上 下
45 / 117

手作りサンドウィッチ⑤

しおりを挟む

 なんだろう、お礼って。なにかくれるとかかな。

 なにかもらえるとなれば、嬉しいに決まっている。少し胸を高鳴らせて待ったつむぎであったけれど、直後、そんなかわいらしいものでは済まなくなった。どきんと心臓が跳ねる。
「そうだ! どっか。遊びに行かね?」

 ……遊びに!?

 当たり前のように、街中などの外に、休みの日にということだろう。
 そんなことは『遊びに』というか、デー……。
 かぁっと顔が熱くなる。そんなこと、考えたこともなかった。
「なにしろ付き合ってるんだからな。ちょうどいいだろ」
「え、そ、そんな……」
 おろおろ言ったつむぎであったが、その『おろおろ』の意味など、いばら先輩には筒抜けだっただろう。顔も赤かっただろうし。にやっと笑われてしまった。
「初デートだ。いいだろ」
 それはからかわれているときのような顔であったのに。
 ……どこか嬉しそう、だなんて。つむぎは感じてしまったのだ。
「じゃ、次の日曜日。どうだ」
 まだこの事態が受け入れられないながらも、つむぎは予定について考えて、口に出していた。
「え、あ、あの……あ、空いてます、けど」
 先輩はまた嬉しそうな顔をして、決定を告げた。
 つむぎのとまどいと熱い顔が去らないうちに。
「よし、じゃあその日にしよう。待ち合わせは駅でいいか」
 そのように。
 とんとん拍子で、いばら先輩との『デート』が決まってしまったのである。
しおりを挟む

処理中です...