義姉をいびり倒してましたが、前世の記憶が戻ったので全力で推します

一路(いちろ)

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第二十二話 舞踏会の逆転劇

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王城の大広間――煌びやかなシャンデリアの光が降り注ぐ中、王国の貴族たちが一堂に会していた。
今日は舞踏会。しかしその実態は、「裁きの舞踏会」。
王国の威信を揺るがした一連の陰謀を、国王陛下自らが裁く場である。

国王夫妻が玉座に座し、両脇には宰相や近衛騎士団長が並ぶ。
広間に漂う緊張は、舞踏会の華やかさとは程遠い。

私とセリーヌ様は、ブランシュ侯爵家の立場を背負ってここに臨んでいた。
推しを守る最後の戦い――その覚悟が胸を熱くする。

「ヴァルモンド侯爵」

国王の重々しい声が響く。

「貴殿に隣国フェルザークとの内通の嫌疑がかけられている。この場で弁明をせよ」

人々の視線を一身に受け、ヴァルモンド侯爵は優雅に一礼した。
その顔には余裕の笑みが浮かんでいる。

「陛下、そして諸卿。私にかけられた嫌疑は全くの虚偽にございます。
ブランシュ侯爵家のご令嬢――セリーヌ嬢が、かつて公爵家の縁者であった時より隣国と関わりを持ち、今なお密かに――」
「それ以上はおやめください」

毅然とした声が広間を切り裂いた。
セリーヌ様が一歩前に進み出る。

「その虚言を、今日こそ終わらせます」

合図と共に、従者が証拠品を運び込んだ。
一冊の分厚い帳簿。
そして、侯爵家の元使用人――証人が姿を現す。

「こちらはヴァルモンド侯爵家の商館で保管されていた取引記録です。王国法で禁じられた品々が、隣国フェルザークへ密輸された詳細が記されております」

ざわめきが広がる。

「さらに証人は、侯爵自ら夜陰に乗じて密使を招き入れていたことを証言できます」

証人の言葉に、会場の視線が一斉にヴァルモンドへ突き刺さる。

「ば、馬鹿な……! その帳簿は偽造だ!」

侯爵は必死に叫ぶ。

「では、この署名は?」

私が声を張り上げ、帳簿を開く。

「ここに記された数十箇所の署名。これは侯爵自身の筆跡に他なりません! 偽造では到底不可能です!」

私は前世の……いや、日々の推し活で培った観察眼を総動員して断言した。

「しかも、この封蝋。侯爵家の印章と完全に一致しております!」
「ぐっ……!」

侯爵の顔色が蒼白になる。
その動揺を見逃さず、セリーヌ様が畳みかける。

「ヴァルモンド侯爵。あなたは私を冤罪で貶め、王国を混乱させ、さらに隣国と通じて利益を得ていた。
 これ以上の裏切りがありまして?」
「…………っ」

侯爵の唇が震え、声にならない。

国王がゆっくりと立ち上がった。

「もはや弁明の余地はあるまい。ヴァルモンド侯爵――貴殿を王国に対する反逆の罪に問う」

近衛騎士たちが動き、侯爵を取り囲む。

「ま、待て! 私は……ただ、国のためを……!」

必死の叫びも虚しく、彼は力なく連れ去られていった。

広間に静寂が戻る。
国王はセリーヌ様を見やり、重々しく告げた。

「セリーヌ・ブランシュ嬢。貴女にかけられた嫌疑は全て冤罪と判明した。王国に仇なす者を暴き出した功、まことに大きい」
「……恐れ入ります」

セリーヌ様は深く一礼する。その姿は誇り高く、美しかった。

私は胸がいっぱいで、思わず声を張り上げていた。

「ご覧になりましたか皆様! セリーヌ様こそ潔白にして高潔なお方です! このお方を疑うなど、万死に値します!」

場がどよめく中、セリーヌ様が慌てて私の袖を引いた。

「ちょっとアリシア、声が大きいわ!」
「はっ……! で、でも尊すぎて……!」

涙ぐむ私を見て、セリーヌ様はふっと笑う。
その微笑みが広間の空気を和らげ、やがて人々から拍手が湧き起こった。

こうして、黒幕は暴かれ、全ての陰謀は終わりを告げた。
セリーヌ様の名誉は回復され、ブランシュ侯爵家の威信も揺るぎないものとなった。

――だが私にとって何より大切なのは、推しの笑顔が守られたこと。

(やった……やりきった……!)

涙と共に胸を張る私の耳に、セリーヌ様の柔らかな声が届いた。

「さあ、アリシア。これからは静かな日常が戻るわよ」
「はい! 推し活の時間ですね!」
「……本当に、あなたって……」

呆れたように笑うその横顔が、月明かりよりも美しく見えた。
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