21 / 83
20 大阪支社にて、1本の缶コーヒー
しおりを挟む自分ではそう意識してるつもりなかったけど、かなり気を張っていたんだろう ――
定時が来た途端、グッと疲れが押し寄せた。
「―― もー、ヘトヘトだよぉ……」
自分にしか聞こえない程度の声で呟きながら、エレベーターホール脇の自販機コーナーへヨロヨロと歩いて行く ――。
各フロアーのエレベーター脇にこんな自販機コーナーが設けられている他、最上階の展望フロアーにはそこでちょっとしたチープディナーも出来るか? と思える程の色々な自販機が揃っている。
「―― 大丈夫かぁ?」
突然、後ろから声をかけられた。
振り返ると同時に、三上さんから缶コーヒーを手渡された。
いつも私が飲んでる銘柄のヤツ……。
あ ―― 何気なにげに嬉しい。
「ま、だいじょぶです」
「あんまし根詰め過ぎてると、そのうちパンクしちまうぞ。適度に力を抜け。無理すんなよ~」
キラキラ笑顔が飛び込んできた。
勤務中のあまり愛想がない時とのギャップが……タイミング良すぎて……眩しすぎて……心臓が、ドッキン ドッキン 騒ぎ出す……。
こんな時、こんなの反則だよ……。
立ち去っていく三上さんの後ろ姿を缶コーヒー握りしめ、思わずじっと見つめてしまっていた。
*** *** ***
「―― さっき、三上さんから缶コーヒー貰ってたでしょ」
席へ戻ると早速、大阪支社・秘書課で唯一親し気にしてくれた長谷川麻紀が
”待ってました!”とばかりに、声をかけてきた。
彼女とは、新人研修で一緒だった。
「うん、貰ったけど」
「クールビューティ・三上から缶コーヒーって凄すぎっ! もしや、企画で初のお気に入り確定なんとちゃう?」
「んな、大げさな……彼は私のあまりに余裕なさに呆れて、見るに見かねただけだよ」
「意外と絢音のその超鈍感、ドジっ子ぶりにヤラれたのかもよ~」
やけに楽しそうに、麻紀ちゃんは続ける。
「けど、くれぐれも気を付けなさいよ? 彼狙ってる女子はかなりいるんやから」
出たっ! これが社内スキャンダルってやつ?
「アハハハ ―― 私はこんなだから心配ないよ」
「ううん! 絢音って、そこいらの女子よりずっと可愛いし女子力あるし。絶対三上さんの射程範囲だと思うよ」
麻紀ちゃんの言葉を頭の中にとどめていたのはほんの束の間。
すぐに私は目の前の仕事に忙殺されいっぱい・いっぱいになっていった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる