インシディアス

NADIA 川上

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こんな夜こそ抱きしめて

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  少しでもいいから外にも出てみるようにと
  言ったのは、ジェイクが国枝家に居候する
  ようになってから**さんの勧めで通い出した
  精神科医の医師だった。

  人は壁のない場所に時々は行った方がいいからと、
  そんな風に言われた。


  夕暮れ、人通りが少なくなった頃、
  近くの公園やちょっと足を伸ばして鴨川べりを
  歩くのがジェイクの日課となった。

  色づき始めた木々の若葉を見ながら、
  ゆっくり土の上を歩く時間は医者の言ったとおり、
  ジェイクにとって欠かせない安らぎのひととき
  となった。
 
  定期的に**さんの元へかかってくる
  父や大地からの電話で皆自分の帰りを心待ちに
  していると聞かされているが、まだ、シカゴへ
  戻る気持ちになれない。

  ってゆうか ―― 父が母に伝えた口実の通り、
  こっちの学校に入り直すのもひとつの選択肢
  だと、考えてもいた。


  この日は珍しくなかなか寝付けなくて、
  ベッドの上に横たわったままゴロゴロしていたら
  カレンダーの日付が目に入る。


  
『―― バレンタインは何したい?』

『何、って……普通は何するの? 俺、決まった相手
 なんかいた試しないから分かんない』

『ふっ ―― じゃ、当日までのお楽しみって事で』



  (って、慎さんは言ってくれたけど、
   バレンタイン終わっちゃったじゃん……)


  ベネット医師の告知からは大体立ち直れたが、
  初めて本気で好きになった人と離れ離れの生活は
  想像以上に寂しく、元々隠れヘタレのジェイクは
  その傾向がますます強くなって ……。


「うう”……慎さん……会いたいよぉ……」


  枕元のスマホを手に取り、スクリーンを見つめて、


「コラッ柊慎之介。俺の恋人だってんなら電話くらい
 かけて来い」


  と、スマホへ八つ当たり。

  その途端スマホが着信し、
  思わずスマホを取り落とし驚く。


「わっ! びっくりしたな、もう……」


  ブチブチぼやきながら再度スマホを手に取り、
  まさか”思い人”からの電話だとは考えず、
  応対に出て ――


「はい」

『遅ればせながら、ハッピーバレンタイン』

「あ……」


  あまりに急で、それだけしか声がでなかった。


『あ、やっぱり怒ってたか? ごめんな。当日は
 どーせお前もいない事だし、泊まりの仕事受けて
 山に籠もってたんだ』

「……」

『……何かさ、今頃になって”あぁ、ジェイは今、
 日本なんだなぁ”って実感したら、声だけでも
 聞きたくなって』

「……俺がいなくて、寂しかった?」

『当たり前だろ。いつも隣にいた人肌がないって
 どんな気分か分かるか?』

「……俺、慎さんに凄く会いたい。声だけなんて
 やだ」

『またお前はそんなわがまま言って……言い出しっぺ
 なら、最後までやり通してみせろ』

「だって……」

『……な、今なにしてた?』

「え ―― なにって、別になんも……」

『じゃ、どうゆうかっこしてる?』

「あ、えっと、寝転がってる、かな」

『ふ~ん……じゃ、この通話、イヤホン使ってみ?』

「え ―― どうして?」

『いいから早く』


  ジェイクは小首を傾げながらも、柊の言う通りに
  した。


「オッケー、イヤホン差した」

『なら、両手は空いてるよな』


  さっきより間近に聞こえてくるようになった
  柊の声に思わずゾクリ。


「ん、う、ん……」


  と、今度は電話越しに吐息を吹きかけたようだ。


「!! ちょっ、慎さん……」

『ふふふ……相変わらずジェイは耳が弱いな』

「……」


  今度はまるで耳を唇と舌で愛撫しているような
  淫美なリップ音が間近に……。

  ここでジェイクにも柊が意図している事が
  分かってきた。


『わぉ、もうこんなにしてるのか? まだ、触っても
 ないのに厭らしい子だ……じゃ、2人で触りっこ
 しよーか?……もちろん、ズボン越しになんかじゃ
 ないぜ』


  (う” ―― ヤバい……久々に、ヤバいよ……)

  電話越しに聞こえてくる柊の息遣いも心なしか
  乱れてきている。


『はぁ はぁ ―― あぁ、すっごく気持ちいいよ、
 ジェイ……』


  ジェイクはそんな柊に自然とノセられ、自分の
  股間をやんわり揉み込む。


「う……っぁ、し、ん、さん……」


  次いで電話越しに聞こえてきたのは、
  何ともいえず厭らしい水音……そう、それはまるで

  実際、柊がジェイクに口淫を施している時に
  たつ音だ。


「あ、あぁ ―― だめ、慎さん」

『どーして? オレのフェ*気持ちいいだろ?』

「良すぎて、すぐイっちゃいそ……」

『あぁ ―― ホントに可愛いなジェイは。じゃあ、
 次は下のお口でオレのいっぱい食べてくれる?』

「う、ん……ちょうだい。早く慎さんの太くて
 凄く大っきいの欲しいっ」


  こんな感じで柊とジェイクの国際テレフォン
  セッ*スは、延々2時間余り続いたとさ。

  
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