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それぞれの事情
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柊は後部席にゆったり座り、
膝に置いたノートPCで仕事中。
ふと、思いついたよう、フロントミラー越しに
国枝を見る。
「……何でしょう?」
「ちょっと、プライベートな質問を二三いいかな?」
「何ですか、また急に改まって……」
「近々ツムラグループのCEOに就任される正親さん
には、最初の奥様との間に息子さんがいたよな」
「は、ぁ。正親様、曰く ”不肖の息子”だそうで」
「あぁ、結構な有名人らしいな、夜の町じゃ」
「……それが、どうか?」
「……ジェイクなのか?」
「やっぱりさっきの話、聞かれていましたか」
「んん、悪いとは思ったけどね」
「実は ―― 正親様は従来の順序通り出来れば
ご長男であるジェイク様に社の後継を任せたい
とお考えなのですが……」
「爺さんと、今の奥方がいい顔をしない?」
「いい顔をしないだけならいいのですがね……」
「?? ――」
「会長はご自分に懐いている下のお孫さんの
ヨシュア様を、それはもう大変な可愛がりようで
……どうしてもジェイク様を後継にと考えているなら、
結婚させて次の後継者を作らせろ、と申され
まして……」
それを聞き、柊は呆れたようため息を吐き、
「って、ジェイクはまだ16だろ」
「これもひとえに会社の行く末を考えての
事とは思うのですが、何とも、会長は妙な所に
意固地な処もございまして」
「で、その不肖の息子は反発し現在・家出中だと?」
「はぁ。正親様の今回のご帰国は、ジェイク様の
お嫁さん候補探しでもあるのです」
「何ともまぁ……気の早い話だな。ジェイでなくても、
家出したくなるわ」
そうこうしているうち、車はダウンタウンに
林立する中のビルの地下パーキングに
滑り込んでいく ――。
そこが、ジェイクの祖父が創業したレストラン
チェーン株式会社”TSUMURA”の本社ビルだ。
*** *** ***
柊はいつものようてっきり自分の他は助手の
手嶌だけがいるものと思って入っていった
本社ビル・最上階の会議室内に、
(この室がこの会社に於いての柊の仕事部屋)
会長・都村そしてその傍らに佇む色白な美少年の
姿を見て少し驚く。
「これは ―― 都村会長、ご無沙汰しております」
「んん、元気そうでなにより。実は今日からしばらくの
間、孫のヨシュアをキミの部下として使って貰おう
と、思ってな」
「と ―― おっしゃいましても、確かお孫さんはまだ
ハイスクールに通っているハズでは……」
「ハハハッ ―― 鳶が鷹を生む、とは良く言ったもの
でな、ヨシュアは先の夏休み中に大学の博士課程を
無事終了したんじゃよ」
アメリカの学校には ”飛び級”というシステムが
ある。
「(唖然)ほう ―― そうだったんですか。そうとは、
存ぜず失礼な事を申しました」
「構わんて。で、部下の件、引き受けてくれるか」
「はぁ、私のような者でお力になれるのなら」
「ヨシュア、この柊慎之介という男は見かけによらず
大変な切れ者だ。しばらく彼の下に就いて、経営の
ノウハウを学ぶが良いぞ」
「はい、お祖父様 ―― Mr柊、まだ右も左も
分からぬ若輩者ではございますが、ご指導
宜しくお願い致します」
「あぁ、こちらこそ宜しくな」
2人は固い握手を交わした。
膝に置いたノートPCで仕事中。
ふと、思いついたよう、フロントミラー越しに
国枝を見る。
「……何でしょう?」
「ちょっと、プライベートな質問を二三いいかな?」
「何ですか、また急に改まって……」
「近々ツムラグループのCEOに就任される正親さん
には、最初の奥様との間に息子さんがいたよな」
「は、ぁ。正親様、曰く ”不肖の息子”だそうで」
「あぁ、結構な有名人らしいな、夜の町じゃ」
「……それが、どうか?」
「……ジェイクなのか?」
「やっぱりさっきの話、聞かれていましたか」
「んん、悪いとは思ったけどね」
「実は ―― 正親様は従来の順序通り出来れば
ご長男であるジェイク様に社の後継を任せたい
とお考えなのですが……」
「爺さんと、今の奥方がいい顔をしない?」
「いい顔をしないだけならいいのですがね……」
「?? ――」
「会長はご自分に懐いている下のお孫さんの
ヨシュア様を、それはもう大変な可愛がりようで
……どうしてもジェイク様を後継にと考えているなら、
結婚させて次の後継者を作らせろ、と申され
まして……」
それを聞き、柊は呆れたようため息を吐き、
「って、ジェイクはまだ16だろ」
「これもひとえに会社の行く末を考えての
事とは思うのですが、何とも、会長は妙な所に
意固地な処もございまして」
「で、その不肖の息子は反発し現在・家出中だと?」
「はぁ。正親様の今回のご帰国は、ジェイク様の
お嫁さん候補探しでもあるのです」
「何ともまぁ……気の早い話だな。ジェイでなくても、
家出したくなるわ」
そうこうしているうち、車はダウンタウンに
林立する中のビルの地下パーキングに
滑り込んでいく ――。
そこが、ジェイクの祖父が創業したレストラン
チェーン株式会社”TSUMURA”の本社ビルだ。
*** *** ***
柊はいつものようてっきり自分の他は助手の
手嶌だけがいるものと思って入っていった
本社ビル・最上階の会議室内に、
(この室がこの会社に於いての柊の仕事部屋)
会長・都村そしてその傍らに佇む色白な美少年の
姿を見て少し驚く。
「これは ―― 都村会長、ご無沙汰しております」
「んん、元気そうでなにより。実は今日からしばらくの
間、孫のヨシュアをキミの部下として使って貰おう
と、思ってな」
「と ―― おっしゃいましても、確かお孫さんはまだ
ハイスクールに通っているハズでは……」
「ハハハッ ―― 鳶が鷹を生む、とは良く言ったもの
でな、ヨシュアは先の夏休み中に大学の博士課程を
無事終了したんじゃよ」
アメリカの学校には ”飛び級”というシステムが
ある。
「(唖然)ほう ―― そうだったんですか。そうとは、
存ぜず失礼な事を申しました」
「構わんて。で、部下の件、引き受けてくれるか」
「はぁ、私のような者でお力になれるのなら」
「ヨシュア、この柊慎之介という男は見かけによらず
大変な切れ者だ。しばらく彼の下に就いて、経営の
ノウハウを学ぶが良いぞ」
「はい、お祖父様 ―― Mr柊、まだ右も左も
分からぬ若輩者ではございますが、ご指導
宜しくお願い致します」
「あぁ、こちらこそ宜しくな」
2人は固い握手を交わした。
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