月曜日の地下鉄

ドルドレオン

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その夜、僕は帰宅してすぐにパソコンを開いた。
画面の前に座り、指先をキーボードの上に置く。まるでそこに、何かが宿っているかのように。

僕は最初の一行を書いた。

「今日は、月曜日の地下鉄で不思議な女性に出会った。」

その瞬間、部屋の空気が少しだけ変わった気がした。
窓の外で、遠くの電車が通り過ぎる音がかすかに聞こえた。

書くことは初めてではなかったけれど、こんな感覚は初めてだった。
まるで僕がただの物語の登場人物ではなく、物語そのものを動かす存在になったみたいだった。

翌日、また同じ時間に地下鉄に乗った。
彼女はいなかった。
けれど、車内の照明が一瞬だけ暗くなり、何かがそこにいる気配を感じた。

僕は気づいた。
彼女はこの世界とあの物語の間を行き来しているのだと。
そして僕を導くために、何度も現れているのだと。

数日後、再び《パライソ》を訪れた。
そこには、今度は彼女が静かにコーヒーを飲みながら待っていた。

「書いてみた?」と彼女は聞いた。

「うん。書いてみたよ。でも、どうして僕にそんなことを?」

彼女は窓の外を見ながら、静かに答えた。

「私も、かつてはあなたと同じだった。物語の中の登場人物で、自分の意思を持たずに動いていた。だけどある日、自分で書くことを決めたの。」

「それで?」

「それからは、自分の世界を少しずつ変えられるようになった。だけど、簡単じゃない。書くことは、同時に破壊することでもあるから。」

僕は深く頷いた。
書くことで過去も未来も変わるなら、僕が失ったものも、これから得るものも、すべてがこのペン先にかかっている。

彼女は微笑んだ。

「さあ、次のページを書き始めましょう。」
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