溺愛! ダーリン

NADIA 川上

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そうして、1年が経ち ――

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 足早に月日(とき)は過ぎ去り ――
 ふと、気が付けば、手嶌さんと初めて会って
 1年が経とうとしていた……
 
 学校からの”停学処分解除通達”は届いたけど、
 今さら学校へ通い勉強する気にもなれず、
 ただ惰性で毎日をやり過ごし。
 
 大塚組の管理下に置かれた時とあまり変わらない
 無気力男になっていた。
 
 ハラが減った頃起き出し ――
 手嶌さんの部下の陣内さんやマオさんに
 ケツを叩かれ渋々風呂に入り ――
 そう引きこもってばかりじゃ身体に良くないと、
 説教かまされ、嫌々散歩に出る。
 
 
 今日も打撲傷でそこいらじゅうが痛む身体を
 ひきずってリビングに行ってみると、
 手嶌さんが1人でいて、ゆったりとしたソファで
 朝刊を拡げていた。


「―― また、喧嘩か」


 手嶌さんが聞いてきた。
 
 手嶌さんの低音の声はなんかセクシーだ。
 さわっと羽毛で背筋をなでられたような、
 奇妙な快感がある。

 俺は黙ったままうなずいた。
   

「俺じゃ偉そうな事は言えんが
 体はひとつっきりしかないんだぞ。
 もう少し自重しろ」
 
「……」    
   
 
   
 1人暮らしには広すぎるだろうと思える
 このばかデカい屋敷で、
 手嶌さんは陣内さんやマオさん達、
 会社のスタッフと生活している。


「浜尾がもうすぐ迎えにくる。おまえの着替えも
 持ってくるだろうから、着替えたら朝飯に
 出かけるぞ」


 新聞をたたみながら手嶌さんが言った。


「どうしていつも外食なの?」

「料理は作れるが、飽きっぽいのが玉にキズでな」


 男っぽい口元にニヤリと笑みを浮べた手嶌さんに、
 なぜか俺の鼓動はどきんとひとつ大きく跳ねた。

 訊いてみれば普段の手嶌さんの食事はぜんぶ外食、
 洗濯物と掃除はハウスキーピングサービスの業者
 なのだそうだ。

 どうりで生活感がないはずだ。

 その他の雑用は、陣内さんかマオさんが
 いつも面倒を見ているのだと手嶌さんは言った。

 
 『手嶌ネゴオフィス』の固定クライアントの半数は
 暴力団またはその関係者方々で。
   
 一番古くから懇意にしている地元の指定暴力団
 『煌竜会』から護衛役にと派遣されたのが、
 あのいかつい顔の佐竹さん。
   
 これから来るという浜尾良守さんは私立大の
 法科大学院に在籍する法浪人だ。
   

 顔を自ら傷つけた俺と病院から帰る時、
 車の中で手嶌さんは ――
 ”自分はバイだ”とカムアウトしたけど。
 
 小料理屋の若女将とか、銀座の高級クラブのママとか
 新橋の老舗割烹とか……俗に”愛人”と言われている
 女達が何人もいるらしい。

 それが理由なのかどうか俺にも
 わからなかったけど、マオさん達が自分の部屋へ
 戻って、夜、俺と2人っきりでいる時も、
 手嶌さんが俺に何かしてくる事は1度もなかった。

 この屋敷に連れてこられた時に、
 多分手嶌さんに抱かれる事になるんだろうな、
 と何となく思っていた俺は、彼が俺に
 興味を示さない事に少し落胆していた。

 そんな鬱憤を晴らす喧嘩だったんだけど。

 考えてみれば ”細っこい” と手嶌さんが
 言ったように、俺の成長途中の身体は貧相で。
 手嶌さんの大人の男の体躯と比べられたら
 恥ずかしいぐらいだ。

 女みたく柔らかくないし、胸だってないし。
 やっぱりどうせ抱くなら女の方が気持いいよなぁ、
 と俺は思った。

 思いがけず親切にされて、
 何かお返しをしたいと俺は考え始めていたので、
 でも、俺には身体の他には何もなくて。
 こんな自分がもどかしかった。   
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