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キャラメリゼは幸せの香り

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 お母さんはすぐにうなずいてくれた。

「もちろんよ。あなたのバレエをがんばる姿を見ていると、お母さんはとても幸せだもの。それに、あなたの踊るところを見たひともそうなるんじゃないかしら。きれいなダンスはひとを感動させたり、楽しい気持ちにしたりすることができるでしょう」


 小学四年生。

 初めてバレエを見たときのことを、莉瀬は、まざまざと思いだした。


 舞台のはなやかさ。

 そこで舞うバレリーナ。


 莉瀬の心を強くゆさぶったのだ。

 あんなふうになれたなら。


 いや、きっとなれるのだ。

 たくさんたくさん練習を重ねた今なら。


「あなたが夢中になれるものに出会えてよかった。バレエを習ったことで手にしたものは、上手に踊ることだけじゃないのね、きっと」

 今度は嬉しさに涙が出そうになった。

 でもそれを心の中から振りはらって、莉瀬は笑う。

 きっとその笑顔は幸せそうになっただろう。

「……っうん! 私、いっぱい素敵なものに出会った。……バレエを習わせてくれて、ありがとう、お母さん」

「ええ。その成果を発揮してらっしゃい」

 お母さんの優しい応援の気持ちが、たっぷりと詰めこまれたクレームブリュレと、キャラメリゼ。

 お茶の時間は優しく、おだやかに過ぎていった。
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