友達の喪失

ドルドレオン

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ちなみに私は女遊びに興味がない。勃起もしない。抱きたいとも思わない。たまに自慰はするが、面倒くさい。自分の陰茎が気味悪く思う。なんでこんなものついてるんだ? そんなことをたまに思う。私は少しいかれている。麻雀の動画を見ながら自慰したことがある。女より麻雀のほうが魅力的だ。たまに雀荘の人に、莫迦みたいに強いんだから、プロになればいいと言われた。私はそれよりも雀荘のメンバーのほうが強いし、かっこいいと思う。凌ぎの削りあい。けれど、雀荘のメンバーになったら、大好きな麻雀が嫌いになるかもしれない。それよりも地道に金を貯めて、山形の十四代の日本酒とか、岩手の酒とか、新潟の酒に金を払って、薙と飲んでいたい。
 七月の休日、私は煙草をのみながら、外を歩き、東京の暑い夏を堪能していた。野良猫がにゃーと鳴く。私は歩き煙草をしながら、疲れたら、街灯にもたれて、紫煙を燻らせる。親はこんな私を見限っている。将来も希望もない、こんな私を見て、贖いの子を産んだと思っているのだろうか。私の遺伝子はいらない。下らない、糞みたいなものだ。万人に生きる価値があるとは思えない。外交官とか、大学の教授とか、国会議員とか、そんな偉そうな人間も下らない部分があるに違いない。いやこんな私よりよっぽど生きる価値があると思う。優生思想を持っているのかな? 私は。私ほどいらない人間はいないと思う。ふと、パチンコ店に入って、三千円負けて帰る。浅草の競馬場に行って、3連単の万馬券を買って、当たれば五十万。当たるわけがない。外れた。これでまた金が消える。適当に居酒屋に入り、蕎麦を食べる。そして、日本酒を冷で二合飲む。私の人生に価値はないかもしれない、けれど、私は生きていて楽しい。
 人生に楽意を見いだせれば、それだけで生きていていいと思う。別段私は誰かに迷惑をかけているわけでもない。犯罪もしていない。若干の優生思想はあるかもしれないが、ちょっと普通とはかけ離れているかもしれないが。私は酒を飲み煙草をのむ。それだけで幸せだ。僥倖を捉えた虎のようだ。
 さて、ほろ酔いで雀荘にでも行こうか。軍資金は三万。テンピンなら負けても四局打てるだろう。放浪だ。私の人生は放浪だ。それでいいのだ。
 入ったことのない雀荘に、入ってみる。雀荘のメンバーが懇切丁寧にルールを説明してくれる。ルールを聞いてから、雀荘にいるメンツの打ち筋を見る。この人は今日ツイている。打ち筋は下手。ちょっと酔いながらそんなことを思う。軽くアイスコーヒーを飲み、灰皿に灰を落とす。あ、この人は強い。高い手を張っているが、丁寧に降りた。私ならいく。そして局が流れると、当たり牌だった。老人だった。打ち方で強さが少し分かる。綺麗な手つき、丁寧な打牌。今日は打たない方がいい。
「すいません、ちょっと今日は休みます。すいません、珈琲頂いておいて」
 そんな言い訳を残し、私は帰る。
 勝てないと思ったら打たない。それに今日のツキはそこまでではない。五分五分より若干下がるぐらい。ほろ酔いのさなかで冷静に分析する。麻雀は勝ちたい。勝てないと思った日はやらない。馬、パチンコ、競艇、そういったものは適当に、運に任せる。けれど、麻雀にはほんの少し矜持がある。打たない日は打たない。これも博奕打の、勘。
 私はふらふらと東京の路地裏で、煙草を吹かした。
 紫煙が昇っていく。まるで中国の画家が描くような、蛇の線を残していく。
 私もいつかこのように消滅していくのか? 消滅すればいい、そうすれば、もう認識しなくて済む。ふとそんなことを思う。糞みたいな人生だ。糞みたいな人間だ。私は堕落している。私は下等生物だ。そんなことを雑多に思う。
「もういっちょ飲むか」
 私は適当に汚い店に入り、七月の猛暑を避けて、冷の酒を飲む。


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