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体育祭 ② (少し長文です)
しおりを挟むハァ ハァ……ハァ ハァ……
別に……何、逃げてんだろ? おれ。
何かあそこにいたら、
いけないような気がしちゃって。
すごく……ドキドキしてた。
何しに行ったんだか……
だってあのケガ俺のせいだろうし。
だから、謝りたくて……。
なのに、何だかわざわざ2人の邪魔しに行った
みたいになっちゃった気がして……。
余計気分的に、なんか……。
なに? これ……。
何だかそのまま戻る気になれなくて、
遠回りをするように学校の周りを歩いていた。
あまり人気のない裏道に入ったあたりで、
後ろから声を掛けられた。
「あれ? こんな所で誰かと思えば今泉綱吉くん」
「え……」
振り返って見ると、知らない顔だ。
でも、真面目に復学してそろそろ1年。
例の部活のせいか?
俺の顔と名前は、自分で思ってる以上に
他校の生徒達の間へ広まっていたようで……。
「裸足でどうしたの? ん?」
「あ……」
競技終了と同時に保健室へ向かってて。
そう言えば俺、裸足だった。
そう思ったら、急に足の裏が痛くなった。
「足、痛いんじゃない?」
「え ―― いえ。大丈夫ですから」
「オレが姫抱っこして連れて行ってあげるよ。
何処へでも」
そう言いながら、ギラついた欲望むき出しの
素顔でこちらへにじり寄ってくる。
「え? いえ、結構です」
「遠慮はいらないよ?」
げっ。ちょちょちょ……ちょっと!
冗談やめて。
「や、いや。ホントに結構ですから」
歩き出そうとしたら、手首を掴まれた。
「?!」
「そんなこと言わないでさ。オレら、今泉くんが
入ってきた時から、ずっと可愛いって思ってたん
だよねー」
「離せっ!」
き ―― 気持ち悪っ!
掴まれた手首を振りほどこうとするのに、
強く掴まれて、離せない。
「離してください! 大声出しますよ」
「じゃ、俺は綱吉くんの可愛い唇をあつ~いキッスで
塞いじゃおーかなぁ。デヘヘ ――」
マジ、気持ち、わ・る・いっ!!
最初から喧嘩になると身構えた時と違って、
今の俺は完全に油断しおまけにいつもの
冷静さを大きく欠いていた。
「早いとこそこいらの空き教室に連れ込んで
味見させて貰お-ぜ?」
「おぉ、そうだな」
冗談じゃないっ!!
あんたらに弄ばれるくらいなら、
一生男断ちした方がなんぼかマシだわ。
その時 ――!
後ろの方で『オイッ!』と、男の声がした。
一同一斉にその声がした方へ振り返った。
やって来たのは、ジャージの上下にサンダル履き
という何とも砕けた軽装の手嶌だった。
コンビニからの買い物帰りなのか?
片手に小さなビニール袋を下げている。
「せ、先生 ――?!」
「おぉ! 体育のぐうたら教師も来おったか。
こりゃ手間が省けてちょうどええわ」
「だぁれが、ぐうたらだってぇ?」
(あぁ、もうっ ―― ひとりでカタつけようと
思ってたのに……っ)
「帰るぞツナ」
と、俺の手を引いて、手嶌が数十歩進んだ所で、
やっと男達は我に返り、ザザッと2人を
取り囲んだ。
兄貴分の男は茹でダコの如く顔を真っ赤にさせ
怒鳴り散らす。
「てめっ、いきなり横っちょからしゃしゃり
出てきおって、人のもんかっさらっていくたぁ、
とうゆう了見や?!」
力ずくで絢音を奪還しようとするが、
その数秒後には手嶌の投技によって、
綺麗に空を切り兄貴分の男の体は無様に
地面へ叩きつけられた。
「あ、兄貴ぃ?!」
「さ、さどやまさんッ!」
「いたたたたた ―― てめぇ! よくもヤり
やがったな」
したたかに打ち付けられて、かなり痛むだろう
腰の辺りを手で擦りながら立ち上がり、
手嶌と対峙する。
手嶌は先ほどまでの、のほほ~んとした
雰囲気からは口調も態度も、ガラリ変わった。
「サドだかマゾだか知らねぇが、この今泉綱吉は
俺のだ。気易く手出しする野郎には地獄を
見てもらう」
”佐渡山”と呼ばれた、兄貴分の男は
仲間達を見渡し声を荒げる。
「何ボサッとしてやがんだ。構うこたぁねぇ、
2人まとめて片付けちまえ」
自分達の意思で、というより、佐渡山の剣幕に
気圧されて仕方なく、という感じで仲間の男達が
一斉に手嶌と俺へ殴りかかってきた。
それを、手嶌は俺を庇いながら余裕で応戦。
俺は自分も手嶌の助けになりたいのに、
手嶌がそうはさせないのでイラつく。
「ちょっと! 俺にも少しはやらせろよ」
「アホ、こいつら性根は腐ってても本職のヤクザだ、
下手に手ぇ出して怪我でもさせたら俺は先輩に
呪い殺される」
「! 手嶌……」
「いいから、お前は大人しく守られてろ」
そうして、男達は手嶌1人にあっという間に
KOされた。
追い詰められた佐渡山は仲間へのメンツもあって
今さら引くに引けず、懐から黒光りする38口径の
拳銃を取り出した。
「マジ、腐っとんな……それ撃ったらお前、
前科モンやぞ。親分も道連れにしてな」
※注略~改正・暴対法では”使用者責任”
というモノで、実際悪事を働いた組員の他、
その組員が属する組織の兄貴分や親分も
刑罰の対象となる。
手嶌は俺を自分の後ろへ下がらせた。
「懲役怖くて極道なんぞやってられんわっ。
死に晒せ、悪徳教師っ!」
佐渡山の持っている拳銃をめぐって、
手嶌・俺・佐渡山の3人で
揉み合っているうちに、銃が暴発(誤発射)
たまたま運悪く、その弾丸は手嶌の腕を掠め、
鮮血が!
「りゅ、竜二ぃっ!」
手嶌は傷ついた腕を手で押さえてその場に
へたり込んだ。
まさか、本当に撃つ事になろうとは
思いもしなかった佐渡山は、
その痛みに震えながらも自分を睨みつける
手嶌に怯え立ち尽くす。
仲間達も同じく複雑な表情で動けずにいる。
「―― てめぇら、よくも……ただじゃおかない」
まるで人が変わったように
憎悪のこもった目つきで佐渡山を殴り倒し、
その上へ馬乗りに跨って、佐渡山の顔めがけて
何度も何度も、固く握りしめた渾身の拳を
打ち付けた。
佐渡山は、さすがにその筋の男だけあって、
俺の拳がクリーンヒットしても、
うめき声ひとつ上げないが、
もともとごっついその顔は、あっという間に
番町皿屋敷のお菊さんのような
物凄い容貌に変えられていく。
さすがにこのままじゃ、騒ぎがデカくなると
危惧した手嶌が俺……を止めに行く。
「ツナ……綱吉っ! もうええ、止めろ」
俺……は手嶌の声も聞こえぬほど我を忘れ、
久々にブチ切れた。
「ツナっ、もうええて。ええ加減にせい!」
放っておけば本当に佐渡山を半殺しにでも
してしまいそうな俺を鎮める為、
手嶌は仕方なく一本背負いで俺を投げ飛ばした。
「っっ、てててて……何すんだよっ?!」
「これで少しは頭冷えたやろ、このばかチン」
そして手嶌は呆然と佇む佐渡山と男Aの顔写真を
写メで撮り、スマホでそのまま送信。
「お前らの処罰は大河内組の若頭と親分に任せる。
ただし、2度目はねぇぞ。わかってんな」
2人は声もなく、カクカクと頷いた。
「失せろ」
佐渡山他その仲間達は、ほうほうの体で逃げ去り。
手嶌、俺の傍らへしゃがんで大きくため息を
つき。
「喧嘩する時ゃ相手選べよ」
俺、手嶌の傷ついた腕へそっと手を触れたが、
その手はプルプル震えている。
「!! お前……」
「……死なない?」
いつもの様子と全く違う俺に手嶌は戸惑い、
おまけにそんな俺から発せられた
問いかけがあまりに意外で。
「あ?」
「……だから、死なない?」
「こんなかすり傷じゃ死なんよ。けど、心配してくれて
ありがとな」
そう言って、手嶌は俺の震えている手を
優しく包み込んだ。
「さ、帰ろか」
「……ん」
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