午後のレコード

ドルドレオン

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ぼくがその奇妙な女の子と出会ったのは、ちょうどアート・ブレイキーの『モーニン』を聴いていた午後だった。

9月の終わりで、空はもう夏の色をしていなかった。レコードプレイヤーの針が少しだけノイズを混ぜながら、あの古びたジャズのイントロを響かせていた。ぼくはキッチンで豆を挽きながら、コーヒーの匂いとともにそのリズムに身を委ねていた。人生にはそういう一瞬がある。何も起きていないのに、何かが起こりそうな予感だけが空気の中に沈んでいる。

インターホンが鳴ったのは、ちょうどリー・モーガンのトランペットが二回目のテーマに差し掛かる直前だった。

「配達か何かかな」と思いながら、ぼくはスリッパを引きずってドアの前に立った。ドアを開けると、そこには赤いワンピースを着た女の子が立っていた。髪は肩より少し長く、左手には古い水色の傘を持っていた。雨は降っていなかった。

「こんにちは」と彼女は言った。「あなた、カセットテープ、集めてますか?」

「……カセットテープ?」

彼女はうなずいた。そして、そのまま靴を脱ぎ、何のためらいもなくぼくの部屋に入ってきた。まるで、ここが自分の部屋であるかのように。

「ちょっと待って」とぼくは言った。「きみは誰なんだ?」

「名前はミドリって言います。でも名前にあまり意味はないんです。音楽のほうが大事。」

彼女はそう言って、部屋の隅にあったぼくの古いスピーカーに目をやった。

「いい音してますね、これ。70年代のやつでしょう?」

ぼくは頷いた。確かにそうだった。だが、どうして彼女がそんなことを知っているのか、わからなかった。

彼女はバッグから一本のカセットテープを取り出した。ラベルには「1993年9月、夢の中の駅」とだけ書かれていた。

「これ、聴いてみてください」と彼女は言った。「もしかしたら、あなたの記憶にあるかもしれない。」
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