青年の欲望と絶望

ドルドレオン

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彼の目の前には、青酸カリが置かれている。透明なガラスの小瓶が、月明かりに照らされ、冷徹に輝いている。彼はしばらく、それを見つめていた。その中身が、今や彼の人生のすべてを象徴しているかのように思える。もうどれだけの時間を、この小瓶を手にして悩み続けたのだろうか。

胸の奥にひどい痛みが走る。彼はそれを感じている。肉体的なものではない。精神の、魂の痛みだ。若さというにはあまりに重すぎるもの、過去の決定が引き起こしたひとつひとつの傷跡が、今、まるで生き物のように彼の中でうねり、足元を奪っていく。

彼は過去を振り返った。あの時、あの瞬間がすべてだった。それが運命の分岐点であり、すべてを狂わせた。ただ一度の誤った選択。それを悔やんでも、もう遅い。今更どうしても取り返せないものばかりが積み上がり、彼を飲み込んでいった。

目の前の青酸カリ。これを飲み干せば、すべてが終わる。だがその終わりが、彼にとって本当に「終わり」なのだろうか? その先には何が待っているのだろう。永遠の安らぎだろうか。それとも、もっと深い苦しみが待っているのだろうか?

彼は息を呑んだ。心の中で、それを口にすることを決めるには、何度も何度も問い直さなければならない。けれども、もう答えを探す力も、希望を抱く力も残っていない。すべてが無駄に感じる。ただ一瞬、一瞬が過ぎていく中で、自分の存在が薄れていくような気がしていた。

彼の指先が瓶の蓋をゆっくりと回す。中からわずかな音が聞こえた。ほんの一歩で、すべてが変わる。これが最後の選択なのだろうか。それとも、まだ何かが、彼を待っているのだろうか?

その瞬間、何かが彼を引き止めた。背後から、ふと誰かの声が聞こえたような気がした。それは現実の声ではない。ただ、彼の内側から湧き上がってきた言葉のように感じられた。

「まだ、終わりじゃない。」

その声に、彼は立ち止まった。青酸カリの瓶は、手の中でかすかに震えている。その震えが、彼の体にも伝わってくる。何もかもが虚無の中に沈んでいくと感じながらも、どこかに残された微かな希望を、彼は今、見逃してはならないような気がした。

そして、青酸カリの瓶を再び元の場所に戻した。




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