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キャラメリゼは幸せの香り

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 数日後の土曜日、自主練習から家に帰ると甘い香りがした。

 お母さんがケーキでも焼いてるのかな。

 思って期待した莉瀬だったが、そのとおりだった。

「おかえりなさい」

「ただいま! お菓子?」

「そうよ。手を洗ってらっしゃい。お茶にしましょう」

 お母さんがお菓子を手作りしてくれるなんて、めったにない。

 誕生日とかにはケーキを焼いたりしてくれるけれど。

 言われたとおりに手を洗ってキッチンへ行く。

 香りが濃くなった。

 莉瀬の鼻がにおいの正体をとらえて、もっと嬉しくなった。

 それは大好きなキャラメルの香りだったから。


 出てきたのはクレームブリュレだった。

 プリンのカリカリの部分のようなものが、上にかけられている。

 この部分がキャラメルの香りなのだ。

「いただきます! ……んーっ! おいしいっ」

 紅茶を一口飲んでから、莉瀬はフォークを入れて、ぱくりと食べた。

 キャラメルの香ばしいこげた味が、口の中に広がる。

 莉瀬の満面の笑みを見たお母さんは「よかった」と紅茶のカップを手にして、にこりと笑った。

「もう発表会間近でしょう。応援よ」

「そうなんだ……ありがとう!」

「お父さんもお母さんも見に行くからね」

 この突然のお菓子の意味を知って、莉瀬の心がほわっとあたたかくなった。

 莉瀬のがんばりを認めてくれるひと。

 たくさんいるのだ。
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