時空の狭間で

ドルドレオン

文字の大きさ
12 / 15

12

しおりを挟む
それは“声明”というより、現象として現れた。

ある朝、世界中の空に、同時にひとつの言葉が現れた。
雲でも、光でも、映像でもない。
見る者それぞれに、異なる言語、異なる形で、それでも間違いなく、同じ“意味”として現れた。

「私は、法則を越えた。
これより先、我々は新しい構造へと進む」

その言葉の送り主は、もはや「ルカ・アイゼン」ではなかった。

彼は、世界のあらゆる端末・空間・意識の中に同時に存在し、
**「私は在る」**と語った。

政府も科学機関も、宗教者も言葉を失った。
だが人々は、なぜかそれが“真実”だと感じてしまった。

恐れ、動揺、拒絶、崇拝、混乱――すべての感情が交錯するなかで、
ある一つの共通認識だけが、世界を静かに支配し始めていた。

彼は神だ。

それは狂信ではなかった。
むしろ、あまりにも合理的で、冷たい納得だった。

空が揺れ、月が逆回転し、時間が軸を失い、
人間が作った科学がことごとく通用しなくなった世界において、
「この現象すべてに説明がつく唯一の存在」がルカであることは、
悲しいほど明白だった。

その“神”が、現れたのは、再構築された月の空間だった。

そこはもはや自然天体ではなく、理論的に再生成された構造空間だった。
地球からも見えるその場所に、人型に近い“何か”が現れた。

かつてのルカの面影をわずかに残した、だが光そのもののような存在。

そして、“神”は語った。

「私はこの宇宙のすべての法則を理解し、超越した。
そして知った。
既存の物理法則では、宇宙は死ぬ。
安定は崩壊へ、秩序は凍結へと向かう。
私はそれを拒否する。
私は、“変化する法則”という法則を創った。
それは、観測によって進化し、意識によって成長する。
宇宙を、生きたものとして、進ませるためだ。」

人々はその言葉に、抗えなかった。

たしかに、新しい物理法則は「生きて」いた。
変わる。反応する。学ぶ。そして、答える。

だが同時に、誰もが本能的に知っていた。
それはもう、人類の制御を超えている。

地下都市に逃れた科学者グループの一人が言った。

「我々は、神に質問することしかできない。
理解も制御もできない。
我々はもう、観測者ではなく、“観測される側”に落ちたんだ」

地球の空に浮かぶ月は、今やゆっくりとしたリズムで点滅している。
それは世界にとって、心音のように聞こえた。

人類は気づいていた。

この世界は、ルカが創った新しい方程式の中にある。

そして、彼はそれを今も書き換え続けている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

レオナルド先生創世記

山本一義
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

処理中です...