イエローサンドウィッチ

ドルドレオン

文字の大きさ
7 / 30

しおりを挟む
—第11章:リビー、舌の中のレシピが目を覚ます—
🩺 舌剥奪室 – “スピーチ・ブランチャー”

「患者の舌筋、緩め。言語記憶ナノシナプス、切断開始」

無機質な声が響く手術室で、
リビーはリクライニング式の“発音抑制椅子”に固定されていた。
顔にはスプーン型マスク。舌は“正義のトング”に挟まれ、ほんのり塩味がする。

「やだ……ちょっと……! わたしまだ、ちゃんと朝ごはんも食べてないんだけど!?」

「異常なし。感情反応=中庸な恐怖。これより味覚剥奪を開始――」

直後。

ブォン!

彼女の舌の中で、何かが爆発した。

正確には、**“味の記憶粒子”**が臨界点に達し、
**封じられていた第二のレシピ=“レシピ・ヴェール”**が、完全展開を始めたのだ。

👅 舌の内部、味覚神殿

リビーは意識の中で、自分の舌の内側に立っていた。
そこは巨大な**神殿のような形をした味蕾(みらい)**のホール。
壁一面には、調味料の言葉が金色の文字で彫られている。

そして奥から、声が聞こえた。

「リビーよ……よくここまで来た……我が名は、味の語り部・ウマミ・ヴェルムンディ……」

「ちょっと待って、誰!? ていうか、わたしの舌の中に住んでたの!? 家賃とか発生してないよね!?」

「うるさい。今はそういう話ではない。お前は選ばれし者だ。
第一のサンドウィッチが世界を包むとき、もう一つのレシピが世界を“噛み直す”」

「噛み直すって何? 咀嚼の神?」

「黙って聞け。第二のレシピ=レシピ・ヴェールは、“食べられることを拒否する味”だ」

「何その逆説的メニュー!? 餃子が『今日は無理』って言ってくる感じ!?」

「黙れと言っている!!!」

(※ウマミ・ヴェルムンディの怒声により、口腔内気温が+7℃上昇)

📜 レシピ・ヴェール(抜粋)

材料:

未知なる言語で読まれた詩(粉末状)

最初に嘘をついた時の涙(小さじ1)

他人の夢の断片(任意)

パンの“耳”のみ(左右対象に配置)

愛されることを拒否したマヨネーズ(これは冷蔵必須)

調理手順:

まず黙る

その後、心の奥から順番に言葉を捨てる

最後に、“あなた自身の名前”をサンドして食べる

「……これ、絶対美味しくないやつでしょ……」

「違う。これは、“誰にも食べられたくない存在のためのサンドウィッチ”。
お前が、この味を知る最後の舌だ」

💥 リビー、覚醒!

現実世界に戻ったリビーは、
麻酔を完全に吹き飛ばし、拘束具を味の衝撃波で粉砕。
彼女の舌から、不可思議な光と香りがあふれ出す。

スープドローン警備員が動揺。

「対象、味覚パラメータ超越!タブー領域突破!舌が“自我”を持ってるぞォ!!」

リビーは立ち上がり、
スプーン型マスクを投げ捨て、堂々と宣言した。

「この舌は、もう誰にも奪わせない。
 そして、このレシピ――
 “食べられたくなかった自分”の味――わたしが料理する!」

🧁 味覚政府崩壊、加速

リビーの舌が覚醒したことで、全味覚網が干渉を受け、
政府のフレーバーAIが暴走。

「辛い」の定義が「悲しみ」に書き換えられ、全料理が泣き始める

味覚データベースに「酸味=恋の初期症状」と自動変換され、官僚が全員片想い状態

財務部では「年間予算=みそ汁2,000杯分」と表示され、国家が汁物化する

🎤 リビー vs 裁判官たち、饒舌バトル

法廷に戻ったリビーを迎えるのは、味覚裁判官たち。
特に酸味のジャスティス・タンギンが、声を荒らげる。

「貴様、舌を武器にするなど言語道断!言葉と味の境界を壊す気か!」

「境界線ってのはね、タンギン。
 “舌で味わった真実”を、どう言葉にするかの試行錯誤のカスでできてんのよ」

「この反逆者が!」

「反逆者じゃないわ。
 具よ。私は宇宙サンドの、ちゃんとした具になりたいだけ。
 レタスとかトマトとか、いらないの。ただ、名前を挟みたいのよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

その人事には理由がある

凪子
ミステリー
門倉(かどくら)千春(ちはる)は、この春大学を卒業したばかりの社会人一年生。新卒で入社した会社はインテリアを専門に扱う商社で、研修を終えて配属されたのは人事課だった。 そこには社長の私生児、日野(ひの)多々良(たたら)が所属していた。 社長の息子という気楽な立場のせいか、仕事をさぼりがちな多々良のお守りにうんざりする千春。 そんなある日、人事課長の朝木静から特命が与えられる。 その任務とは、『先輩女性社員にセクハラを受けたという男性社員に関する事実調査』で……!? しっかり女子×お気楽男子の織りなす、人事系ミステリー!

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末

松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰 第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。 本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。 2025年11月28書籍刊行。 なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。 酒と肴と剣と闇 江戸情緒を添えて 江戸は本所にある居酒屋『草間』。 美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。 自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。 多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。 その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。 店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

花嫁

一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。

処理中です...