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55 心、ここにあらず
しおりを挟むその頃、有利の恋敵(?!)都村晴彦は婚約者・藍子と嵐山の洒落たフレンチレストランでランチをしていた。
今日は結婚後の新居の手続きで不動産会社へ行ったのだ。
懸念材料のひとつであった新居をようやく決める事が出来てひと安心だが。
「良かったですね。藍子さんの気に入った部屋が確保できて」
笑いながら藍子に話しかけた。
「え? ……ええ、そうですね」
笑って答えるが、どことなく元気がなく、気もそぞろな藍子に首を傾げた。
「何かありましたか?」
「え?」
「いや……何となく、元気がない様な気がして」
「あ、ごめんなさい……」
咄嗟に頭を下げる藍子に笑う。
「謝らなくていいですよ。あ、そうだ。5月の連休なんですが……」
「はい」
「実は急な出張が入ってしまったんです。今度の新事業にも多額の出資をして頂いてる方からの申し出で、どうしても断れなくて……」
「そうなんですか。でも、お仕事なら仕方ありませんわ。そうお気になさらないで、晴彦さん」
「ええ。ですから、この間の件……口裏合わせ。大丈夫ですよ」
晴彦は微笑みながら食事を進める。
「そうですか……」
有利に会えるだろうか?
彼は会ってくれるだろうか?
しかし……連絡も取れない……。
「藍子さん?」
「はい」
「ホント何かあったんじゃないですか? 元気もないし……」
「いえ……最近色々と結婚式の準備があって……」
「確か、昨日はドレスが出来上がったんですよね」
「はい。お着物も届きました……引き出物も決めました」
「そうですか」
きっと、用事が多すぎて疲れていると言いたいのだろうが、それだけではないようだ……口裏を合わせると言っても嬉しくなさそうだし……。
家で何かあったのだろうか?
そう言えば、携帯番号まで変わってるし……いや、変えられたのか?
「携帯は、何故番号が変わったんですか?」
「え?……それは……」
「結婚するから心機一転に?」
「え? ええ……そうなんです」
「そうですか」
「連休は、もしかしたらお友達と会えないかもしれないので、出かけないかもしれません……」
「そうなんですか?」
「はい……」
やはり家で何かあったんだ……。
結婚さえしてしまえば後は野となれ山となれ、だが。
例の法案を可決させる為には二階堂先生のテコ入れがどうしても必要だ。
彼女の動向、誰かに調べさせるべきなのか?
「出ましょうか?」
「でも、食事がまだ ――」
「気分転換に買い物でも如何です? ついてきてもらえますよね」
「……はい」
食事を途中で切り上げて、晴彦は藍子を助手席に乗せて車を走らせた。
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