硝煙

ドルドレオン

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『雨と硝煙の街』第二章:亡霊の写真

「この男は昨日、港の倉庫街で死んだはずだ。頭を一発、後頭部から撃たれてな。」
俺は写真を受け取り、わずかに眉をひそめた。
確かにあの夜、あの倉庫にいた。死体も見た。自分で確認した。冷たくなった男の目を、黙って見下ろした。
間違いない。
だが写真の中の男は、今日の日付の新聞を持って、笑ってやがる。

「これがどういう意味か説明しろ。」
俺は女の瞳を睨んだ。彼女は少しだけ視線を落とし、それから決意を固めたように口を開いた。

「彼の名前は唐沢健一。元・東都製薬の研究主任。ある薬の臨床データを盗み出した。企業スパイとして追われていたわ。でも……本当に死んだのは別人。彼じゃない。」

「替え玉ってわけか。」
俺の声は低くなった。街の影に潜むタイプの嘘だ。金と秘密が動くとき、いつも誰かが余計に死ぬ。

「そして、彼は今夜——“ある人物”と接触する。例の薬の売買のために。」

「どこだ。」

「“旧・東都中央駅”。午前3時。たった1時間後よ。」

くそったれ。
夜はいつだって最悪な形で予定を狂わせる。

「何が目的だ。あんたが俺にこれを話す理由は?」

女はグラスに残ったバーボンを一気にあおった。手が少し震えている。

「唐沢は……私の兄なの。止めなければ、彼はまた人を殺す。今度こそ、もう戻れなくなる。」

沈黙が、重く降りた。
外ではまだ雨が降っていた。俺の心の奥でも、何か古い錆びついたものが軋んでいた。

俺は立ち上がり、コートの襟を立てた。
銃を確かめ、煙草に火を点ける。

「じゃあ、行くとするか。幽霊に会いにな。」
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