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アメとムチ
しおりを挟む師走の繁華街 ――。
冬の夜更けは足早にその範囲を広げつつある。
通りを行き交う人は誰も早足だ。
綱吉は手嶌の姿を求め今日もここへやって来た。
さっきまで手嶌が仕事の関係で詰めているという
事務所の前で待ち伏せていたのだが、
その事務所の明かりが消え居残っていた同僚の方々が
全員帰宅してしまったので ”待ち伏せ作戦”は
プランBに変更。
この間、有益な情報を貰ったチンピラの田中に
新たな情報を貰おうとまたこの街へやって来た。
待つ事、数分……田中は二番街の中ほどで見つかった
「田中さ~ん」
「なんや、小僧。また来たんかい……」
「小僧じゃない。綱吉だよ」
「あぁ。そやったな。すまん」
この田中という男、外見はチャラくてヤクザの
三次団体の使いっ走りをしてる奴だが、
根は気のいい男だ。
「で、またこの間と同じお願いなんだけど……」
「なんや ―― まだ、キヨさん捕まえてないんか」
「今夜こそ会えないとヤバいんだよね。明後日から
忙しくなるから」
「そりゃ難儀やなぁ」
「だから、教えてくれない? 確実に手嶌さんが
捕まえられる場所」
「ん~……まいったな~……」
参るって事は、手嶌の居場所を知ってるって事だ。
と、綱吉は考え。
とっておきの”アメ”を使う。
「教えてくれたら東京公演のチケットお礼にあげる」
ツナ達 F5は同じ事務所の先輩ユニット・
シャインボーイズの前座&バックダンサーで
彼らの5大ドームツアーに出演する事になっている。
「うっそー! マジか??」
「ファンは大切にしなきゃね」
***** ***** *****
『えっと ―― この交差点を渡って右……次の角を
左に曲がった所にあるレンガ色のマンションね……』
田中から教えて貰った手嶌の自宅マンションに
向かう。
気持ちに呼応したよう足早になって行く
歩くスピードが、目的のマンションの玄関が
見えてきた辺りで不意に遅くなり ――、
その玄関前へ横付けで停められている
深紅のフェラーリの傍らに、
手嶌と長身の美女が立っているのを見ると
綱吉はその場にピタッと立ち止まった。
美女は手嶌の肩越しに綱吉を見ると、
ニヤリ妖艶な笑みを浮かべ手嶌の肩口へ手を回し、
ゆっくりキスをした。
綱吉は慌てて目を逸らす。
何だか見てはいけないモノを見てしまった
ような気がした。
手嶌は美女をすぐ押し返して憮然とした表情で
言った。
「どうゆうつもりだ」
「もうっ、今さら照れてるガラでもない
でしょーに」
2人はそのままフェラーリに乗り込み、
走り去って行った。
その遠ざかっていくテールランプを呆然と見送り、
綱吉は1人ゴチる。
「こんなの、予想はしてたもん……べ、別にたいした
ことじゃないし……」
そういう綱吉の口調は動揺のせいか?
酷く震えている。
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