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第2章 東京編
ジゼル 初日
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土壇場のWキャスト配役と主役・九条勇人の
熱愛肯定宣言が良くも悪くも話題を集め、
ミュージカル『ジゼル』初日のチケット売り上げは
WDCでも歴代2位を記録した。
会場となるWDC大ホール前の通りは、
通常の2倍の行列整理スタッフを投入しなければ
いけない程、チケット(当日券)を求める人々で
ごった返し、時間が過ぎるごとにその数は確実に
増えていった。
出入口全てのガラス扉に
「ジゼル」(藍子バージョン)の
ポスターが貼り出される。
そして、本日初日という大文字。
全てのチケット売り場窓口へ、
早くも「本日分完売」のプレートが出された。
大ホール・ステージ幕内
さっきまで出演者一同によるバーレッスンが
行われていて。
今は各出演者も裏方スタッフも直前の
ウォ-ミングアップと総チェックで大忙しだ。
チケットの売れ行き通り
客席は開場数分後には満席になり、
初日のみのファンサービスとして、
可能な限り立ち見客も受け入れられ、
場内は文字通り大入り満員の大盛況と
なっている。
ステージ幕内では、
各々が開演へ向け自分達のポジションに着いて、
静かにその時を待つ。
裏方スタッフのベルボーイが告げながら
小走りに去っていく。
『まもなく2ベル入りまぁす』
勇人はちょっとイライラした様子で
楽屋の方を見つつ。
「ったく、藍子の奴メイク直しに
何十分かける気だっ?!」
アカデミー(団附属のバレエ学校)から
特待生としてコールド・バレエ(群舞)で
特別参加の大地が言う。
「オレ、呼んでくるよ」
さっきのベルボーイがここでも
<2ベル入りまぁす>と叫びながら、
走り去って行った。
それと入れ違いでやって来た大地が、
藍子の楽屋のドアをノックする。
「藍子さん? そろそろ開演だけど」
室内から藍子の声。
『ハ~イ、すぐ行きます』
その楽屋の中――――
メイクと衣装の最終チェックを鏡で見ながら済ませ、
すぐ出て行こうとしてまだ素足な事に気がつく。
「!ったくもう――落ち着け、私……何てことないわ、
いつもの稽古の延長よ……だから、落ち着け……」
ドレッサーの足元へ置いてあるトウシューズに足を
入れたその時!
鋭い激痛に貫かれ、その足を庇うようにその場へ
座りこむ。
慎重にそのトウシューズを脱ぐと、割れたガラス片が
数個シューズの裏へ突き刺さっており、それが藍子の
足裏をかなり深く傷つけている。
外廊下で<1ベル入りま~す>の声。
再びドアがノックされ大地の声も藍子を急かす。
ステージ幕内 ~ 上手
板付き(初めからステージ上の定位置にいる)
出演者達及びオーケストラピットの
プレイヤー(演奏家)達もスタンバイ完了し。
客席側に開演を知らせるベルが鳴り、
アナウンスも観客達に着席を促す。
エディ達出番待ちの出演者のいるステージ上手へ
やっと藍子が現れた。
「お前、おっせぇよ」
「ごめんなさい。
シューズがなかなか見付からなくて」
熱愛肯定宣言が良くも悪くも話題を集め、
ミュージカル『ジゼル』初日のチケット売り上げは
WDCでも歴代2位を記録した。
会場となるWDC大ホール前の通りは、
通常の2倍の行列整理スタッフを投入しなければ
いけない程、チケット(当日券)を求める人々で
ごった返し、時間が過ぎるごとにその数は確実に
増えていった。
出入口全てのガラス扉に
「ジゼル」(藍子バージョン)の
ポスターが貼り出される。
そして、本日初日という大文字。
全てのチケット売り場窓口へ、
早くも「本日分完売」のプレートが出された。
大ホール・ステージ幕内
さっきまで出演者一同によるバーレッスンが
行われていて。
今は各出演者も裏方スタッフも直前の
ウォ-ミングアップと総チェックで大忙しだ。
チケットの売れ行き通り
客席は開場数分後には満席になり、
初日のみのファンサービスとして、
可能な限り立ち見客も受け入れられ、
場内は文字通り大入り満員の大盛況と
なっている。
ステージ幕内では、
各々が開演へ向け自分達のポジションに着いて、
静かにその時を待つ。
裏方スタッフのベルボーイが告げながら
小走りに去っていく。
『まもなく2ベル入りまぁす』
勇人はちょっとイライラした様子で
楽屋の方を見つつ。
「ったく、藍子の奴メイク直しに
何十分かける気だっ?!」
アカデミー(団附属のバレエ学校)から
特待生としてコールド・バレエ(群舞)で
特別参加の大地が言う。
「オレ、呼んでくるよ」
さっきのベルボーイがここでも
<2ベル入りまぁす>と叫びながら、
走り去って行った。
それと入れ違いでやって来た大地が、
藍子の楽屋のドアをノックする。
「藍子さん? そろそろ開演だけど」
室内から藍子の声。
『ハ~イ、すぐ行きます』
その楽屋の中――――
メイクと衣装の最終チェックを鏡で見ながら済ませ、
すぐ出て行こうとしてまだ素足な事に気がつく。
「!ったくもう――落ち着け、私……何てことないわ、
いつもの稽古の延長よ……だから、落ち着け……」
ドレッサーの足元へ置いてあるトウシューズに足を
入れたその時!
鋭い激痛に貫かれ、その足を庇うようにその場へ
座りこむ。
慎重にそのトウシューズを脱ぐと、割れたガラス片が
数個シューズの裏へ突き刺さっており、それが藍子の
足裏をかなり深く傷つけている。
外廊下で<1ベル入りま~す>の声。
再びドアがノックされ大地の声も藍子を急かす。
ステージ幕内 ~ 上手
板付き(初めからステージ上の定位置にいる)
出演者達及びオーケストラピットの
プレイヤー(演奏家)達もスタンバイ完了し。
客席側に開演を知らせるベルが鳴り、
アナウンスも観客達に着席を促す。
エディ達出番待ちの出演者のいるステージ上手へ
やっと藍子が現れた。
「お前、おっせぇよ」
「ごめんなさい。
シューズがなかなか見付からなくて」
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