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夜玖 弥生

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 クーラーの効いた室内。充満する本の香りを一気に吸い込めば、図書館来たことを感じさせる。外は太陽の日差しがぎらぎらと照りつけ、歩く人々の肌を容赦なく炙る。半袖や夏服姿にも馴染んできた七月の終わり。

 ____僕は君と出会った。


 「何で高校生にもなって、読書感想文なんて書かなきゃいけねーんだよ?」
 汗の匂いが少し残った、人の少ない教室。明日から夏休みだという今日は、午後に授業がない。教室から人が次々と出ていく中、僕の前の席の城田シロタが振り返って不満そうに言った。高校で仲良くなった彼からこの言葉を聞くのは今年で三回目である。
 正直、僕もそう思う。本を読むのは好きだが、作文というものはどうしても苦手だ。自分の思いもまともに発することが出来ない僕が、感想なんて述べられるわけがない。
 「はぁー……」
 ついつい溜息も出てしまうもの。毎年悩まされてきた一番の強敵なのだから。もらった作文用紙を眺めれば、さらに気持ちが沈んでゆく。
 だめだ。そう思い頭を強く振れば、案の定彼に驚かれた。
 「うぉっ。なんだよ、須崎スザキ。」
 声を上げ、目を丸くしている彼のあほ面に、笑いが込み上げる。なんだかんだ言って、こいつといるのは飽きないし笑いも耐えない。夏休みも、こいつと過ごす日々、そして部活へと消えるだろう。
 「折角だし、図書館でも寄って行こうか」
 珍しく、僕が提案すると、めんどくさそうな顔をしながら、えーと呟く。ノリが悪いなぁ。お前が行かないなら僕一人で行くからいいよ、なんて投げやりに言えば、僕は一人帰る支度をし始めた。図書館に行くなら、早く行って本の香りを満喫しよう。そんなことを考えながら。
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