「深淵のサラ」 〜極限の潜水パフォーマンスに挑む金髪の美姫。独占欲に溺れるCEOと、立ちはだかる女帝たち〜

Mina_Underwater

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第6章 緋色の龍宮(龍墜)

6-2.人魚候補

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残された男たちは、収まらない股間の熱と、彼女が残したあまりに過激な約束に翻弄されながら、深い溜息をつくしかなかった。

ざわめき立つ男性社員たちが、未だ収まらない昂ぶりを隠すように三三五五去っていく。静寂が戻ったプールの傍らに、1人の若い女性社員だけが残っていた。

名前は劉洋(リウ・ヤン)。
赤龍エンタープライズの新人ながら、その履歴書には異色の経歴が刻まれている。
『世界水泳選手権10m高飛び込み 銀メダリスト』

「水の中にいるのが大好き」と公言する彼女を、リーがこの「龍宮」プロジェクトを盤石にするために自ら引き抜いた、いわば予備の「人魚」候補の1人だった。

ほどなくリーが戻ってくる。
「ヤン、お待たせ」
そして、フランクに目配せを送る。彼は手慣れた動作で、赤のビキニに負けないほど鮮やかな、深い青の紐ビキニをヤンに差し出した。

「ヤン、泳ぐわよ。あなたも、ついてきて」

リーの言葉に、ヤンの瞳が歓喜でキラキラと輝いた。憧れの若き女社長のプライベートな「訓練」に指名された高揚感が、彼女の全身を突き抜ける。

「はい! 社長!」

ヤンは迷いなく制服を脱ぎ捨て、青のビキニに身を包んだ。現役時代に鍛え上げられた、無駄な脂肪の一切ない流線型の肉体。

彼女もまた、水の中で生きるために生まれた生き物のはずだった。

「こっちよ」

リーは、ヤンを促し、プールの奥にひっそりと佇む工事関係者用の仮設階段へと導いた。

「このままついてきて」 リーの声には、抗いがたい支配的な響きがある。素足のまま鉄製の階段を一段ずつ踏みしめる彼女のふくらはぎの筋肉が、一歩ごとに硬く、しなやかに躍動した。

階段の最上段、地上10メートル地点。ヤンにとっては見慣れた、しかし「龍宮」の巨大な空間の中では通過点に過ぎない高さに到達した時、リーは壁際に立てかけられた巨大な梯子を指差した。

 「もう一つ上がるわよ。ヤン、早く来なさい」

梯子を登り切った先は、照明機材のメンテナンス用キャットウォークだった。
足元を覗き込めば、遥か下にプールの水面が小さな青い宝石のように光っている。

「ここは高さ18メートル。飛び込んだら、そのまま一気にプールの底を目指して。まず私が飛ぶわ」

「え……でも、私……」

ヤンの声が上ずった。世界選手権の銀メダリストといえど、彼女の戦場は10メートル。そこからさらに8メートル、ビル約3階分も高いこの高度は、未知の領域であり、死の恐怖と隣り合わせの崖だった。

「何事も経験よ。じゃあ、下から見てるから」

リーは迷わなかった。爪先を突き出し、空を蹴る。
彼女の肢体は空中を2回転し、重力を嘲笑うような美しさで垂直の弾丸と化した。**ドォン!**という、通常の飛び込みとは一線を画す激しい破砕音がドーム内に反響する。

ヤンが手すりを掴んで身を乗り出すと、水面に鮮やかな赤い布が浮いているのが見えた。18メートルからの衝突圧。その凄まじい衝撃が、リーの赤いビキニをその肉体から強引に剥ぎ取ったのだ。

水中では、一糸纏わぬ全裸となったリーが、鍛え抜かれた大臀筋と広背筋を波打たせ、大股を開いた力強いキックでプールの底――水深10メートルの深淵へと突き進んでいた。

「えー……しかも、頭からなんだ……」

ヤンの膝がガタガタと震え出す。水面との接触速度は時速70キロを超える。わずかな角度のズレが命取りになる恐怖。

だが、底で待ち構えるリーの野性的な生命力に、ヤンの競技者としての魂が火を灯された。

「もう……一か八かよ!」

ヤンはキャットウォークの端に立ち、視界を一点に集中させた。現役時代に作り上げられた、一切の無駄を削ぎ落とした流線型の肉体が、極限の緊張で鋼のように硬直する。

彼女は宙に舞った。 世界を驚かせた銀メダリストの意地。ヤンは落下する猛烈なGの中で、最高難易度「バックスクリーンハーフ(後方転身入水)」を繰り出した。

水面が牙を剥いて迫る。 バシュゥゥンッ! 激しい衝撃が全身を貫いた。肩甲骨周りの筋肉が悲鳴を上げ、皮膚が焼けるような摩擦熱に包まれる。

その瞬間、リーと同じく、彼女の深い青のビキニもまた、水圧という巨大な力によって一瞬で引き剥がされた。

泡のカーテンを突き抜け、ヤンは水深10メートルへと到達した。 そこには、周囲の青を自らの体温で支配するかのように佇む、全裸のリーがいた。

リーは長い髪を水中に漂わせながら、満面の笑みでOKマークを作って見せた。
ヤンは、水中で静かに微笑むリーの姿に息をのんだ。
あの高さから飛び込み、しかも水深10メートルで待っていたという事実に、改めてリーの運動神経、精神力と心肺機能の高さに感銘を受ける。

(あんな高いところから飛び込んだら、すぐ浮かびたくなるのに、この人は、10メートルまで潜って、そこから私がくるのをじっと待ってたんだ。すごい!)

心の中でそう呟きながら、ヤンはリーと共に水面へと向かってゆっくりと上昇を始めた。水底からの光が届きにくい深部から、徐々に明るさを増していく水中のグラデーションが美しい。

リーの体は、平泳ぎの足の動きに合わせてしなやかに波打ち、程よく日焼けした肌が水の抵抗を受け流しながら進む。

その筋肉の動きは洗練されており、無駄が一切ない。
大股を開いたその足は、見る者に野生的な力強さと、同時に抗いがたい魅力を感じさせた。
ヤンはリーの肢体から目を離すことができなかった。

(しかも、超絶セクシー)

ヤンは、リーの持つ圧倒的な存在感に、自身もまたその魅力に引き込まれていることを自覚した。

彼女の泳ぎは、ただ速いだけでなく、まるで水と一体になっているかのように優雅で、それでいて力強い。

それは、競技としての泳ぎとは一線を画す、まさに「龍宮」という特殊な環境で生き残るための、本能に根ざした泳ぎだった。

水面に到達し、リーの瞳は、まるで深海の秘密を湛えているかのように深く、そして輝いていた。

「次は仕事の話をするから水中マスクをしましょう」

リーの言葉に、ヤンは背筋を伸ばした。遊びではない。ここからは真剣な「訓練」だということを改めて認識する。

水中マスクをして、全裸の2人の人魚は再び深く潜っていった。水圧が全身を包み込む感触が、二人の体を研ぎ澄ませていく。


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第6章2節「人魚候補」いかがでしたでしょうか?
さて、本編と並行して、本日より
『Episode-α 氷華の女王』
の連載をスタートしました。
本編でいうところの、第3章と第4章の間に
起きたエピソードで、おそらくサラと同等か
それ以上の身体能力を持つ強敵が現れます。
これを読むと、これからの本編の展開が、
また違った景色に見えてくるかもしれません。
毎日、本編の10分前に更新していきますので、
セットでお楽しみいただけると嬉しいです。
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