グレート・プロデュース  〜密かに国をコントロールする最強のエージェントは、恋に落ちた王女を大帝王に即位させることができるのか?〜

青波良夜

文字の大きさ
30 / 136
第三章

No.030

しおりを挟む
 視界が戻ると、俺たちは広大な砂漠のような場所にいた。
 空間はどこまでも広がり、遠くの方は景色が霞んでいる。
 太陽は見えないのに、昼間のように明るい。しかし、なんの音も聞こえてこない。

「ここは、なんなの……?」

 メリーナが俺の腕にしがみついたままつぶやく。
 その視線は、目の前にある街に向けられていた。
 
 ただ、街といっても現代的ではなく、どちらかというと遺跡に近い雰囲気だ。
 建ち並ぶ建造物はどれも巨大で、宮殿のように華やかに装飾されている。
 道は石畳で綺麗に整備されているが、飾り気はなく、無機質な印象を受けた。

幻想蜃気楼イルシオミラージュだ……」

 俺は思わずつぶやいた。
 すると、メリーナが即座に尋ねてくる。

「ここに飛ばされてきた魔法の名前?」
「違う。目の前の建物や、この砂漠みたいな空間を作ってる魔法だ」
「これって全部、魔法なの?」
「ああ。本来、ここはただの地下空間だ。そこに、現実には存在しない空想上のモノを、蜃気楼のように出現させている。ただし蜃気楼とは違い、実在するモノとして触れることができるんだよ」
「そんな魔法、聞いたことないわ……」
「大魔法時代の魔法だからな」
「1000年前のものなの!? そんなに昔の魔法が発動したままってこと?」

 メリーナはとても信じられないといった顔で尋ねてくる。
 それに対して、俺は無言でうなずく。
 
 しかしメリーナが知らなかったのは意外だ。
 何しろ、この場所を造ったうちの一人は、メリーナのご先祖様なんだからな。


 ◆◆◆


 俺たちは魔法で造られた街を進んでいく。
 実際に歩いてみても、実体がないとは思えない場所だ。
 道も壁も建物も、触れたり叩いたりしてみても、本物と寸分違わぬ感触を受ける。

 ただ、なんの音も聞こえてこないところは不気味だった。
 人どころか、ここでは生命の気配を全く感じないのだ。

 どんどん街の奥へと進み、やがて俺たちは一つの巨大な建物に入った。
 銀色の装飾が施された宮殿のような建物だ。

「……ねえ、なんでこの建物に入ったの?」

 メリーナが恐る恐る尋ねてくる。
 当然の疑問だ。ここに来るまでに、他にいくつも建物があったが、俺は入ろうとしなかったからな。
 もちろん、理由はちゃんとある。

「シルバークラウン家の王宮だからだ」
「それって、フィラデル様のお家だからってこと?」
「フィラデルが関係あるかは知らないが、ここに飛ばされた時に使った石板。アレに書かれてあった呪文は何色に光った?」
「確か銀色……あっ! 空間転移の魔法に、<無純むじゅん系>を使うのは珍しいとは思ったけど……」
「十三継王家つぐおうけは、魔法を多くの系統に分け、それぞれ分担して管理している。他家が管理している系統の魔法を勝手に使うことは、継王家同士の宣戦布告に近い」
「うん……わたしも、ウチの家が管理してる系統以外の魔法は、絶対に使っちゃダメって、子供の頃から厳しく言いつけられてたわ」
「法を破って使う者はともかく、十三継王家であれば尚更、そのルールは破りづらいものだ」
「じゃあ、あの空間転移の魔法を使ってたのは、シルバークラウン家の人ってこと?」
「それを今から突き止めに行くんだ」

 そんな話をしているうちに、俺たちは建物の最奥と思われる場所に辿りついた。
 目の前には、馬鹿みたいに巨大で、仰々しい扉がある。
 その扉を開き、俺たちは部屋の中へと入った。
 
 そこは謁見の間のようだった。部屋は円形の大きな空間で、天井も遥か高くにあり、壁際には巨大な石像が並んでいる。ライトとは違う青白い光が辺りを照らし、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 部屋の奥の方に、これまた巨大な椅子が置かれてある。
 そして椅子には、すでに一人の男が座っていた。

 男の長い髪と髭は白銀に染まり、顔には深いシワが刻まれている。しかし眼光の鋭さに衰えはなく、全身から重厚な気を発している。

 その人物を見て、メリーナは驚嘆の声をあげた。

「フィラデル様!?」

 正直なところ、俺も驚いた。
 あの魔法テロによって、重症を負ったはずの大帝王が、なぜか目の前に座っているのだ。
 見たところ、傷一つ負っていないように見えるが。

「随分と早く回復したんだな」

 俺が声をかけると、老齢の男は皮肉めいた笑みを浮かべる。

「久しいな、ライ・ザ・キャッチーよ。お前とこうして話すのは何年振りになるか」
「思い出話より、どういうことか教えてもらえると助かるんだけどな」
「お前ともあろうものが、余の真偽も見抜けなんだか」

 そのフィラデルの言葉で俺はピンときた。

「影武者か……」
「くくく……まさか、あのライ・ザ・キャッチーまで騙せるとはな。この程度の栄光値ポイント稼ぎで無駄にするには惜しい人材だったか」

 フィラデルの話し方で、奴が何をしたのか段々と理解してきた。

 俺はその確証を得ようと、次の質問を用意する。
 しかしメリーナが先に、フィラデルに話しかけてしまう。

「フィラデル様! わたし、サンダーブロンド家のメリーナです!」
「ふむ。そなたは見違えたな。先の婚約式では、余の都合ゆえ列席せなんだが、心苦しく思っておった」
「いえ……あの時は、いらっしゃらないほうが、わたしとしても良かったので……」

 さすがのメリーナも、大帝王の前だと最低限の礼儀を示せるんだな。
 と、俺は妙に感心していた。

 その間にも、フィラデルとメリーナの会話は続いていた。

「して、そなたは余に訴えたき事柄でもあるのか?」
「いえ……わたしはただの付き添いですので。あっ、でもフィラデル様がご無事で何よりです」

 とってつけたような見舞いの言葉を口にするメリーナ。
 さっきの俺の話を聞いてなかったのか?
 確かにまだ、全ての事実が明らかになったわけではないが。

 というわけで、俺はメリーナに代わり、フィラデルに問いかける。

「フィラデル。パレード車に乗ってたのは、お前の偽物だったんだな?」
「ライよ、今となっては、お前くらいだ。余の名を呼び捨てる者などな」
「慇懃無礼がご所望か?」
「まあよい。ここには他に誰もおらん。特別に許してやろう」
「答えろ。全部、お前の自作自演だったのか? 影武者を使い、わざと自分を狙わせたのか?」
「お前たちのやり方を真似てみたくなったのだよ」
「……パレード車に魔法を放った犯人はどこにいる?」
「では、特別に見せてやるか」

 そう言いながら、フィラデルは横の柱に視線を向けた。
 すると、すぐに柱の陰から何者かが現れる。

 全身黒ずくめで、パーカーのフードを目深にかぶった、背の低い人物だ。
 間違いない。魔法攻撃を仕掛けた犯人だと考え、俺たちが追いかけていた奴だ。

「何者だ?」

 俺が問いかけると、その人物がフードを上げて顔を見せる。

 少年だった。髪は銀色で、顔にはあどけなさが残る。まだ十二、三くらいだろうか。
 しかし態度は堂々としたもので、人を見下したような笑みを浮かべていた。

「ねえ、パパ。こいつら、殺したほうがいいの?」

 銀髪の少年が、フィラデルに問いかける。
 子供のくせに、なかなか恐ろしい発言をする奴だ。

 しかし、まさか魔法テロを起こした犯人が大帝王の息子だったとはな……。
 つまりフィラデルは、息子に自分の影武者を狙わせたことになるが。

「パパ、やっちゃってもいいよね?」

 また少年がフィラデルに問いかけた。おもちゃでもねだるような言い方だ。
 ただ、フィラデルは何も答えず、俺と睨み合っていた。

 さすがにフィラデルも、そこまで馬鹿じゃないはずだ。
 俺だって、こんな子供を相手にしたくはない。

 それでも、いざとなったら……。

 俺はちらりと横を見る。メリーナは俺の腕をぎゅっと握り、かすかに震えていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...