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夜玖 弥生

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 外へ出れば太陽がさらに強くなっていた。もうすぐお昼時だからだろうか。時計を見れば、針はほぼ真反対にあった。十二時半になろうとしている。どうりでお腹が空くわけだ。なりそうな腹を抱え、近くのコンビニへと立ち寄っておにぎり三つと、お茶を買う。鮭と昆布、ツナマヨ。おにぎりで一番好きな梅は生憎売り切れだったようだ。
 おにぎりを咥えながら道を歩く。食べながら歩くだなんて、行儀が悪いかもしれない。しかしそんなことは気にせずに、熱されたアスファルトの上を歩いた。気温が暑く、蒸し蒸しとしているからか、とても喉が渇く。気づいた時には、500mlのペットボトルの中身が半分も消えていた。
 学校から図書館まではそう遠くないはずなのに、とても道が長く感じられる。早くクーラーの効いた涼しいところへと逃げ込みたいのに、足が重くて思うように動いてくれない。どうしても遅くなってしまう。やっとのことでついた時には、いつもの倍の時間が過ぎていた。

 図書館の中へと入ると、一気に体が冷やされる。かいた汗のせいもあるのか、背中やおでこが妙にスースーする。充満する本の香りに顔を綻ばせ、好奇心を抑えきれずに本棚を通り抜けていく。好きな作者の本が置いてある本棚まで来れば、ついつい口角が上がった。
 迷わずに数冊本を手に取れば、いつもの席へと向かう。ここの常連になりつつある僕は窓の近くにあるテーブルの端から二番目が好きだ。一番端じゃなくて、二番目。しかし、今日は珍しくそこに先客がいた。ストレートの長い黒髪が印象的な後ろ姿。少し小柄な女の子だった。その子は熱心に机へと向かう。と言っても勉強しているわけではなく、読書に集中している。彼女の隣においてある本は、偶然にも好きな作家のものだった。大分マイナーで、同い年ぐらいの子が読んでいるなんて思いもせず、無意識に体が動いて、彼女に話しかけていた。
 「その作家、好きなんですか?」
 いきなりだ。彼女はびっくりしたように両目を見開き、数秒止まったあと、嬉しそうに微笑んで頷いた。ふんわりとした柔らかな笑みに、僕は一瞬で恋に落ちた。
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