浮気したので断罪を覚悟したら何故か溺愛されました

恋守あい

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「……あ、あーん……」


差し出されたフォークから、甘く煮詰められた果実を口に含む。
カイル様は私の咀嚼をじっと見つめ、喉が動くたびに満足げに目を細めた。


「美味しいかい、シェイラ。君のために、わざわざ南国から取り寄せたんだ」


「はい。とても……甘いですわ、カイル様」


私は彼に寄りかかったまま、力なく微笑んだ。
もう、自分で食事をしようという気力さえない。
彼が与えてくれるものを食べ、彼が選んだ服を着て、彼が語りかける言葉だけを真実として受け入れる。


「……ふふ、本当に可愛いな。最近の君は、まるで僕から片時も離れられない小鳥のようだ」


「……離れたら、私は死んでしまいますもの。……そうでしょう?」


私が彼の首に腕を回し、耳元で囁くと、カイル様の瞳が熱く、暗く沈んだ。
以前の私なら、こんな媚びるような態度は決して取らなかっただろう。
けれど、彼が望むのは「高潔な令嬢」ではなく「僕なしでは壊れてしまう脆い花」なのだ。


「……ああ、そうだね。君を売った父親も、地下牢で発狂しかけている妹も、もう君を助けには来ない。……君を愛しているのは、この世界で僕だけだ」


カイル様は私の髪を執拗に撫で回し、その香りを深く吸い込む。
彼の執着は、私が従順になればなるほど、比例するように膨れ上がっていく。


「……ねえ、カイル様。……もし、私がここから逃げ出そうとしたら、どうなさいますか?」


試すような私の問いに、カイル様の動きが止まった。
彼は私の顎を力任せに持ち上げ、冷徹な笑みを浮かべる。


「……その足を折って、一生歩けないようにしてあげるよ。……車椅子に揺られる君を、僕がどこへ行くにも抱きかかえて運ぶんだ。……悪くないだろう?」


「……ふふ、恐ろしい人。……でも、そんな風に愛されるのが、今は心地よいのです」


私は彼の胸元に顔を埋め、自分を閉じ込める腕の強さを確かめる。
恐怖はある。けれど、その恐怖こそが「自分はここにいてもいいのだ」という許可証のように思えた。


「……シェイラ。……君は僕の共犯者だ。……僕が君を手に入れるために犯したすべての罪を、君はその愛で赦し続けなければならない」


「ええ。……ずっと、そばにいますわ。……あなたの檻の中で」


私たちが互いを求める理由は、もはや愛という綺麗な言葉では説明できない。
裏切りと執着、絶望と安堵。
それらが複雑に絡み合い、私たちは二人で一つの、歪な生き物へと成り果てていた。


共依存。
出口のない暗い闇の中で、私たちは互いの体温だけを頼りに、さらに深く沈んでいった。
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