が開けられた。
その瞬間、外の光が暗闇の客席へと舞い込み
舞台から見たその一部分だけが、
光の空間のように感じられる。
(ぇ ―― うそ、もう帰っちゃうの……?)
それはほんの一瞬だった。
1回目のカーテンコールが終わって、
緞帳が降りきる数秒よりも短い間。
見慣れた背中の男が出てゆく後ろ姿がチラリと
見えた気がした。
あれが彼だとは言い切れない、けれど……
何回目かのカーテンコールが終わっても
到底和巴の胸の鼓動は収まってくれようとは
しない。
さっきまで彼は関係者用の観劇席に座っていた。
もう、カーテンコールまで済んだのだから、
関係はない。
と、でも言うのか?
(お願い ―― 間に合って!)
ようやく最後のカーテンコールが終わり、
緞帳が全て降りきったところでステージ袖の
宗方が晴れ晴れとした声をあげた。
「皆んな、お疲れさま」
それを合図に双方から同じ言葉が飛び交う。
「お疲れさまでしたっ」
ステージの一番前で最後まで客席に
頭を下げていた和巴は、相手役の勇人と
幕間の僅か数十分でジゼルを教えてくれた
泪へ早口に挨拶だけを残し楽屋へと下る階段へ
駈け出した。
森の中の沼のほとり。
巨木のもつれあった枝や、
垂れ下がったつるが妖気迫る雰囲気を
醸し出している。
夜更け。月光に照らされ、ヒラリオンがジゼルの墓に
近づいてくるが、鬼火が飛び交うのを見て、
恐ろしさのあまりその場を逃げ去る。
おごそかな静寂の中、ウィリの女王ミルタが現れる。
ウィリは婚礼前に死んだ娘の霊で、
彼女達は通りかかる男たちを誘い込み、
息絶えるまで踊らせるのだ。
―――― 中略 ――――
ジゼルはアルブレヒトを救おうと、
ミルタに懇願するが彼女は冷たく、
踊り続けることを命ずる。
必死にかばうジゼル。
最後の力を振り絞って踊るアルブレヒト。
アルブレヒトの命の灯火がまさに
消えようとする寸前、
夜明けを告げる鐘の音が響き、彼は救われる。
ウィリたちは朝霧のなかに静かに消え、
次第に明るさを増す森に二人の永遠の別れの時が
訪れる。
やがてジゼルは墓の中へと消えていき、
アルブレヒトは朝の光のなかに一人
虚しく佇むだけだった……。
―― 閉幕
喝采の拍手の中、無事代役を務めきった和巴が
勇人に促されレべランスをし頭を上げた――
その時だ。
「……ぇ」
終劇早々、人の出入りがあったのか?
舞台正面の出入り口扉が開けられた。
その瞬間、外の光が暗闇の客席へと舞い込み
舞台から見たその一部分だけが、
光の空間のように感じられる。
(ぇ ―― うそ、もう帰っちゃうの……?)
それはほんの一瞬だった。
1回目のカーテンコールが終わって、
緞帳が降りきる数秒よりも短い間。
見慣れた背中の男が出てゆく後ろ姿がチラリと
見えた気がした。
あれが彼だとは言い切れない、けれど……
何回目かのカーテンコールが終わっても
到底和巴の胸の鼓動は収まってくれようとは
しない。
さっきまで彼は関係者用の観劇席に座っていた。
もう、カーテンコールまで済んだのだから、
関係はない。
と、でも言うのか?
(お願い ―― 間に合って!)
ようやく最後のカーテンコールが終わり、
緞帳が全て降りきったところでステージ袖の
宗方が晴れ晴れとした声をあげた。
「皆んな、お疲れさま」
それを合図に双方から同じ言葉が飛び交う。
「お疲れさまでしたっ」
ステージの一番前で最後まで客席に
頭を下げていた和巴は、相手役の勇人と
幕間の僅か数十分でジゼルを教えてくれた
泪へ早口に挨拶だけを残し楽屋へと下る階段へ
駈け出した。
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