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【2】ナラクニマヨイテ
2-6 兄貴!? あんたもか!?
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「ちょっ……ちょっと待ってくれ、兄貴! もしかして今の話……」
ザックは喉の奥から出かかった言葉を、すんでの所で飲み込む。嫌な予感がした。正直、確かめるのが怖かった。しかし、先に進むにはそれしかない。ザックは勇気を振り絞り、ジェイクに問う。
「今の例え話……。もしかして"商品"と関係あるのか?」
するとジェイクは真剣な面持ちになると、言い放った。
「"商品"じゃない! モナカちゃんだ!」
…
……
嗚呼………
なんてこったい………
ザックは思わず頭を抱え、心の中でむせび泣く。
くそっ! くそっ! くそっ!
恐れていたことが現実となってしまった。
オレの尊敬する、クールでハードでボイルドなジェイクの兄貴がっ!
紳士として振る舞いながらも必要とあらば女子供とて容赦ない"ジェノサイド・ジェントル・ジェイク"がっ!
よりによって小娘を"ちゃん"付けだとっ! なんて軟弱な言葉を吐き出すんだっ!
こんな事ありえねぇっ! あっちゃいけないんだっ! これは夢なのか? 悪夢を見ているのかっ?
何がそうさせたっ! 誰の仕業なんだっ! やはり呪いか! 呪いがそうさせるのかっ?
ザックが心の中で悶絶していると、ジェイクは続けてこう言い放った。
「一つ言っておくぞ、ザック!」
「な、なんだよ兄貴」
「もし今度モナカちゃんを"商品"などと呼んだら、これっきりだからな。説得タイムは終わりだ。不敬な輩とは二度と口をきいてやらん」
「なっ……」
「返事はどうしたザック」
「わ、わ、分かった……」
キュベリと同じだ。いや、症状は多分キュベリよりも酷い。
あくまで仮説に過ぎなかった『呪い説』が、いよいよもって現実味を帯びてきた。
何とかしてジェイクを正気に戻したいが、ザックに解呪の決定打は無い。しかし、まったく手が無いわけではない。
呪われている事をジェイクが自覚すれば、多少なりとも抵抗する意志が生まれる。ジェイクほどの男なら、自ら呪いを打ち破るかもしれない。今はジェイクの鉄の意志に賭けるしかない。
「兄貴! 気を落ち着かせて聞いてくれ! 兄貴は今、呪われている可能性がある!」
「呪い? 呪いとは何だ? 何の事だ?」
「自分を振り返ってくれ兄貴! あんたは人を"ちゃん"付けで呼ぶような、軽薄な男じゃなかっただろ? キュベリと同じ症状なんだよ! アイツは大の女嫌いなのに、しょうひ……じゃなくて、モナカちゃ……いや、あのケモノビトの娘を、まるで妹のように心配していた」
「お前は何を言っている? 当たり前だろう」
「……え? な、なにが?」
「キュベリはキュベリなりに、モナカちゃんの"にぃに"であろうとしていたんだ。妹を大事に思うに決まっているだろう」
グワ~~~~~~~~~~~~~っ!!
グワァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!
グワワワワァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!
ザックの魂が悲鳴を上げる。
"ちゃん付け"のみならず、よりによって"にぃに"だとおぉぉ!!
聞きたくなかった…。そんな幼稚な言葉、兄貴の口から聞きたくなかった……
ザックは発狂寸前だった。
「しかし……呪いだと? 今の状況が……呪い? 私が、呪い…で?」
「えっ!?」
ジェイクの反応が変わった? これは……もしかして!
「ザック……お前は、今の私が呪われているというのか?」
「お、おおっ! そうだよ兄貴! その可能性が高いんだ! オレはケモノビトの娘が、呪いのアイテムを持たされていると踏んでる」
「モナカちゃんが持たされている? 呪いのアイテムを?」
呪いを自覚したことで、正気を取り戻したのだろうか? ザックに僅かながら希望が見えてきた。
「ああ、そうなんだ。きっとジェイクや兄貴は、はめられたんだよ!」
「はめられた? はめられた… はめられた、か。言われてみれば、確かにそんな気がする。確かに私は今の今まで、本当の目的を、人生の目標を忘れていた。ザック、それをお前は呪いだと言うのか?」
「ああ、きっとそうだぜ!」
「そうか…。これが呪いか。こんな幸せで、優しい気持ちになれる呪いなら、永遠にかかっていたいものだ」
「何……を、言ってるんだ?」
「ザック。お前に呪いの正体を教えてやろう。それはな、真実の愛だ」
「あ……愛?」
「何もかも捨てて、モナカちゃんの幸せのために全てを捧げる。これぞ"にぃに"の義務なんだよ」
"にぃに"を名乗るには、あまりにも年を取りすぎた白髪の男が、優しく微笑んだ。
それはザックが一度も見たことのない、まるで憑き物が堕ちたような、穏やかな微笑みだった。
ザックは喉の奥から出かかった言葉を、すんでの所で飲み込む。嫌な予感がした。正直、確かめるのが怖かった。しかし、先に進むにはそれしかない。ザックは勇気を振り絞り、ジェイクに問う。
「今の例え話……。もしかして"商品"と関係あるのか?」
するとジェイクは真剣な面持ちになると、言い放った。
「"商品"じゃない! モナカちゃんだ!」
…
……
嗚呼………
なんてこったい………
ザックは思わず頭を抱え、心の中でむせび泣く。
くそっ! くそっ! くそっ!
恐れていたことが現実となってしまった。
オレの尊敬する、クールでハードでボイルドなジェイクの兄貴がっ!
紳士として振る舞いながらも必要とあらば女子供とて容赦ない"ジェノサイド・ジェントル・ジェイク"がっ!
よりによって小娘を"ちゃん"付けだとっ! なんて軟弱な言葉を吐き出すんだっ!
こんな事ありえねぇっ! あっちゃいけないんだっ! これは夢なのか? 悪夢を見ているのかっ?
何がそうさせたっ! 誰の仕業なんだっ! やはり呪いか! 呪いがそうさせるのかっ?
ザックが心の中で悶絶していると、ジェイクは続けてこう言い放った。
「一つ言っておくぞ、ザック!」
「な、なんだよ兄貴」
「もし今度モナカちゃんを"商品"などと呼んだら、これっきりだからな。説得タイムは終わりだ。不敬な輩とは二度と口をきいてやらん」
「なっ……」
「返事はどうしたザック」
「わ、わ、分かった……」
キュベリと同じだ。いや、症状は多分キュベリよりも酷い。
あくまで仮説に過ぎなかった『呪い説』が、いよいよもって現実味を帯びてきた。
何とかしてジェイクを正気に戻したいが、ザックに解呪の決定打は無い。しかし、まったく手が無いわけではない。
呪われている事をジェイクが自覚すれば、多少なりとも抵抗する意志が生まれる。ジェイクほどの男なら、自ら呪いを打ち破るかもしれない。今はジェイクの鉄の意志に賭けるしかない。
「兄貴! 気を落ち着かせて聞いてくれ! 兄貴は今、呪われている可能性がある!」
「呪い? 呪いとは何だ? 何の事だ?」
「自分を振り返ってくれ兄貴! あんたは人を"ちゃん"付けで呼ぶような、軽薄な男じゃなかっただろ? キュベリと同じ症状なんだよ! アイツは大の女嫌いなのに、しょうひ……じゃなくて、モナカちゃ……いや、あのケモノビトの娘を、まるで妹のように心配していた」
「お前は何を言っている? 当たり前だろう」
「……え? な、なにが?」
「キュベリはキュベリなりに、モナカちゃんの"にぃに"であろうとしていたんだ。妹を大事に思うに決まっているだろう」
グワ~~~~~~~~~~~~~っ!!
グワァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!
グワワワワァァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!
ザックの魂が悲鳴を上げる。
"ちゃん付け"のみならず、よりによって"にぃに"だとおぉぉ!!
聞きたくなかった…。そんな幼稚な言葉、兄貴の口から聞きたくなかった……
ザックは発狂寸前だった。
「しかし……呪いだと? 今の状況が……呪い? 私が、呪い…で?」
「えっ!?」
ジェイクの反応が変わった? これは……もしかして!
「ザック……お前は、今の私が呪われているというのか?」
「お、おおっ! そうだよ兄貴! その可能性が高いんだ! オレはケモノビトの娘が、呪いのアイテムを持たされていると踏んでる」
「モナカちゃんが持たされている? 呪いのアイテムを?」
呪いを自覚したことで、正気を取り戻したのだろうか? ザックに僅かながら希望が見えてきた。
「ああ、そうなんだ。きっとジェイクや兄貴は、はめられたんだよ!」
「はめられた? はめられた… はめられた、か。言われてみれば、確かにそんな気がする。確かに私は今の今まで、本当の目的を、人生の目標を忘れていた。ザック、それをお前は呪いだと言うのか?」
「ああ、きっとそうだぜ!」
「そうか…。これが呪いか。こんな幸せで、優しい気持ちになれる呪いなら、永遠にかかっていたいものだ」
「何……を、言ってるんだ?」
「ザック。お前に呪いの正体を教えてやろう。それはな、真実の愛だ」
「あ……愛?」
「何もかも捨てて、モナカちゃんの幸せのために全てを捧げる。これぞ"にぃに"の義務なんだよ」
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