72 / 125
夏休みと陸上大会
6
しおりを挟む
「そう? さんきゅ。えっと……『りぜ』さんだったよな。漢字は?」
「えっとね、『り』は普通に変換を押せば出ると思う……あ、ああ、それだよ!」
そのあと『はやと』の字も教えてもらった。
ふたつのスマホをのぞきこむその作業が、とても近くて。
胸の奥が、羽根かなにかでくすぐられているようにこそばゆくて、莉瀬はスマホ同士の番号交換を終えてすぐに言っていた。
「じゃあ、あの……連絡するね。そろそろレッスンに行こうかな」
莉瀬の言葉に乙津くんは……いや、隼斗くんはあっさりうなずいた。
「ああ、そうだな。ひきとめてごめん」
「そんなことないよ! ……」
嬉しかった、と声に出そうとしたのに言えなかった。
やっぱり胸が、くすぐったくなってしまって。
なので莉瀬はただ「じゃ、またね」とだけ言って、その場を離れた。
駅の構内を出て、むせかえるような暑さの中へ出て、そこでやっと、はーっとため息をつく。
もう隼斗くんから莉瀬は見えないだろう。
まさかこんなことになるとは思わなかった。
でも嬉しくてたまらない。
心の奥がむずむずする。
頬も熱くなりそうだ。
「えっとね、『り』は普通に変換を押せば出ると思う……あ、ああ、それだよ!」
そのあと『はやと』の字も教えてもらった。
ふたつのスマホをのぞきこむその作業が、とても近くて。
胸の奥が、羽根かなにかでくすぐられているようにこそばゆくて、莉瀬はスマホ同士の番号交換を終えてすぐに言っていた。
「じゃあ、あの……連絡するね。そろそろレッスンに行こうかな」
莉瀬の言葉に乙津くんは……いや、隼斗くんはあっさりうなずいた。
「ああ、そうだな。ひきとめてごめん」
「そんなことないよ! ……」
嬉しかった、と声に出そうとしたのに言えなかった。
やっぱり胸が、くすぐったくなってしまって。
なので莉瀬はただ「じゃ、またね」とだけ言って、その場を離れた。
駅の構内を出て、むせかえるような暑さの中へ出て、そこでやっと、はーっとため息をつく。
もう隼斗くんから莉瀬は見えないだろう。
まさかこんなことになるとは思わなかった。
でも嬉しくてたまらない。
心の奥がむずむずする。
頬も熱くなりそうだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる