7年目の本気

NADIA 川上

文字の大きさ
113 / 124
第2章 東京編

生命の重さ

しおりを挟む
 世良の被疑者勾留が決定した事を手嶌から聞き、
 世良家から楓の着替えを持って病室を訪れた
 和巴に楓が、一番最初かけた言葉は「ゴメン」
 だった。
 

「うん……自分で自分の命を絶とうとしたのは
 凄く悪い事だね……でも、そうするしかない
 くらい、楓は辛かったんだよね」
 
 
 楓の小さな顔が布団の中に隠れた。
 鼻を啜る音がするから、泣いてるのだとわかる。

 こんな精神的に弱っている妹に兄の事を
 正直に告げて良いものか?
 和巴は迷っていた。
 
 でも、この世良関連の話題は今一番タイムリーな
 ニュースなので、黙っていてもいずれ楓にだって
 知れてしまう。
 
 楓は法曹家志望でこの手の事柄には和巴より
 ずっと詳しいし敏感なのだ。
 
 やがて布団の中に隠れた楓のすすり泣く声も
 止んで、楓が照れくさそうに顔を出した。
 
 
「少しは落ち着いた?」 

「うん……」

「実はね京都にいる姉があなたにこっちへ来て
 みないか? って言ってるんだけど」


 忍・楓、2人の両親は5年前離婚。
 楓は東京に住む母親に引き取られ現在に至った
 のだが、保護者である母・美鈴は行方知れず
 なのだ。 
 
 千早が世良を心配して電話してきたので、
 和巴は楓の一時保護を頼んだ。
 
 
「こっちって、京都に?」

「うん。食堂とユースホステルやってるから
 年中せかせかしてるし、自分の家族の事こんな風に
 言うのも何なんだけど、皆んなのんびりした
 穏やかな人らだよ」  
 
「……」

「おそらく、あっちへ行ってもマスコミとかには
 追われると思うけど、姉や義理の兄も甥も
 皆んなが楓を守るから。それだけは安心して」
 
「……わたし、なんかがお世話になったら、皆さんに
 迷惑だよ」
 

『迷惑なんだったら誘ったりしないよ』 

  
 その声は廊下から聞こえた。
 楓は何事? と、キョトンとしているが。
 和巴は ――
 
 
「もうっ、千早姉、気が早すぎ。お店は大丈夫なのー」


 「心配で、気が気じゃなくってね」
 と、千早が入ってきた。  

「!……」

「こんにちは。はじめまして。和巴の姉で千早
 って言います」
 
「あ ―― ども、かえで、です……」

「宜しい。ちゃんと自己紹介できたじゃん」


 (って、幼稚園児じゃないんだから……)
 
 
「で、退院はいつ出来るの?」    



 この3日後、楓は無事退院。
 千早に連れられ京都へ旅発った。
 
 世良の事に関しては手嶌先生の頑張りに
 賭けるしかないのだが。
 
 今のところ明るいニュースはあんまり入ってこない。
 
 接見禁止処分も相変わらず続行中なので、
 顔すら見る事も出来ず。
 イライラは日毎に積もってくばかりで。
 新聞の一面とか、ニュースでいつ世良の処分が
 報道されるか?
 不安で堪らない。
 
 いずれにせよ、結果が出される被疑者勾留の
 リミットまであと2週間弱……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

処理中です...