土壇場の恋・あなたならどうする?《出逢い&発展編》

NADIA 川上

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本章

彷徨える仔羊

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 血相を変えた真守が夕暮れ間近の町中まちなかを疾走する。
 
 時折足を止めては周囲をキョロキョロ見回している
 のは……誰かを探しているのか?
 
 そして、人混みの中に見え隠れする背中の曲がった
 老人の姿を見つけた。
 


 真守はさっき見つけた老人と近くの路地裏へ入った
 
  
「んじゃ、見せてみな」


 懐から大事そうにソレを出して老人に手渡す真守。
 
 ソレは中古でも定価を上回った金額で売買がなされる
 というプレミア腕時計の大定番・ロレックスデイトナ
 
 老人はチラッと胡散臭そうな目つきで真守を見やって
 
 片目に品定め用のルーペをつけ、そのロレックスを
 品定めし始めた。
 
 
「……どうだ?」

「……1万」

「ええーーっっ!! そんなバカな。
 こりゃどう見たって ――」
 
「文句あるなら他当たりな。儂に声をかけるくらいじゃ
 どーせ、正規の質屋にゃ持ち込めんのじゃろ?」
 
 
 痛いところを突かれ真守はグッと黙り込んだ。
 
 そして、老人が無造作に差し出した1万円札を
 奪うように取って、一目散に走り出した。
 
 

*****  *****  *****


 繁華街の中の小さな児童公園。
 
 一心不乱にコンビニ弁当を食べている、
 まるで欠食児童みたいな少年2人。
 
 そんな2人を嬉しそうに見ている真守。  

 とすると ―― この2人が蒼汰そうた絢一けんいちなのだろう。
 
 
「こらこら、そんなに慌てなくても飯は逃げねぇよ。
 おかわりもあるからな。じゃんじゃん食え」
 
「マジ、今日はすげーな。盆とクリスマスと正月が
 いっぺんに来たみたいだ」
 
「でも、バイトの給料日でもなかったのに、こんな
 金どうしたんだ?」

「あ、そ、それは ―― と、特別手当ってやつだよ。
 一番頑張ったご褒美だって」
 
「ふ~ん」


 2人はまだ義務教育中の身だ。

 これまで通り、施設の世話になっていれば
 少なくとも教育と三度の食事と暖かな寝床は確保
 できる。
 
 が、自分と同じく大人からの冷たい仕打ちに
 耐えかね、その環境を捨てた。
 
 蒼汰と絢一は時同じくして同じ養護施設に収容された
 ネグレクト児童で。
 この繁華街に住みついてから2週間になる。
 
 真守は一応帰る家はあるが、実の甥を売り飛ばそう
 とした叔母夫婦の家になんか2度と戻る気持ちは
 ない。
 
 蒼汰・絢一と出逢ったのは10日程前の事だ。
 
 たまたま真守がコンビニのアルバイトに深夜シフトで
 入っていた時、絢一よりひとつ年上の蒼汰がアンパン
 をふたつ万引きしようとして、同じ時間帯で入って
 いたバイトの先輩に見つかってしまった。
 
 アルバイトの手引き(マニュアル)で、
 こうゆう時は即座に警察へ通報する事と
 されているが。

 その先輩は何を考えたのか?

 蒼汰にとある提案を持ちかけた。
 
 
「俺のしゃぶれよ。そしたら見逃してやるし、握り飯
 ぐらいは恵んでやってもいい」
 
 
 開き直りはしたが、ほんとうに腹ペコだったのだろう
 
 蒼汰は震える声で先輩に問うた。
 
 
「ほんとだな。しゃぶったら……握り飯、
 くれるんだな」
 
「あぁ。男に二言はねぇ」


 蒼汰がゆっくり先輩の前に跪いた……。
 
 
 それから後の事はあまり良く覚えていないが、
 気付いた時には蒼汰の手を握って、街のメイン
 ストリートを爆走していて。
 
 
「お、お兄ちゃん」


 という、蒼汰の声でやっと立ち止まった。    
      

「あ、あれっ。俺……なにやってんの??」

「って、覚えてないの?」

「ってか、お前だれよ」


 間の抜けた真守の言葉に蒼汰は弾けたよう大笑い。
 
 
 ひとしきり笑ったら、
 蒼汰のお腹の虫がギュルルル――ッと鳴った。
 
 途端、身体の力が抜けて蒼汰はその場にへたり込んだ
 
 
「どした?」

「久しぶりに走ったから……はら、へった……」



 真守とて、人に施しをしてあげられるほど
 金銭的余裕はなかったので、あの時はそのまま
 別れた。
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