愛しているのに

ドルドレオン

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第二章「手紙のかわりに」
律が古書店に現れなくなって、三日が過ぎた。

風見さくらは、毎日のように店の扉を見つめていた。カランと鳴るベルの音が、まるで何かを告げるようで、胸がざわついた。

「もう、来ないのかな…」

言葉にするのが怖かった。けれど、心のどこかで――薄々、わかっていた。

律がいなくなったあとも、彼の存在はあちこちに残っていた。
触れた本、交わした言葉、笑い声、そして、彼が最後に渡してくれたあの詩集。

ある雨の日、さくらはその本をもう一度開いた。

ページとページの間に、もう一つ、紙切れのようなものが挟まっているのに気がついた。

――それは、小さな便箋だった。

筆跡は整っていて、でもどこか急いだような跡もある。
たった数行の、律からの言葉。

さくらへ

君と話した日々は、僕の中で春そのものでした。

本のページをめくるたびに、君がそばにいるようだった。

ありがとう。
さよならの代わりに、

この詩を残します。

月島 律

便箋の裏には、短い詩が書かれていた。

風が過ぎても
君の声は残る

花が散っても
僕の春は
そこにいた

さくらは、静かに目を閉じた。

声にならない言葉が胸の奥で波打ち、涙が一粒だけ落ちた。

彼と過ごした時間は短かったけれど、確かに、心の深い場所に花を咲かせていた。

彼はもういない。
けれど、ページをめくれば、いつでも出会える。

そして、また明日も古書店で、本のページをめくる。
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