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【3】護る! 守る!! まもる!!! マモル!!!!
3-3 魔法大実験場"タルタロス"
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その頃、ラズ老師は……
「ぬおおおおおっ!! 急がねば! 急がねばぁぁ!!」
魔法翼"イカロスノツバサ"を広げ、王国上空に舞い上がっていた。周囲に展開した魔法障壁で、飛行の際に受ける風圧を最小限に抑えてはいるが、それでも髪やローブやマントが激しくはためいている。
王都ノイバラの全景が見えるほど上昇すると、今度は南南東にそびえる山へ向け、猛スピードで一直線に飛ぶ。
ふもと上空に辿り着くと、ラズ老師は真下を見る。月明かりに照らされた森の中に、明かり届かぬ巨大な丸い闇がポッカリと空いていた。直径約50メートルのアビス。地下大実験場、唯一の出入り口。その名も"タルタロス・ホール"である。
「やれやれ、秘密保持にはもってこいの場所とはいえ、難儀じゃのう」
ラズ老師は、ガングビトの古い友人からもらったポータブルカセットプレーヤーを取り出すと、イヤホンを耳に付け、再生ボタンを押す。
「さぁて、レッツらゴーじゃ!」
ラズ老師は、1曲目が始まると共に急降下し、アビスへと飛び込んだ。嘘か誠か知らねども、最深部到達は自由落下だと十日。階段で下りるなら数ヶ月を要すると言われている。ラズ老師が飛行術を駆使し、どんなに急いでも一時間。
ゴキゲンなミュージックでも聴いてないと、とてもじゃないがやってられない。
「それで……、ボクは何をすればいいの?」
「一言で言うなら人命救助だけど…、詳しくは歩きながら話そうね。今はこれ」
ベルトチカ老師は、漢字で『許』と刻まれたバッジをシロガネに渡す。
「まずはこのバッジをお付け。入場許可章だよ。これが無いと部屋からも出られないの。"ガードゴーレム"に羽交い締めにされちゃうからね。無くさないよう、お気をつけ」
シロガネは腰に巻いた白マントにバッジを付ける。
「ばあちゃん、これでいい?」
「うん。バッチリ♪ ………あっ、今のはダジャレじゃないからねっ! 勘違いしないでおくれよ!」
全力で否定するベルトチカ老師は、ちょっと可愛かった。
「それじゃ行こうかね。通路は迷路みたいなものだから、はぐれないよう、ちゃんと付いてきておくれ」
白い部屋から出ると、通路の床も、壁も、天井も白かった。やはり照明らしきものはどこにも無い。にもかかわらず明るい。
その中で最初に目に付いたのは、人間より一回り大きな魔神像だ。それらは歩き回っているかのように、様々なポーズで不規則に置かれている。いや、事実その像は歩き回るのだ。対人警備システム"ガードゴーレム"。殺傷や破壊ではなく、捕縛に特化した魔神像だ。ちなみに対人外用には他の警備システムがあるようだ。
次に目に付いたのはローブ姿の通行人だ。ベルトチカ老師に軽く挨拶する人。上半身裸のシロガネを険しい顔で睨む人。何も言わずに通り過ぎる人と、反応は様々。ゆったりとしたローブのせいで性別は分かりにくいが、一つだけ共通する特徴があった。
「年寄りばかりだね」シロガネはふとつぶやく。
「そりゃ、ここには魔道士しかいないからね」
「え? 魔道士だけ? 魔法使いはいないの?」
「素人目には同じように見えるかもだけど、実際には天と地ほどに違うからね」
魔法使いと魔道士。どちらも魔法を扱う職業だが、決定的な違いがある。
魔法使いはその名の通り、魔法を使う者。対して魔道士は、魔法を使うだけでなく、新たな魔法の開発もするのだ。
そしてここは大実験場"タルタロス"。オリジナル魔法の開発に生涯を捧げた、魔道士の猛者が集う場所なのだ。
複雑怪奇な迷路のような通路を歩きながら、ベルトチカ老師は話しはじめた。
「ねえシロ坊、いかに強い勇者であっても、眠っている間は無防備よね。それは分かるでしょう?」
「うん。わかるよ」
シロガネ自身、ラズ老師の"襲撃"に対応できず無防備だった。理解できる話だ。
「ではどうすればいいだろうね。眠るのを諦める? ある意味正解だけれど、それも限度がある。人里に戻り、宿屋に泊まる? それは理想的だけれど、宿屋だって絶対に安全とは限らない」
「うん。すごくわかる」
シロガネ自身、自室で眠っているところを"襲撃"された。ますます理解できる話だ。
「ではどうすればいいか? 襲撃に備えて、信頼できる仲間を見張りに立てるのが一番ね」
「うん。激しくわかる」
「でも、その仲間は信用できる? 裏切られたらお終いよね。そもそもいつも仲間を募れるとは限らない。状況次第では独りの時もあるでしょう。そんな時、どうすれば安心して眠れるかねぇ」
「うん…。うーん…。わかんないや」
「『無ければ造れ』。これがアタシ達、魔道士の基本理念よ。そしてアタシ達の出した結論がね、『眠っている間、護衛してくれる守護者』だった」
「守護者を造ったの?」
「そう、造ったの。賛同する魔道士の共同開発でね。開発は順調に進んで、先週から発動実験を繰り返していたのだけれど…」
「実験が失敗しちゃった?」
「まさか! その逆だよ。実験は大成功だった。むしろ成功しすぎてしまったのさ」
2人は"第2観測室"と書かれたドアを開ける。中の部屋も中は白く、照明もないのに明るい。
部屋の奥へと入ったベルトチカ老師は、カーテンの側に立つ。
「ここから中央実験場が見えるけど……腰を抜かさないでおくれよ。覚悟はいいかい?」
覚悟? 一体何が見えるというのだろう? 恐ろしい怪物? 惨たらしい屍体? 正気を失うような何か?
負けるもんか! ボクだって王宮戦士なんだ! 逃げも隠れもしないさ!
「いいよ! 見せてよばあちゃん!」
ベルトチカはカーテンを開く。
そこから見えるのは、直径五千メートルにも及ぶ、半球状のドーム型実験場。地下にいることを忘れてしまうほどに広大な施設だった。
そしてその中央に陣取っているのは、とてつもなく、とてつもなく巨大な、緑色のドラゴンだった。
「ぬおおおおおっ!! 急がねば! 急がねばぁぁ!!」
魔法翼"イカロスノツバサ"を広げ、王国上空に舞い上がっていた。周囲に展開した魔法障壁で、飛行の際に受ける風圧を最小限に抑えてはいるが、それでも髪やローブやマントが激しくはためいている。
王都ノイバラの全景が見えるほど上昇すると、今度は南南東にそびえる山へ向け、猛スピードで一直線に飛ぶ。
ふもと上空に辿り着くと、ラズ老師は真下を見る。月明かりに照らされた森の中に、明かり届かぬ巨大な丸い闇がポッカリと空いていた。直径約50メートルのアビス。地下大実験場、唯一の出入り口。その名も"タルタロス・ホール"である。
「やれやれ、秘密保持にはもってこいの場所とはいえ、難儀じゃのう」
ラズ老師は、ガングビトの古い友人からもらったポータブルカセットプレーヤーを取り出すと、イヤホンを耳に付け、再生ボタンを押す。
「さぁて、レッツらゴーじゃ!」
ラズ老師は、1曲目が始まると共に急降下し、アビスへと飛び込んだ。嘘か誠か知らねども、最深部到達は自由落下だと十日。階段で下りるなら数ヶ月を要すると言われている。ラズ老師が飛行術を駆使し、どんなに急いでも一時間。
ゴキゲンなミュージックでも聴いてないと、とてもじゃないがやってられない。
「それで……、ボクは何をすればいいの?」
「一言で言うなら人命救助だけど…、詳しくは歩きながら話そうね。今はこれ」
ベルトチカ老師は、漢字で『許』と刻まれたバッジをシロガネに渡す。
「まずはこのバッジをお付け。入場許可章だよ。これが無いと部屋からも出られないの。"ガードゴーレム"に羽交い締めにされちゃうからね。無くさないよう、お気をつけ」
シロガネは腰に巻いた白マントにバッジを付ける。
「ばあちゃん、これでいい?」
「うん。バッチリ♪ ………あっ、今のはダジャレじゃないからねっ! 勘違いしないでおくれよ!」
全力で否定するベルトチカ老師は、ちょっと可愛かった。
「それじゃ行こうかね。通路は迷路みたいなものだから、はぐれないよう、ちゃんと付いてきておくれ」
白い部屋から出ると、通路の床も、壁も、天井も白かった。やはり照明らしきものはどこにも無い。にもかかわらず明るい。
その中で最初に目に付いたのは、人間より一回り大きな魔神像だ。それらは歩き回っているかのように、様々なポーズで不規則に置かれている。いや、事実その像は歩き回るのだ。対人警備システム"ガードゴーレム"。殺傷や破壊ではなく、捕縛に特化した魔神像だ。ちなみに対人外用には他の警備システムがあるようだ。
次に目に付いたのはローブ姿の通行人だ。ベルトチカ老師に軽く挨拶する人。上半身裸のシロガネを険しい顔で睨む人。何も言わずに通り過ぎる人と、反応は様々。ゆったりとしたローブのせいで性別は分かりにくいが、一つだけ共通する特徴があった。
「年寄りばかりだね」シロガネはふとつぶやく。
「そりゃ、ここには魔道士しかいないからね」
「え? 魔道士だけ? 魔法使いはいないの?」
「素人目には同じように見えるかもだけど、実際には天と地ほどに違うからね」
魔法使いと魔道士。どちらも魔法を扱う職業だが、決定的な違いがある。
魔法使いはその名の通り、魔法を使う者。対して魔道士は、魔法を使うだけでなく、新たな魔法の開発もするのだ。
そしてここは大実験場"タルタロス"。オリジナル魔法の開発に生涯を捧げた、魔道士の猛者が集う場所なのだ。
複雑怪奇な迷路のような通路を歩きながら、ベルトチカ老師は話しはじめた。
「ねえシロ坊、いかに強い勇者であっても、眠っている間は無防備よね。それは分かるでしょう?」
「うん。わかるよ」
シロガネ自身、ラズ老師の"襲撃"に対応できず無防備だった。理解できる話だ。
「ではどうすればいいだろうね。眠るのを諦める? ある意味正解だけれど、それも限度がある。人里に戻り、宿屋に泊まる? それは理想的だけれど、宿屋だって絶対に安全とは限らない」
「うん。すごくわかる」
シロガネ自身、自室で眠っているところを"襲撃"された。ますます理解できる話だ。
「ではどうすればいいか? 襲撃に備えて、信頼できる仲間を見張りに立てるのが一番ね」
「うん。激しくわかる」
「でも、その仲間は信用できる? 裏切られたらお終いよね。そもそもいつも仲間を募れるとは限らない。状況次第では独りの時もあるでしょう。そんな時、どうすれば安心して眠れるかねぇ」
「うん…。うーん…。わかんないや」
「『無ければ造れ』。これがアタシ達、魔道士の基本理念よ。そしてアタシ達の出した結論がね、『眠っている間、護衛してくれる守護者』だった」
「守護者を造ったの?」
「そう、造ったの。賛同する魔道士の共同開発でね。開発は順調に進んで、先週から発動実験を繰り返していたのだけれど…」
「実験が失敗しちゃった?」
「まさか! その逆だよ。実験は大成功だった。むしろ成功しすぎてしまったのさ」
2人は"第2観測室"と書かれたドアを開ける。中の部屋も中は白く、照明もないのに明るい。
部屋の奥へと入ったベルトチカ老師は、カーテンの側に立つ。
「ここから中央実験場が見えるけど……腰を抜かさないでおくれよ。覚悟はいいかい?」
覚悟? 一体何が見えるというのだろう? 恐ろしい怪物? 惨たらしい屍体? 正気を失うような何か?
負けるもんか! ボクだって王宮戦士なんだ! 逃げも隠れもしないさ!
「いいよ! 見せてよばあちゃん!」
ベルトチカはカーテンを開く。
そこから見えるのは、直径五千メートルにも及ぶ、半球状のドーム型実験場。地下にいることを忘れてしまうほどに広大な施設だった。
そしてその中央に陣取っているのは、とてつもなく、とてつもなく巨大な、緑色のドラゴンだった。
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