Emotion

NADIA 川上

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カムアウト

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『ふ~ん ―― その子が、りくくん?』


 その声は上の妹・麻子あさこ

 恐る恐る視線を向けたアパートの階段脇に
 妹が2人とも顔を揃えていた。

「あ、なぁにぃ? 2人して学校帰りに寄ってくれる
 なんて珍しぃー」

「カワイ子ブリッコで誤魔化そうとしても無駄っ」

「姉さん、これはどーゆう事かしら」

 目の前に突きつけられる戸籍謄本。

「ア、ハハハハ ―― (参ったな、バレるの早っ)」


*****  *****  *****


 妹2人へは、大学の合格発表を待って打ち明ける
 つもりだった。
 でも、バレちゃったんじゃ、しょうがない。

『そうよ。理玖は我が家の長男。父さんと母さんが
 引き取った養子なんですからね。2人共これからは
 そのつもりで宜しく』

 って、堂々と開き直った私が宣言したら。

 来た時から少々興奮気味だった沙奈さなが遂に逆ギレ。

「なにが、宜しくよ! 開き直ってんじゃないわよ。
 私、絶対そんな子の事なんて弟と認めないからね!」

「オレもあんたに認められようとは思ってない」

 火に油を注ぐ理玖。

「キィィィィ~~ッッ!! 何て生意気なガキなの?!
 世話になるんだから少しはしおらしくしたらどーよ」

「しおらしく、とは、どうゆう意味だ?」

「あんた私の事バカにする気ぃ??」

 かなりキレまくってる沙奈と、
 いつものマイペースを崩さないクールな理玖。
 まるで噛み合っていない。
 でも、流石に年長の麻子は落ち着いて事実だけを
 受け入れてくれた。

「じゃあ、お姉ちゃんはこの先、この理玖くんと一緒に
 暮らして行く気なのね?」

「うん」

「ゆう姉っ! 麻子っ!」

「沙奈は煩いっ。ちょっと黙ってな。この子の事、
 弟と認めるか? なんて、この際どーだっていい事だと
 私は思う」

「全然良くないじゃん」

「じゃあ、沙奈、あんた父さんと母さんが養子にした子が
 ゆう姉を頼って遥々アメリカから来たってのに、人としての
 情もかけずに追い返せって言うの?!」


 そう、強く麻子に言われると、
 わがままプ~の沙奈も二の句が継げない。


 それから 数十分後 ――


 近所の天ぷら屋さん ”天くに” から出前した
 特製かき揚げ丼で遅い昼食を済ませ。

 麻子と沙奈は横須賀の家へ帰って行った。

 で、ヤレヤレ ―― と、カウチソファーへ座ったら。
 それまで、ダンマリだった理玖が不意に呟いた。

「―― 同情、だったのか」

「え?」

「だから……オレと暮らそうって決めたのは、
 オレに同情したからだったのか」

「バカねぇ。
 人の一生を決めるかもしれないのに
 ただの同情だけで安請やすうい出来るワケないでしょ」

「……」

「結城事務所で初めて会ったあんたを
 そのまま連れて帰ったのは、
 あの時伸吾先生の言った通り
 ”しばらく一緒に暮らしてみてもいい” 
 って思ったからよ。3月の末には引っ越して
 あの2人と暮らす予定だったしね。
 その新生活におまけがひとり増えても
 ”ま、いいか” って」

「おまけ ……」

「って事だから、いつまでになるか? 
 は、分からないけど。
 宜しくね~・おまけの理玖くん」


 理玖は ”チェっ” と小さく舌打ちして、
 照れ臭そうに薄く微笑んだ。 
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