溺愛! ダーリン

NADIA 川上

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衝撃のカムアウト

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「らっしゃい」


 連れて来られたのは小さなバーだった。

 螺旋階段を下へと降りていって、地下一階。
 手押しの扉を開けると店内は少し薄暗くて。
 カウンターの中の棚にはびっしり酒瓶が並んでる。
 
 一見したら普通の飲み屋。
 でもお客は若い女性がほとんどだ。
 女性以外はそのお伴で来たらしい男がちらほら。
 
 んで、その女性陣は皆、カウンターの中にいる
 美貌のバーテンに熱い視線を注いでいる。
 
 
「あれっ ―― ひょっとしてあのバーテン……」


 手嶌が「おっす、ヒデ。来てやったぞ」って
 そのバーテンに向かって声をかけた。
 
 
「じゃあ、やっぱり日向なの??」

「あ、バイトじゃねぇぞ。ここは奴の親父さんの
 店なんだ」
 
「へ~ぇ……」


 手嶌と綱吉、2人がカウンター席に着くと日向は
 綱吉にオレンジジュース、
 手嶌さんにはバーボンのキープボトルと
 カットグラスを出した。
 
 
「ちぇっ ―― 俺だけジュースかよ」

「あと3年は待つんだな」    


 それからは大して何を喋るわけでもなく、
 ただ、並んで自分のドリンクを飲んでいた
 だけだったけど、日向が最後に残っていた客を
 送り出して閉店し、レジで集計作業に入った頃、
 

「ヒデー、おかわり~」


 って、飲み始めた頃はほとんど1本分は残ってたろ。
 
 ピッチ早すぎるんじゃねぇ?
 
 
「ヒデ~っ!!」

「るっせぇーな。今夜は自棄酒かぁ? 
 それほど強くもねぇ癖に、この前みたく潰れても
 知らねーからな」
 
 
 この前?
 
 日向はぶつくさ文句を言いつつも手嶌さんに
 新しいボトルを出した。
 
 で、手嶌ってば、今度はグラスにも注がないで
 ボトルの栓を開けいきなりラッパ飲み。
 
 
「ちょっ、ちょっと! いい加減にしなって」


 慌ててそのボトルを取り上げた。
 
 
「……」

「いくら何でも身体に毒だよ」

「……」

「……てしま、さん?」

「……末期、なんだ」

「―― え?」

「体中に転移しちまってて、どんな名医でも、
 手の施しようないらしい……」
 
 
 それって、茂ちゃんのこと?
 
 
「そんな……」     
 
「ごめんな」

「なんであんたが謝るんだよ」

「実は、俺もさっき医者から告知されたばかり
 なんだ……こんな事、自分1人の胸に収めとくには
 重すぎてつい言っちまった」
 
「だからっ。それでどうしてあんたが謝るんだよっ」

「ツナ……」

「言って少しでも気が楽になるなら言えばいい。
 あ ―― お、俺のちっせぇ肩じゃ頼りないけど
 貸してやるし」
 
 
 自分で言っといて、恥ずかしくなって顔が赤くなる。
 
 でも、今夜の手嶌さん、よほど弱ってるのか。
 綱吉の肩にストンと凭れかかってきた。
 
 (おも ―― っ)
 
 
「……ありがとな」


 それから、頭をぽんぽんってされて、
 むぎゅ~って肩を抱き締められ、嬉しくて、
 嬉しすぎて……泣けてきた。
 
 
「この、泣き虫」

「う、煩い。こんなのは感情が昂ぶると勝手に出て来る
 ただの水分だ」
 
 
 次に、その涙を唇で拭うよう吸われ、
 思わず固まる。
 
 
「おや。お子様にはハードル高すぎたか?」

「お、お ―― おっさんの癖にキザっぽい事
 すっから……」


 やべぇ、心臓がばくばく鳴り出した。
 
  
「すっから?」

「少しは自分の ――」

「お前かーわいいっ」

「な ―― っ! 今までの流れでどうしていきなり
 そうなるんだよっ」
 
「だって、可愛いもん」


 まじ、ヤバい。
 これ以上一緒にいると、俺また可怪しくなる。
 
 綱吉は立ち上がった。
 
 
「ツナ?」

「お、俺、かえる。車で来たんだろ? 送れよ」      

「あぁっ??」

「今泉綱吉くん」


 それは2階へ登りかけていた日向が発した声。
 
 
「何だよ」

「お前死にてぇのか? そんな酔っ払いに運転させて」

「あ ――」


 すっかり忘れてた。
 
 
「2階に部屋用意してやっから、今夜は泊まっていけ」  
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