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ガーベラのお見舞い④
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ガーベラの花はしばらくの間金香の部屋を彩ってくれた。
花瓶のガーベラは生き生きとしていて、布団の中でそれを見るたびに金香は幸せを覚えた。
そして本当にただの風邪であったようで、先生がお見舞いに来てくださった次の日には床をあげられた。
「しばらく無理はしないように」と言われて寺子屋の仕事はもう数日休みにさせていただくことにしたが。
仕事内容はともかく屋敷から寺子屋までは少し距離がある。単純に歩いていく距離や時間だけでなく暑い折で、外を歩くだけでも体力を使うということもあり。
自宅に居た頃であれば寺子屋が近いこともあり「もう治ったから大丈夫」と仕事に行ってしまっていただろうが心配してくれる人がたくさんいるのだ。金香はおとなしくお言葉に甘えておいた。
『おとなしくしている』間は、部屋で勉強に宛てた。
三日も寝込んでしまったのだ。源清先生からの課題も終わっていない。
先生は期限を延ばしてくださっていたがそういうわけにもいかないだろう。
新人賞の提出期限までもう一ヵ月もなくなっていた。出来る限りクオリティをあげて、先生に見ていただいて……今、できる最上級のものを提出しなければ。
なにしろ今は『源清流門下生』という肩書を有難くも頂戴してしまっているのだ。源清先生に恥をかかせるような結果に終わらせるわけにはいかない。
課題は一日もかからずに終わったが、そこからは自主勉強に移った。
体を動かすのは避けておいたほうが良いが、頭を動かすのにもう支障はなかったので。
勉強にいそしんでいる間も文机に置いてあるガーベラがなんだか励ましてくれているような気がした。金香の体調とは逆に、切り花であるガーベラはどうしても日ごとに元気はなくなっていくのだが、まだその美しさは保っていた。
ガーベラの花言葉。
いただいて少ししてから金香はそれが気になるようになっていた。
花にはそれぞれ『花言葉』というものがある。
たとえば桜なら代表的なものは『精神美』。
桜は今の金香には、視てしまった怖い夢を連想させるのであまり思い出したくはないのだったが。桜の季節には遠いので見て思い出す機会は少ないだろうが。
それはともかくガーベラは比較的最近国に入ってきた西洋の花なので、この国ではあまり流通していない。花自体も、そして花言葉も。
でも本などをいくつか見れば載っているかもしれない。
気になっていたそのことをやっと調べられたのは、そこからさらに三日ほどが過ぎ、寺子屋への仕事を再開できたときだった。
先生に屋敷の資料をお借りしていいか訊くのはなんとなく気が引けたので。ご本人にいただいている以上。
寺子屋には教材のほかにも本がたくさんある。このあたりでは、随一ではないだろうか。
調べ物をするのにもうってつけであり、外から「こういうことを知りたいので」と本を借りにくる人もいるのであった。
資料室で見つけた本にガーベラの花言葉はきちんと載っていた。
橙色は『我慢強さ』。
黄色は『やさしさ』。
それぞれ指すのだという。
ほかにも幾つか載っていたが『これらの言葉のために、西洋では見舞いとしてよく贈られる』とも書いてあったので、多分この解釈なのだと思う。
そしてそれは先生が『おそらく花言葉を理解して、花を選んでくださった』ということを示していた。
花言葉を知ってそれに沿ったものを贈るなどと、なんと浪漫に溢れたことか。
ご自身が花のようなうつくしさを持っている、源清先生らしい。
そして花言葉に沿った花を贈る、ときと場合。
それは大概、『求愛』なのであるが。
思って金香の頬はなんだか熱くなってしまった。
単純なお見舞いであってそういうわけではない、と思いはするのだが、年頃の女子として連想してしまったのだ。
花瓶のガーベラは生き生きとしていて、布団の中でそれを見るたびに金香は幸せを覚えた。
そして本当にただの風邪であったようで、先生がお見舞いに来てくださった次の日には床をあげられた。
「しばらく無理はしないように」と言われて寺子屋の仕事はもう数日休みにさせていただくことにしたが。
仕事内容はともかく屋敷から寺子屋までは少し距離がある。単純に歩いていく距離や時間だけでなく暑い折で、外を歩くだけでも体力を使うということもあり。
自宅に居た頃であれば寺子屋が近いこともあり「もう治ったから大丈夫」と仕事に行ってしまっていただろうが心配してくれる人がたくさんいるのだ。金香はおとなしくお言葉に甘えておいた。
『おとなしくしている』間は、部屋で勉強に宛てた。
三日も寝込んでしまったのだ。源清先生からの課題も終わっていない。
先生は期限を延ばしてくださっていたがそういうわけにもいかないだろう。
新人賞の提出期限までもう一ヵ月もなくなっていた。出来る限りクオリティをあげて、先生に見ていただいて……今、できる最上級のものを提出しなければ。
なにしろ今は『源清流門下生』という肩書を有難くも頂戴してしまっているのだ。源清先生に恥をかかせるような結果に終わらせるわけにはいかない。
課題は一日もかからずに終わったが、そこからは自主勉強に移った。
体を動かすのは避けておいたほうが良いが、頭を動かすのにもう支障はなかったので。
勉強にいそしんでいる間も文机に置いてあるガーベラがなんだか励ましてくれているような気がした。金香の体調とは逆に、切り花であるガーベラはどうしても日ごとに元気はなくなっていくのだが、まだその美しさは保っていた。
ガーベラの花言葉。
いただいて少ししてから金香はそれが気になるようになっていた。
花にはそれぞれ『花言葉』というものがある。
たとえば桜なら代表的なものは『精神美』。
桜は今の金香には、視てしまった怖い夢を連想させるのであまり思い出したくはないのだったが。桜の季節には遠いので見て思い出す機会は少ないだろうが。
それはともかくガーベラは比較的最近国に入ってきた西洋の花なので、この国ではあまり流通していない。花自体も、そして花言葉も。
でも本などをいくつか見れば載っているかもしれない。
気になっていたそのことをやっと調べられたのは、そこからさらに三日ほどが過ぎ、寺子屋への仕事を再開できたときだった。
先生に屋敷の資料をお借りしていいか訊くのはなんとなく気が引けたので。ご本人にいただいている以上。
寺子屋には教材のほかにも本がたくさんある。このあたりでは、随一ではないだろうか。
調べ物をするのにもうってつけであり、外から「こういうことを知りたいので」と本を借りにくる人もいるのであった。
資料室で見つけた本にガーベラの花言葉はきちんと載っていた。
橙色は『我慢強さ』。
黄色は『やさしさ』。
それぞれ指すのだという。
ほかにも幾つか載っていたが『これらの言葉のために、西洋では見舞いとしてよく贈られる』とも書いてあったので、多分この解釈なのだと思う。
そしてそれは先生が『おそらく花言葉を理解して、花を選んでくださった』ということを示していた。
花言葉を知ってそれに沿ったものを贈るなどと、なんと浪漫に溢れたことか。
ご自身が花のようなうつくしさを持っている、源清先生らしい。
そして花言葉に沿った花を贈る、ときと場合。
それは大概、『求愛』なのであるが。
思って金香の頬はなんだか熱くなってしまった。
単純なお見舞いであってそういうわけではない、と思いはするのだが、年頃の女子として連想してしまったのだ。
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