「深淵のサラ」 〜極限の潜水パフォーマンスに挑む金髪の美姫。独占欲に溺れるCEOと、立ちはだかる女帝たち〜

Mina_Underwater

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【外伝】Episode-ゼロ 真珠の起源 第1章 深海が結んだ運命

1-4.海に抱かれて

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「ゲホッ……! ゴホッ、ガハッ……!」

肺胞にこびりついた海水を叩き出すような、裂帛(れっぱく)の咳。その衝撃で狂ったように跳ね上がる胸板が、黒崎を暗い混濁の淵から引きずり戻した。

強引にこじ開けられた視界を焼き尽くしたのは、一切の不純物を排した南太平洋の蒼穹(そうきゅう)だ。天頂から降り注ぐ陽光は残酷なまでに純白で、網膜の裏側にまでその熱を浸透させてくる。

鼓膜の奥では、死の抱擁のごとき潮騒がまだ低く唸りを上げていたが、頬を撫でる海風がそれがもはや過去のものであると告げていた。

(……浮いているのか、俺は?)

否。浮力に身を任せているのではない。黒崎は、人智を超えた「力」によって海面上に維持されていた。

首をわずかに傾けると、重く濡れた自分の足が視界の端で揺れている。しかし、そのすぐ外側で海面を割り、波紋を散らしている「それ」に、黒崎の思考は凍りついた。

それは、真珠の粉をまぶしたかのように白く、そして異様なほど長くしなやかな、女の素足だった。
水面下でダイナミックに躍動するその脚は、解剖学的な美しさを超えた「機能美」の権化だ。
蹴り出すたびに、大腿部の滑らかな肌の下で**大腿四頭筋が鋼のように凝縮され、強靭なバネとなって水を爆ぜさせる。

**膝から足首にかけてのラインは、流線型の魚体のごとく完璧に制御されており、水を切り裂くたびに足の甲の筋肉が繊細に波打つ。

背中から腰にかけて密着しているその肌は、冷え切った黒崎の体温を奪い去るのではなく、むしろ生命の灯火を分かち合うように熱い。

「……誰だ……」

掠れた声は、逆巻く風の中に虚しく霧散した。 首の周りには、白磁の細工のように細く、それでいて羽毛のように柔らかな腕が回されている。
その腕は、荒れ狂う大海原から彼を奪い取った略奪者の強固さと、壊れ物を扱う聖母の慈しみを同時に宿していた。

彼女がひとたび身をくねらせるたび、黒崎を支える背中の筋肉――**広背筋から脊柱起立筋にかけての美しい隆起が、ダイレクトに黒崎の胸板に伝わってくる。
**それは、海という暴力的な支配者の中で、唯一無二の安全圏を構築する、圧倒的な生命の拍動だった。

頭の中には、まだ致死量の睡眠薬が澱(おり)のように沈殿している。
現実の色彩は彩度を増し、幻覚の残滓と混じり合って万華鏡のように回る。

「……俺は……死んで、天国にでも……行こうってのか……」

呟きは泡となって消える。仰ぎ見る空はどこまでも高く、太陽はすべてを赦すように眩い。
背後から伝わる、トビウオのように軽やかで、クジラのように力強い鼓動。
そのリズムに身を委ねるうちに、黒崎の瞼は鉛のような重力を湛え始めた。

意識は再び、光の届かない水の底へ、安らかな暗渠(あんきょ)へと沈下していく。 
彼はその温かな腕の中で、逃れようのない深い眠りへと、ゆっくりと堕ちていった。
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