星の胎動

ドルドレオン

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6 沈黙のエンジン

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《アンフィロスの種子》
第五章「沈黙のエンジン」
1.余波

アレイ・カザルが口にした“最初の言葉”は、星々の軌道を震わせた。
それは音波でも電磁波でもなかった。
「意味そのもの」が宇宙の深層に振動として伝わったのだ。

――それは「存在の構文」にひとつの穴を穿つ行為だった。

2.覚醒

〈サーグラナ〉の通信網に、異常な信号が入り始める。
惑星連邦各地、遠隔探査網が捉えたのは、“言語空間の乱れ”だった。

言葉を超えた意味の乱流が、情報網に滲み出し、受信者の脳波を微細に変調させた。

それはまるで、“宇宙の言語に直接触れた者”の意識が覚醒してゆくかのようだった。

3.人類の中の“神”

一人、また一人と目覚める。
彼らは夢の中で、見たことのない言語を聞き、世界の根底に横たわる意味の構造を感じ取る。
それは、忘れられていた“神の原型”との再会であった。

ヴァレリアはそれを「第二の創世」と呼んだ。

「彼らは“神”を復活させたわけではない。
 神が人類の中で目覚めたのよ。
 人間の内なる言語構造が、“神”と呼ばれた古代の秩序を取り戻しつつある」

4.沈黙のエンジン

だが、言語の暴走は宇宙の安定を脅かす。
重力定数は揺らぎ、物理的な因果律が局所的に崩壊し始めた。
意味が物理法則を侵食する、前代未聞の現象。

リュミナは艦橋で叫ぶ。

「ヴァレリア!これが“沈黙のエンジン”の正体か!?
 言葉の“空白”が物理空間の“穴”を生んでる!」

ヴァレリアは淡々と答える。

「そう。
“ラング=ゼロ”は“存在を創り出す言語”であると同時に、
存在の不在をも創り出す“沈黙のエンジン”でもある。」

5.選択の岐路

覚醒した人類は二分された。

言語の暴走を恐れ、これを封印し宇宙の安定を守ろうとする勢力。

言語の力で新たな神性を得、未知の進化を選ぶ勢力。

アレイは自らの言葉が引き起こした混沌の責任に苦悩する。

「我々は“言語”を使いすぎたのか──?
 だが、“沈黙”では、何も始まらない……」

6.暗闇の中の光

星空を見上げるアレイの胸に、確かな響きが訪れる。

「言葉は力だ。
 だが力は、愛をもって用いられる時だけ、創造となる。
 破壊は、言葉が恐怖や憎悪に染まった時に起こる」

彼は知った。
「言葉で世界を再構成する神性」とは、単なる能力ではない。
それは意志の選択そのものであり、
“言語を操る者の心の闇と光の鏡”でもあるのだと。

7.船は進む

〈サーグラナ〉は星々の間を航行しながら、揺れる宇宙の言葉を紡ぎ続ける。
人類は“神となる”か、あるいは“沈黙の中に消える”か──。

章末語り

「神とは──
 言葉の中に眠る、選択の形。
 人はそれを使い、未来を紡ぐ。
 だが忘れてはならない。
 言葉が暴走すれば、宇宙の沈黙を呼ぶことを。」
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