溺愛! ダーリン

NADIA 川上

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早く思い出してよ

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 冬休み突入前の大イベント、
 生誕祭も大盛況のうちに終わり。

 学内は再び……とした日常に戻っていった。



「―― あ、手嶌センセじゃん」

「ちーっす」


 綱吉は今日もいつものように、あつし&柾也と
 連れ立っての下校だ。

 綱吉達が使う最寄り駅は東京都内で一番乗降客数が
 多い新宿駅。
 
 手嶌の営む会社の所在地も十二社池下で、
 4人は生誕祭以来、*日ぶりに再会した。


「あぁ! そういや、がっこ止めたんだから、
 もうセンセじゃないんだよな」

「まぁな」

「上場企業の幹部に収まったって聞いたけど、
 仕事サボってて大丈夫なのー?」

「昼メシ終わって、
 腹ごなしに歩いて会社へ戻るとこだ」

「え~っ、今頃昼メシなの?? もう4時だぜー」

「社会人って、意外と大変なんだねぇ」


 4人は流れで何となく連れ立ってゆっくり
 歩きながら話す。。
   

「……俺、山ノ内からお前達の事、喧嘩はもちろん
 授業サボるわ虐めも万引きも、悪い事なら殺人
 (コロシ)と輪姦(マワ)し以外の何でもあり
 集団だと聞いたんだが」

「何それ、いくら何でも酷い言われようだこと」

「うちら万引きとかイジメみたいな卑怯な事は
 しないよ。なぁ?」

「うん、親、泣かせたくないし」


 (何だよ、ますますもって普通の生徒じゃん!)


「偉いな」


 綱吉は「そっかぁ?」と言いながら、
 はにかむように微笑んだ。
 その笑みがあまりにもキラキラしていて、
 不覚にも手嶌はドキリとしてしまう。


 (こいつって、いい顔で笑うなぁ)


「でも、喧嘩はどうして止めない?」

「あぁ、アレ? アレは……しいて言うなら、
 数少ない趣味だから」

「趣味、って……お前な、
 万が一それで大怪我でも ――」


 そう言っている所へ他校の不良くん登場!


「おいっ、今泉ぃ、今日こそは白黒はっきり
 決着つけさせてもらうぜ」

「ツナ」

「わりぃセンセ、今は目ぇ瞑っといて?」


 と、綱吉はその不良くんの相手をしに行ってしまう。


「おい、ツナっ」

「センセ、止めるなよ。本人も言った通り
 アレはあいつの趣味なんだ」

「しかし ――」

「あいつくらい強くなると勝手に不良共が挑んでくる、
 良くも悪くも。だからツナは売られた喧嘩と相手を
 選んで買ってるだけだ。決してツナは理由もなく
 人に暴力を振るう奴じゃない。それだけは
 センセにも分かって欲しい」


 ”弱いよ、バーカ(ぶぁーか)顔洗って
  出直しといで!”

 綱吉と不良くんとのタイマンは、いつもの如く
 綱吉の一撃でケリがついたようだ。


 (おぉ! 一撃かよ。確かに、悪魔かも知れん……)


「お待たせぇ。
 あ~ぁ、だめだ、今の全然楽しくなかった」

「あのなぁ……」

「センセ、やっぱ俺チクられる? 山ノ内に」

「……タイマンだったしな。
 部活って事にしといてやる」

「部活?? 
 アハハハ ―― やっぱセンセって最高!」

「お前、笑い事じゃねぇだろが。ってか
 ”やっぱ”ってのは、何なんだよ? この間も言ってたろ」

「あ~ ―― 早く思い出してよ、センセ」 

「えっ?」

「もうセンセ止めちゃったけど、俺らにとってセンセ
 って素直に呼べるのはあんたと静流先生だけ、
 だから。そのうち、飲みに行こうな、竜二センセ」


 とり残された手嶌は自問を繰り返す。

 以前何処かで会った? ―― 何処で?
 あんなにインパクトが強烈な生徒(ガキ)、
 そう簡単に忘れるハズはない、よなぁ……。
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