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きれいになった?②

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「あ、そ、そろそろ戻らないとね!」
 助かった、なんて思ってしまった。この話はなんだか気まずかったから。
 李奈としてはもう少しいろいろ聞きたかっただろうから「えー、じゃ、今度また教えてよ」なんて言ってきたけれど。そしてつむぎは「ま、また、機会があったらね」なんてごまかしてしまったけれど。
 クラスに戻るべく、空き教室を出て、廊下を歩きだした。A組の教室が見えてきた、そこで。
 知っている顔に出会った。
「ああ、つむぎ。どっか行ってたのか。A組まで行ったんだぜ」
 空であった。A組につむぎを訪ねてきてくれたというが、いなかったから戻るところだったのだろう。
「そうなんだ。ごめんね、李奈と話してたの」
 李奈が空を前にしてちょっときんちょうするのが伝わってきた。つむぎはほほえましく思う。
 ほら、やはり恋とはこういうものなのだ。自分はこうなったりしない。だからやはり、違うと思う。
 つむぎはそう思った。でも、恋にはいろんな形があるのだけど。つむぎはとりあえず今、その点には思いいたらなかった。
「そうか。あのさ、今日放課後空いてるか? 一緒に帰らないか」
 空に誘われたけれど、あいにく今日は。
「あ、今日は部活が……ごめんね」
 今日は手芸部の活動日。普段は活動がゆるいが、今日はミーティングがあるので休めないのだ。
 だからまた今度、というつもりだったけれど、それより先に空が言った。
「いや、明日、土曜日だろ。部活、終わってからでいいから」
 なんだか普段の空らしくなかった。少なくともつむぎはそのように感じた。
 どこがというと、ちょっと、固い?
 空気がとか、雰囲気がとか、そういうものが。
 自分がなにかしただろうか。つむぎは疑問に思ってしまう。
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