仕事も恋も真剣勝負 ~~ 24才の賭け

NADIA 川上

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出来る事からコツコツと

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今日も昼キャバ勤務明けの咲耶は、正紀と2人連れ立って
帰路を歩く。


「あ、あれっ ―― あそこ……」

「ん?」

「ホラ、あの本屋の前にいるの、噂の弟くんとちゃう?」


そう、正紀に言われ、その指先を辿れば。
正紀の言った通り、沿道にある本屋の前に
拓実が立っていた。

ほんの少しイタズラ心を出し、
そうっと後ろに歩み寄って、真後ろに立ったところで
『たくみぃ!』と言いながら抱きつくと ――


「どわっ!! な、なんなんだ ――?!」


予想以上のリアクションで驚いた拓実を見て、
咲耶も正紀も大笑い。


「ぎゃははは ―― ウ~ン、予想以上のリアクション
どーもね」

「お、脅かすなよ。グリズリーでも襲ってきたのかと
思った……」


その言葉に正紀は目尻に涙を滲ませ大笑い。


「ぎゃははは……お、おれ、もうだめ、笑い過ぎで
ハラが……」

「グ、グリズリー、ってねぇ……普通こんな都会に。
ってか、動物園以外でクマなんか見ないから」

「でも登紀子が言ってたぞ。東京や大阪の大都市では
野良クマが頻繁に山から降りてきて、農作物を荒らし
まくってるって」


(ったく! 母さんってば、子供に何ってこと吹き込んで
るのよ……)


「―― ところで、何してたの?」

「あ、い、いや、別に……」


と、言いながらも、俯いた拓実の視線は本屋の店頭
ラックにある雑誌に注がれていて ――


「……マンガ、欲しいの?」

「あ、その ―― マンガって日本の文化のひとつなん
だって? これなら、細々した生活の事とかオレにも
分かり易いかなって」

「うん……なるほどね。じゃ、気に入った本、選びな。
買ってあげる」



私なんて、23になった今もあれやこれや、欲しい物
だらけで困るくらいなのにっ!

拓実は、驚くほど物欲がない。

だからあの日、2人で初めてファミレスへ行った時
だって。
注文を決めさせるのもひと苦労だった。

でもって ――
毎食ファミレスってわけにもいかないので。

”ここがうちの食物保存庫よ” って、
コンビニへ連れて行ったら ――


『あ、たくみ ―― 米ドルは使えんから』


代金をドルで支払おうとするし ――


『こらこら、1度封を明けた物は棚に戻しちゃダメ』


会計前の商品でも勝手に開けて食べるし。
挙げ句の果ては両腕に抱えきれないほどの
コンビニ弁当を持ってきた。


『別にそれ全部食う気なら買ってもいいけど。そんな
大量のお弁当1人で食べたら確実にお腹壊すよ』


私はちょっとした社会科見学のつもりで連れて
行ったんだけど

コンビニにいた僅か数十分だけで、
丸1日フル労働したくらいにぐったり疲れ。

大家のトクさんのご厚意に甘えて、
拓実の昼食と夕食だけはトクさんのお宅で
お世話して貰う事にした。


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