魔法使いの先生~あの師弟、恋人ってウワサです!~

もにもに子

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第八章~流星~

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「構えはさっきよりいい。次、魔弾を三発。距離、十五メルト。狙うのは頭と胸と、右足だ」

エリオットの声が響くと、ルイは小さく息を吐いた。
前方に立つのは、金属製の訓練用ダミー。
風で揺れる鎧の端が、わずかにきらめく。

ルイの日常のひとつ。魔術訓練である。

ルイはグレゴリーから魔術の手ほどきを受けていたが、実戦向けとなると錬金術を扱うグレゴリーは教えるのに不向きだった。
そこで抜擢されたのが、騎士団の副団長であるエリオットだ。エリオットはルイに戦い方を教えているのである。

ルイは右手を前に出し、指先で空気を撫でるように印を描いた。
その軌跡に魔力が宿り、掌の中央に淡い光の球が現れる。

魔弾──。

放たれたそれは、まるで花弁がはじけるように音もなく走り、まずは胸部へ。

ズンという重い音を立てて、ダミーの中心に着弾する。

「いいぞ、一発目は合格。……次!」

即座にルイは魔力を練り直し、今度は二発を連続で放った。

一発は狙い通り頭部をかすめたが、もう一発はバランスを崩していたのか、足元には届かず、地面で弾けた。

「惜しいな。魔力の収束、最後のだけ緩んでた。焦るな、落ち着け」

エリオットの声に、ルイはうなずいた。

魔弾の訓練はただ力を込めて撃てばいいというものではなかった。
の動き、呼吸、自身の重心、そして魔力の流れ。
すべてが整ってはじめて、「撃つ」という行為が成立する。

「……でも、手応えはあった。魔力の導き方が、少しわかってきた気がする」

ルイの言葉に、エリオットは腕を組みながら口角をわずかに上げた。

「そうだな。今の三発、全部“綺麗”だった」

「綺麗……?」

「お前の魔弾は、まるで光を編んだみたいに美しいんだ。最初見た時、あまりに静かで、殺気がなさすぎて笑ったくらいだ。だけど──それでいて、威力はちゃんとある。だからこそ、敵は混乱する。……その美しさ、武器になるぞ」

ルイは黙って掌を見つめた。
指先にまだ微かに残る魔力の余韻が、淡い光の筋となって空へと昇っていく。

「そもそも、俺、戦いの訓練する必要ある? 俺、騎士団でも魔術師団でもないし……」

「宮廷魔術師になるんだろ? 騎士団も魔術師団も従えるくらいになってもらわないとな」

「うー……。勝手に決められただけなんだけど……」

「それにしても、おまえは才能があると思う。魔術の訓練を始めて2年だろ? それでここまで魔術を扱えるやつは見たことがない」

ルイはじと……とエリオットを見つめた。そんなに褒めてもらっても困る。

グレゴリーいわく。

 導師の特徴①:星の子を導く力がある

 導師の特徴②:優れた魔術師である

とのこと。

ルイもアリアも導師の資格があるらしい。
だから、アリアは星の子を導く導師に、ルイは魔術師の頂点たる宮廷魔術師に。
それぞれ成るようにとグレゴリーは計画しているという。

勝手に決められても困るが、魔術を扱うのが嫌いというわけでもないし、魔術を扱えればアリアを守ることもできるので、素直に訓練に従っていた。

「よし、そろそろ今日のところはいいだろう。そうだな、このあと飯でもどうだ?」

「……いいけど」

エリオットがルイの肩を抱く。

ルイはされるがまま、ずるずると食堂に連れていかれるのだった。
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