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あなたのリゼット

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 莉瀬の息も一瞬とまったけれど、でも不思議なことにすぐに落ちついてしまった。

 心臓はばくばくしていたけれど、でも落ちついたのだ。


 隼斗くんからもらった言葉。

 なんとなく予想していた、なんて思ったからだ。


 それは図々しいかもしれないけど、私たちに似ているところがあるからかな。


 思って、莉瀬の心が、ほわっとあたたかくなる。

 きっと隼斗くんには伝わっていたのだ。


 自分がリゼットの踊りにこめた思い。

 大切なひとを思って幸せにしたいという気持ちの踊り。


 莉瀬は笑った。

 もらった二本のバラと、さっきもらった一輪のバラを合わせる。

 三本になったバラを胸の前で大切にかかえた。


「私ね、隼斗くんのリゼットになりたい」


 それは莉瀬のずっと思っていて、願っていたこと。

 口に出して伝えられることに、このうえない幸せがあふれた。

 でも隼斗くんにはすぐわからなかったらしい。

 今度は隼斗くんのほうが、一瞬、ぽかんとした。

「……なんだそりゃ?」

 莉瀬はそっと目を閉じる。

 バラを抱きしめたまま。


 私はきっと素敵な、このひとのお姫さまになれる。

 だって彼と自分は、陸上とバレエ、と、やっていることこそ違っても、自分の中の最高を目指す気持ちは同じなのだから。


 (完)
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